パンの研究所「パンラボ」。
painlabo.com
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
ヴィヴァン(武蔵浦和)
第20軒目


住宅街の中に突如あるベーグル屋。
小さな店の中に70種類ものベーグルが詰め込まれている。
フィリングはオーソドックスなものから、ここでしか食べられないちょっと変わったものまで。
これだけたくさんあるのだから、おやっと思うものがきっとあるはずだ。

姉妹で営む、天然酵母のパン教室からスタートした。
だから、パンはひと通り焼くことができる。
なのになぜベーグルなのか?

市川さんはいう。
「雑誌を見ていろんなパン屋さんにいってみたのですが、ベーグルだけは、自分たちの作ったのがいちばんおいしかった。
パン教室で即売会をやっても、やっぱりベーグルがいちばん評判よくて」

ホシノ丹沢酵母と国産小麦を使用している。
プレーンを食べたとき特にわかる、しょうゆの焦げたような香りや、噛み進んだあとの小麦の生(き)の味わいが豊かなのはそのせいだろうか。
「低温発酵でうまみを最大限に引き出しています」
生地につけられた甘さも、フィリングの甘さも最低限にとどめられ、生地のおいしさが十分味わえるバランスになっている。

ドライトマトとオリーブ(250円)。
ドライトマトとオリーブの組み合わせは、フランスパンでは定番といっていい組み合わせである。
それがベーグルになるとどうなのか。
オリーブの油が生地全体にしっとりとまわり、そのために味わいも強くなり、ベーグルの食感はよりやさしくなっている。
そのために、フランスパンのような味わいであって、より目が詰まり、よりなめらかで、よりむっちりとした、なにかすばらしいものになっている。

塩餡お豆ちゃん(250円)。
塩豆大福のベーグルバージョンというべきか。
生地に練り込まれたよもぎの風味にエッジがあり、鮮烈。
こしあんは甘さが上品。
ただ、豆の周囲のみ塩気によって味わいがじわじわとしていて、またよもぎと響き合う部分もあって、ひとつのあんこが一様にならず、複雑さに彩られている。

ピーナッツ ノア ミルク(250円)。
ピーナッツクリームとホワイトチョコレートはこんなに不思議な合い方をするものなのだ。
キャラメルのようなねっちり感。
ピーナッツと思えば、ホワイトチョコ。
ホワイトチョコと思えば、ピーナッツ。
似てるけど、似ていない。
混ざりきるかと思えば、混ざりきらない。
的の絞りきれない味わいが、噛むたびにミックスされ、さらなる複雑と幻惑を呼ぶ。
実は両者をくるみの存在が微妙に取り持ってもいるし、全粒粉のコクとも好相性である。(「ぷ」こと池田浩明)

JR埼京線武蔵浦和駅
048-839-4311
7:00〜18:00(売切れ次第閉店)
日祝休

#020


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麻凛堂
第4軒目
「麻凛堂」の中には「凛」という文字がある。
パン屋にとって凛としているとはどういうことなのか?
お客の気づかないところで、手間をかけ、丁寧な仕事をして、誇るでも、謳うでもなく、そうしてできあがったまっとうなパンを、澄まして並べている。
宮林シェフの話を聞いていると、そう思う。

中浦和という地味な住宅地で、東京の有名店と同じレベルのパンを、客層におもねることなく提供している。
麻凛堂の陳列には胸が躍る。
ありとあらゆる種類のパンが、わずか4、5個、一列ずつ並んでいる。
ハード系のフランスパンも、デニッシュも、あんぱんも、天然酵母のパンもある。
しかも、フィリングの多くが自家製。
もっとも手間のかかりそうな、多品種少量生産。
「方向性を絞ったほうがいいという人もいるけど、ぜんぶ手を抜かずに作ればいいだけなんですから」

私は何度かこの店を訪れているが、外れがないので、安心して買える。
なぜかくもオールラウンダーなのか。
「僕にとって、バゲットはデッサン。デッサンがちゃんとできれば、油絵でも水彩でも描ける。それと同じで、バゲットがきちんと焼ければ、他のパンもできるはずなんです」

バゲット小(200円)。
やたら強い香りでも、甘い香りでもなく、折り目正しい香り。
がりっとした皮は、しかるべき厚さで、「こうでなくては」と思わせる強さがある。
やがて、風味の中心が、皮から、中身の小麦味へ移り変わっていくと、じんわりした塩味によってかすかな甘みを滲みださせて、皮の風味と中身の風味が50:50で混じりあう。
皮も、中身のしっとり感も味わえる、バランスに富んだバゲット。

パン・ド・カンパーニュ(320円)。
中央から2つに割った瞬間に、中に閉じ込められていた香りが勢いよく飛び出してきた。
酸味がすばらしい。
軽く、透き通るようで、噛み締めているうちに複雑なほろ甘さへと変化していく。
褐色の生地は見た目にもぷりっとして、かつ透明感がある。
この気泡ひとつひとつのぷりぷり感を、口の中で押し潰していくのが、心地いい。
ほのかなライ麦の香り、皮のやさしい崩れ方も秀逸。

アップルデニッシュ(210円、季節限定)。
キャラメルで煮た、リンゴのコンポートは、えもいわれぬ甘さを滲みださせ、舌の上でとろけていく。
この甘さ、バターの香り、生地のさっくり感。
三者が出会い、かき混ざり、飲み下されていくまで、頭が真っ白になるような感覚に襲われる。(ぷ)


パン処 麻凛堂
048-866-0876
さいたま市南区鹿手袋1-3-30
9:00〜19:00
日・第1・3・5月休

#004

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石窯パン工房 暖家
第2軒目
埼玉の住宅街にあるパン工房 暖家。

食パン、惣菜パン、菓子パンというアットホームな品揃え。
どのパンもちょっと甘めで、子供を食いつかせやすい味付けになっている。

防犯上の観点からぜひ注意をうながしておきたいのが、魅惑のボックス(上写真)が入口を入ってすぐのところに置かれていることである。
この中に大量のコッペパンおよび、コッペパンに塗るためのスプレッド各種がすべて格納されている。
たいへん危険である。

この種のサービスは住宅街のファミリーな店でときどき見かけるものだ。
これがある時点で私的にはすでに合格だけれど、暖家の場合、スプレッドの種類がすばらしい。
コーヒークリーム(クッキー入り)、チョコカスタード、黒豆きなこ…。
そしてジョーカーは豆乳クリーム。
ダブルでいく場合、普通はバター+あんこ、バター+ジャムぐらいしか手がないのであるが、豆乳クリームの存在によって、クリーム+チョコカスタード、クリーム+あんこなど、夢は果てしなく広がっていく。


ただスプレッドだけでコッペ箱が危険だといっているわけではない。
コッペパン自体がすばらしい。
まず口を持っていっただけですでに生地から香る甘い香りがいい。
食べてしまうやいなや、スプレッドの甘さに意識をかなり持っていかれてしまうのは確実であり、香りの一撃で存在感をお知らせしていただいたので、生地へすんなり入っていけた。
表面がさっくりで香ばしく、皮を噛み破って中身に入ると、ふわふわしていながらちょうどいい噛み応えがあって、かつそれらと口溶けとのバランスが絶妙にいい。
それらすべてが同居する瞬間が至福なのである。
パンとしてのさまざまな魅力の断面をわずか数瞬でくぐり抜けるのだ。

石窯を用い、すべてのパンに天然酵母を使用する。
酒まんじゅうにも似た天然酵母の甘い香りが強調されたプレーンなパンが好みだった。

食パン暖家(367円)。
やさしい甘みを帯びた心地いい発酵の香り。
その香りに終始励まされながら食べ進む。
マシュマロのような極上のなめらかさを持つ生地は、甘口の酒のようなまろみのある甘さ。とてもふわふわで、噛んでいるだけで気持ちいい。

クロワッサン(168円)。
バターの香りがあたたかい。
表面だけかりっとして、中はとてもむっちり。
一枚一枚の層にやや厚みがあるために、かえってやさしく、食べ応えがある。
単独でおやつになりそうなほど甘いのも特徴。

店の前は公園で、子供たちが凧揚げをしていた。(ぷ)

石窯パン工房 暖家
048-446-2233
埼玉県戸田市上戸田3-16-13
7:00〜19:00
日休

#002

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