ヴィヴァン(武蔵浦和)
2011.02.20 Sunday 00:00
第20軒目
住宅街の中に突如あるベーグル屋。
小さな店の中に70種類ものベーグルが詰め込まれている。
フィリングはオーソドックスなものから、ここでしか食べられないちょっと変わったものまで。
これだけたくさんあるのだから、おやっと思うものがきっとあるはずだ。
姉妹で営む、天然酵母のパン教室からスタートした。
だから、パンはひと通り焼くことができる。
なのになぜベーグルなのか?
市川さんはいう。
「雑誌を見ていろんなパン屋さんにいってみたのですが、ベーグルだけは、自分たちの作ったのがいちばんおいしかった。
パン教室で即売会をやっても、やっぱりベーグルがいちばん評判よくて」
ホシノ丹沢酵母と国産小麦を使用している。
プレーンを食べたとき特にわかる、しょうゆの焦げたような香りや、噛み進んだあとの小麦の生(き)の味わいが豊かなのはそのせいだろうか。
「低温発酵でうまみを最大限に引き出しています」
生地につけられた甘さも、フィリングの甘さも最低限にとどめられ、生地のおいしさが十分味わえるバランスになっている。
ドライトマトとオリーブ(250円)。
ドライトマトとオリーブの組み合わせは、フランスパンでは定番といっていい組み合わせである。
それがベーグルになるとどうなのか。
オリーブの油が生地全体にしっとりとまわり、そのために味わいも強くなり、ベーグルの食感はよりやさしくなっている。
そのために、フランスパンのような味わいであって、より目が詰まり、よりなめらかで、よりむっちりとした、なにかすばらしいものになっている。
塩餡お豆ちゃん(250円)。
塩豆大福のベーグルバージョンというべきか。
生地に練り込まれたよもぎの風味にエッジがあり、鮮烈。
こしあんは甘さが上品。
ただ、豆の周囲のみ塩気によって味わいがじわじわとしていて、またよもぎと響き合う部分もあって、ひとつのあんこが一様にならず、複雑さに彩られている。
ピーナッツ ノア ミルク(250円)。
ピーナッツクリームとホワイトチョコレートはこんなに不思議な合い方をするものなのだ。
キャラメルのようなねっちり感。
ピーナッツと思えば、ホワイトチョコ。
ホワイトチョコと思えば、ピーナッツ。
似てるけど、似ていない。
混ざりきるかと思えば、混ざりきらない。
的の絞りきれない味わいが、噛むたびにミックスされ、さらなる複雑と幻惑を呼ぶ。
実は両者をくるみの存在が微妙に取り持ってもいるし、全粒粉のコクとも好相性である。(「ぷ」こと池田浩明)
#020