パンの研究所「パンラボ」。
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パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
サクラベーカリー(若林)
第29軒目

「世田谷の町のパン屋 サクラベーカリー」
HPにまず書かれている言葉。

町のパン屋であることは、簡単なようで意外とむずかしい。
あったとしてもほとんどは古いパン屋であり、新しいパン屋は、そうであるように見えたとしても、どこかでおしゃれだったり、職人的こだわりがあったり、商売上手に見えたりする。
それらは悪いことではなく、むしろいいことだが、そういう部分があると「町のパン屋」ではない。

サクラベーカリーは、新しい世代に属するにもかかわらず、ブーランジュリーになるのを踏みとどまる、希有な店だ。

佐藤秀彦シェフはいう。
「自分はつい製造する立場で考えがちなのですが、そうではなくて、いつも買う立場、お客さんの立場に立ちたいと思っています。
例えば、新製品を作るにしてもそうなのですが、つい男の人が好むものを作ってしまいます。
女性のお客さんが圧倒的に多いのだから、女性の立場にならないといけないのに。
お客さんからの声を聞いた販売の人に、よく怒られます(笑)」

頑固な職人気質とは、常に同じ品質のものを提供することなのに、この店では180度異なる。
「食パンのような基本のアイテムでも、もうちょっとよくできないかと、ミーティングでもみんなで話し合っています」

後述するが、サクラベーカリーは新製品がすごい。
オリジナルという誰かひとりの考えからできるものが、定番という集合無意識の産物を超えることは意外とむずかしい。
それがサクラベーカリーにあてはまらないのは、新製品であってもシェフひとりの頭の中からでてきたものではなく、スタッフやお客さん、みんなの声が集まってできるからなのかもしれない。

あるいは偶然の助けも借りる。
「パンがおもしろいと思ったのは自由度が高いからです。
お菓子のようにかっちりしていなくて、パンには幅が出せたり、奥行きがある。
ミスから新しいパンが生まれたりする。
仕事の段取りが狂って時間がおしちゃって、発酵時間が延びたときに、たまたまおいしいものができたり」
サクラベーカリーは、変わらずに頑固なのではなく、柔軟にいつも新しい。

ラウンドメープル(220円)。
サクラベーカリーのオリジナル。
封切りのメープルの香りにくらくら。
「食パンよりは甘く、ソフトでもっちり」
という渦巻き状の生地にメープルが折り込んである。
クロワッサンにおいて、バターと小麦粉の間に起きたのと同じ奇跡が起きている。
丹念に丹念に襞を重ねるようにメープルと生地が密着し、味わいの乗数効果が生まれた。
こんなにふんわりとしたまろやかな甘さの世界があった。

クリームメロンパン(160円)。
酒粕酵母の菓子パン生地がおいしい
さくっと歯切れ、ぼろぼろっとビス生地が崩れる。
ゆっくりゆっくりと甘さを滲みださせる。
さくさくとやや乾いた生地に、ホイップクリームが浸透しはじめると、甘さの第2章がはじまる。
口の中がみずみずしくなるとともに、生地の甘さと違和感なく、けれどちょっと別様の甘さが重なって幸福のハーモニーを響かせる。

モーンデニッシュ(220円)。
食パンのように細長く大きく焼いた生地をカット。
大ぶりなために、どこにかじりつくかによって、表情が異なる。
上からかじればアイシングのどっきりする甘さと、薄皮のぱりぱり。
横からかじれば褐色の生地のかりかり。
中身をかじればバターの風味としっとり感。
そして、けしペーストのつぶつぶとクルミのこりこり。
さまざまな味が入れ替わり立ち替わり、順列組み合わせ式に現れて飽きさせない。(池田浩明)

東急世田谷線 若林
03-5431-1854
8:00〜18:00
日休
小田急線 梅が丘・豪徳寺にも店舗あり。

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