パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
チクテベーカリー(南大沢)
198軒目(東京の200軒を巡る冒険)

パンを一口食べて、目頭が熱くなることがある。
チクテベーカリーのパンがそうだった。
なぜなのだろう。
あの店を見たからだろうか。
多摩ニュータウンにある団地の1階部分。
塩ビの波板が大胆に使用された半透明のファサードが、そば屋や煙草屋と並んでいた。
古めかしい商店街の中におしゃれな店。
それは一見、ハレーションを起こしそうなのに、見事に周囲と溶け込み、愛されている。
おじいちゃん、おばあちゃん、子供連れ……地元の人たちがチクテベーカリーのパンを楽しみにしてお昼を待っていることを、その顔ぶれは語っていた。
たっぷり並んだパンの表情、それを入れる籠、木製ばんじゅう、ガラス瓶のかわいさはときめかずにいられない。
販売スタッフは笑みを絶やさず楽しげに動く。
パンを置く棚の向こうに厨房があり、忙しくパンを丸める手だけが見えていた。
覗き込むと、店主である北村千里さんの手だった。
一心不乱に、懸命に。
期待して待っていてくれる団地の人たちにおいしいパンを食べさせたい。
その使命感が痛切に伝わってきて、声をかけることはできなかった。

パンの味は作り手の気持ちまで伝える。
発酵種を自家培養し、市販のパン酵母は使用しないというある種の限界の中で、リュスティックも、食パンも、麦の味わいを最大限に引き出しながら、どれだけ食べやすくできるかを精一杯考えて作られていることがひしひしと感じられるのだ。

旧店舗は京王線の終点からさらにかなり歩いたところにあって、なかなか行けないことが、余計にあこがれの気持ちを掻き立てていた。
それほどの名店を南大沢に移転することはかなりの決断だったにちがいない。
北村さんはパンの力で、高齢化が進む団地に再び活力を吹き込もうとしている。

「近くにあったスーパーが撤退しちゃって、みなさん買物に困られていた。
団地は築30年になるので、最初に入居された方はもうご年配になっています。
ここ(チクテベーカリーのある場所)はメロンパンやサンドイッチ出してたパン屋さんだったみたいで、食べ物を買うのも大変になっていた。
にぎわいを取り戻すお手伝いになったら」

半透明のファサード、みんなとおしゃべりできる大テーブル。
新店舗が新しく備えたものは、パン屋を町に溶け込ませるための工夫である。

「商店街だから、お店はできるだけ開かれた感じにしたくって。
イートインスペースも、飲み物を買わないと座れないとかじゃなくて、空いてたら誰でも座っていい。
店の中が外から見えるけど、ガラス張りで丸見えは嫌だから、ビニールハウスみたいな素材にしたんです。
工場みたいって言われたんですけど、あったかくなると、開けっ放しでいい感じです。
あまり閉ざす感じにしたくなかった。
誰でも入れる普通のパン屋にあこがれていたので。
最初にここにきたとき、店の中に日の入ってくる感じがすごくよかったんですよね」

(秋山花さん[ホームページやリーフレットのイラストで、チクテファンにはおなじみの絵]とフィンランド人のハンナさんによる絵)

丘陵地帯を切り開いて作ったニュータウン。
木々が豊富で、アップダウンした地形に歩道橋がかけられ、広々とした広場を通り抜けて、車を心配せずのんびりと歩いてこれる。

「最初にきたとき、駅からくる道もいいなと思いました。
駅まで歩く道でパンを齧ったりできるかなって。
途中にあるベンチでサンドイッチも食べれますし。
席がないと困っちゃうとか心配しなくてもいい空間にしたかったので、それはよかったですね。
お子さんときても、大勢できても、ひとりできても居心地がいい、ゆるい空間を目指してます。
味覚ってあいまいな部分もあるんで、感情も込みでおいしい記憶になる。
見た目でぐっときたり、接客であったり、ここまでくる行程なんかも込みで味になると思っています。
せめてここに入って出ていただくまでに、味に追加できる部分のお店づくりをしたい」

「味に追加できる部分」=内外装、接客、ショップカードやリーフレットのデザイン、包装…。
それらに決して手を抜くことはない。
店を飾るハイセンスな器も、パンの造形感覚も、乙女心をくすぐらずにいない。
それらがアートになっているのは、北村さんがかってアーティストを志していたことと関係があるだろう。

「大学では陶芸を専攻してたんですが、向いてなかった。
アルバイトして、映画を見に行ってという、やる気のない日々を過ごしてしまって。
舞台美術のアルバイトをしてたんですが、たまたまディスプレイに大きいパンが飾られていた。
それを見て、『お、パンいいね』。
そんな感じでパン屋になったんですよ。
パンだったら、家族がパン好きなんで、よろこんでくれるな。
はじめたらはまってしまって。
最初はチェーンのパン屋さんで働きました。
パンの焼ける匂いがいいと思ってたんですけど、ある日くさいなと思った。
そこの作り方がよくなかったと思うんですけど、違和感を覚えて。
それから自家製酵母(自家培養発酵種)に出会って、私もこのパンをやろうと。
原宿のパン屋で1年、鎌倉のパン屋で3年、カフェのバイトと掛け持ちで、なんとか生活してました」

当時の北村さんには目標があった。
かってカフェブームの中心となっていたほどの人気だった、いまはなき下北沢のチクテカフェ。
それは友人と2人で立ち上げようとしていたものだった。

「下北沢のチクテカフェを経営してたのが高校時代の友人の牧内さん。
28になったら2人でなにかをやろうって決めてたんですよね。
お互いにそれぞれなにか修行しようと。
なにをやるのか決まってなくて、最初はアトリエで絵を描くとか、わけのわからないことを言ってました。
同じ場所でやりたかったんですが、パン屋はお金がかかる。
それで、経営も別にしました。
カフェについてるパン屋だったら量も焼かなくていいし、そこそこでいいだろうなんて、めちゃくちゃ甘く考えてました。
牧内さんに、バビントンティールーム(新宿伊勢丹に進出していたローマの名店)で食べたイングリッシュマフィンを焼いてほしいと言われて。
レシピを探して作ったんですが、それが『クウネル』の創刊号で取り上げられてお客さんがすごく増えました」

チクテカフェで食べたイングリッシュマフィンに私はひどく感激し、いっぺんにファンになってしまった。
見た目の分厚さ、威風堂々としたたたずまい。
表面はかりかりとして、中身はふにゃっとしている。
そしてイングリッシュマフィンらしからぬ味わいの充実ぶり。
これを買って帰ることは一種のお祭りだった。
バターをたっぷり塗って、メープルシロップをかけて。
かりかりに焼こうとか、いや今回はあっさり焼いてやわらかさを楽しもうとか、想像を巡らせる時間も楽しい。
しかし、私は知らなかった。
北村さんは、イングリッシュマフィンを作りつづけながら、葛藤を抱いていたことを。

「雑誌が出て最初の1年はすごいことになりました。
作っても作っても足りない。
マフィン、マフィンで他のパンは食べてもらえなくて。
パン屋なんだから、私はもっとパンをがんばらないと。
自分の食べてもらいたい自家製酵母のパンで勝負しないと。
カフェに頼らないで自立できるパン屋さんになろうとそのとき思いました。
イングリッシュマフィンは作れる量が限られています。
1回に15個しか鋼板の上にのらないんです。
それをひっくり返しながら1時間弱焼く。
オーブンで焼くのとちがうので、中が半生になる。
桜餅を焼くときのような、ガスコンロに鋼板がのっかった簡易なもので、ガスの火を調節しながら。
一次発酵とらずにいきなり分割成形して、1時間半発酵、そのあとも発酵させながら長い時間かけて焼いていく。
結果的に3時間ぐらい発酵をとったことになります。
作るのはたいへんです。
冬だと火を強くしないと持ち上がらない。
レバーでガスの出方を微調整して、火加減を調節する。
換気扇の風で火が流れちゃうんで、場所を入れ変える必要もありますし。
生焼けが怖いです。
でも、焼きすぎるとかさかさになる。
持った感じの重さで確かめます。
水分が飛んでれば軽くなるんで。
最初の頃は焼けたのをぜんぶ量ってグラムで確認してました。
3時間で15個。
それを1日5、6回」

3時間かかってわずか15個とは(付きっきりでないとはいえ)。
いまは休止しているネット販売でいつも売り切れていたことに納得するとともに、お客さんの期待に応えたいと、非効率でも作りつづける北村さんに頭も下がった。
それにしてもおもしろいのは、発酵という概念の希薄なアングロサクソンらしいパンだということ。
日本人の感覚を交えてアレンジせず、手間のかかる製法をひたすら守り抜いたからこそ、あのおいしさがあったのだ。
誰かのレシピを忠実に作りつづけて、北村さん自身のものになった。
パンとはそういうものだと思う。

とはいえ、チクテベーカリーの持ち味はカンパーニュなど、発酵種を使ったハード系にある。
北村さんが、作るのも、食べるのも大好きなパンだ。

「あんまり甘いパンは食べないんですよね。
カンパーニュに無塩バターをつけて食べます。
カルピスの発酵バターとかお店で使ってるものを。
あとはチーズ切ったのをのせたり」

チクテベーカリーのカンパーニュを覆う最強の皮。
焦げと香ばしさのオンザエッヂを攻める。
そこには独自の地平が広がっている。
ざくざくと割れる快感。
渋みの中から甘さがわきだしてくる。
そんなはずはないと思っても、それはやはり不思議な酸味のある蜂蜜といった体なのだ。
いやらしさのないもちもち感。
この口溶けよさも、しっかりと焼き込むことから生まれてくるにちがいない。

「当日の朝に仕込んでるカンパーニュは全粒粉が多いタイプです。
全粒粉に国産小麦、塩、水。
元はレーズン種から起こしたものを18年継いでます。
これは焦げなのか、いい焼き色なのか。
悩みどころ、日々試行錯誤ですね。
焦げに近い苦みと甘みがパンの味をよくしますから」

毎日、状態が変化する発酵種を、北村さんは1個の人格のように考え、「佐藤さん」と呼んでいる。

「鎌倉にいた頃に名前がつきました。
一人暮らしだったんでいっしょにがんばっていこうかなと。
恥ずかしくて、みんなのいる前では佐藤さんとか言わないです。
心で呼びかけてますけど。
子供の頃、金魚に名前をつけてたようなノリで。
母性みたいなのとちがうんです。
共同体というか、『いっしょにやるぜ』という感じ。
いっしょに歩んで、いっしょに成長していく、人生のパートナー。
性格はしっかりものだと思いますよ。
人間よりよっぽどいいと思います。
屈折してなくて、わかりやすい。
はじめた当初よりは、病にかかる前の危険信号が多少はわかるようになってきた。
前よりも、一気に崩れることもなくなりました。
調子が悪くなっても復活する。
よそのお店から久しぶりに戻ってきたスタッフは、種がしっかりした印象を受けるみたいです。
ずっと継いでると、味は安定してきたと思います」

種はもっとも大事であり、根幹をなし、すべての鍵を握る。
18年継いだというその年数は、人生を懸けてパンを作る証。
「母性みたいなのとちがう、人生のパートナー」と表現するのは、この発酵種でパンを作ることから一歩も退かないと、若き日に決意したからではないだろうか。

その北村さんが、新店舗になって、いままで作っていなかったパンを作りはじめた。
「副材料を使いはじめました。
牛乳、バター、食パンを作るためのきび砂糖。
できるだけ開かれたお店にするために、こちら側からお客さんを限らないで、できるだけウェルカムにしたい。
食パンにはあまり興味がなかったんですけど、お客さんがパン1個を買いにいくのもたいへんという話を聞いてはじめました。
食パンも発酵種で作っています。
軽いのが好きじゃないので、重めに作っている」

油分や糖分など副材料を入れれば、やわらかい、食べやすいパンになる。
あらゆる人に開かれた店。
北村さんは、新たなミッションを受け入れたのだ。
人は成長する。
かってアーティストを志していた北村さんにとって、パンは自分を表現するものだったのかもしれない。
懸命に作ることは変わらないけれど、時が経つにつれ、その意味あいは変化する。
生きるために、パンはなくてはならないものだ。
誰かのことを真剣に思って作るならば、それは人を救うことさえある。

「もっと前はその辺考えてなかったです。
やってけばやってくうちにわかってきました。
自分が食べたいものであったほうがいいですけど、誰のために作ってるかというとお客様。
こんな方に食べてもらえるって想像するようにしています。
自己満足のパンは必要ない。
いろいろこだわってることもあるんですけど、最終的にはお客さんによろこんでもらえてるかでしかないので。
なに考えて生きてきたんだろう。
いま考えてみれば、呆れます」

じゃがいも、たまねぎ、ベーコンのPIZZA
オイル、とろんと溶けたたまねぎ、じゃがいもによるフィリング、そして味わい深い生地も、すべてが滲みわたるようだ。
しっかりと焼かれた端っこがかりかり音を立てる。
ナツメグのスパイス感。
飲み込むとき、喉がたまねぎでひどく甘い。
ベーコンのコク、チーズの香ばしさと相まって、食べ終わるまで止まらない。
冷めたピッツァも、仕事のしようでここまで秀逸になる。

はちみつパン
はちみつはごくほんのり。
甘さに加え、むしろ香りとして立ち現れる。
それが発酵種の香りとじんわり照応しあう。
ほのかな甘さとほのかな酸味が出会って、エロティックなマリアージュとなっているのだ。
ぼよよんとした生地を引きちぎりながら、香りの愉楽の中にどっぷりと浸り込む。

マロン
マロンペーストのなんとすばらしい香り。
洋酒の香りと相まりながら栗がすばらしい広がりを見せる。
時を止めてしまうほど。
黒糖の生地とのゴールデンコンビ。
マロンの味が終焉したあと、それと気づかぬほどの自然さで引き継いでいく。
反発抜群のみずみずしい生地にマロンがまとわりついて溶けていく感じは忘れられないものになった。

チクテベーカリーのパンは心を打つ。
硬いパンはなるべく食べやすく。
やわらかいパンも体にいい材料を使い、心の奥深くまで響くようにと。
パンに込めた思いはきっと届く。(池田浩明)

チクテベーカリー 南大沢店
京王相模原線 南大沢駅
042-675-3585
11:30-18:30
月曜火曜休み

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ブレッダル ワン(千歳烏山)
76軒目


ファーストベースから離れた一塁走者が、盗塁を狙ってピッチャーの様子をうかがっているときのように、その人の体はいつも小刻みにハイテンポで左右に動いて休むことがない。
まな板の上で1個のパンの成形を終えると、三歩先の窯前まで稲妻のように飛んでいき、トレイの上にパンを置く。
置くやいなや、すぐさま反復横跳びのようにまな板のところに戻り、また成形。
その動きはあまりにすばやく、残像を曵いているようにすら見えた。

「ぜんぶひとりでやってるんで時間がなくて、申し訳ないですけど」
というシェフに、「30秒だけ」と懇願すると、彼は笑みをこぼして応えた。

「普通にやろうと。
変わったことはしてないんで。
普通にやろうと思ってます」
ベレー帽をかぶったその人はそれだけいって、また反復横跳びに戻っていった。

「普通にやる」。
語ることはなにもない、ただパンを食べればわかる。
パンという結果の中に、どんな努力もすべて表されるはずだ。
原材料や製法を謳って自分の作るパンが価値あるもののように喧伝したくはない。
すべては味である、とパン職人は語っているようだった。

まさに彼は1個のbredal one(パン的ななにか、という意味か?)になりきり、情熱の火の玉と化して、パン作りに没頭している。
なにも考えず、ただ仕事に集中するあいだだけが、その人にとって貴い、breadalな時間なのだろう。
たしかにパンは、そこにあるだけで、言葉を語ることはないものだ。

ロールパン(50円)。
小さく、シンプルなパンにこそ、作り手の美意識は表れる。
ただ放り出しただけのような、整いすぎないさりげなさが、このパンに雰囲気をまとわせている。
なにも付け加えていない味だった。
皮は皮らしく、中身は中身らしく。
表面には張りと、薄いけれど根強さがあり、白い部分にはやさしさと反発が同時にある。
これといった味はない。
ないにもかかわらず味はある。
これがパンの、ある種の極限なのだろう。

レーズンハースブレッド(300円 1/2)。
フランスパン生地を食パン生地のまわりにまきつけた。
生地の同伴者が生地とは、なんとbredalなパンだろう。
薄い膜のような皮がぱりっぱりっと乾いた音を響かせるところはハード系、舌の上に綿をのせたかと思うほどのふわふわな中身は食パン。
皮にしっかりと味がのっているところはハード系、ほんのりじわじわの小麦味は食パン。
まるまるとしたレーズンが皮と中身に味を浸透させながら、噛み潰せば甘酸っぱくほとばしり、白い中身にコントラストを走らせる。

オレンジティーブレッド(190円)。
包丁を入れると鋭い柑橘系の香りが空気を切り裂く。
紅茶味が甘くない。
アールグレーの茶葉が鼻孔のすぐ近くで嗅ぐごとくにヴィヴィッド。
オレンジの香りも同じくで、両者のデッドヒートには決着がつかない。
ぷりぷり感のあるブリオッシュからほどよく甘さが舌へと送り込まれる。
薄い皮のカリカリがアクセント。
「見かけたらぜんぶ買い占めていく人がいます」と販売のおばさま。
紅茶好きを納得させられる、数少ないティーブレッド。(池田浩明)


Breadal one(ブレッダル ワン)
京王線 千歳烏山駅
03-3308-6599
12:00〜14:00
17:00〜19:00
月曜・木曜休み
月1回不定休あり

#076


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#076
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パン トレ シェル(国領)
75軒目

ある純粋さに到達したパンがある。

例えば、赤い色を見たとき。
同じ赤でも、目に滲み、奇妙に気になって目を離すことのできず、のちのちまで脳裏に刻まれるようなうつくしい赤がある。
なにがさまざまな赤から、その赤を分けているのかはわからない。
そうした純粋な色に出会うために美術館へいく。
私たちがパン屋にいくのもひょっとしたら同じ理由かもしれない。

パン トレ シェルはそうした純粋なパンを作り出す一軒。
よその店と比べてすぐ目につくちがいがあるわけでもない。
ごくオーソドックス。
それが好ましい。
まっとうなものとはえてして特徴がないものだから。

シェフはいう。
「ひとつひとつの工程を丁寧にやっています。
当たり前のことを正確に。
それから、生地の状態を自分でわかっていないと。
発酵状態を正確に見られるかどうか。
発酵が遅くなることも、早まることもある。
生き物なので、見極めが大事」

「どこもやってる製法なんですが、低温や常温の長時間発酵をしています。
酵母を少なめにして、粉のうまみを引き出す。
クロワソンなんかは3日かかります。
今日仕込んだら、焼き上がるのは3日後。
省略すれば、今日仕込んで明日出すこともできるかもしれませんが。
食感とかを大事にしています。
そのために手間ひまをかける」

長時間発酵のパンはたしかに甘みが強いけれど、そのために味を濃くなりすぎることもある。
パン トレ シェルの場合、味わいは充実していながら、透明さも失っていない。

このバゲット(273円)を食べて気づくどの部分も、繊細さを感じさせずにいない。
薄い皮がしゃりしゃりと音を立てるところ、中身の舌触りのなめらかさ。
あるいは、しっかりと感じさせながら、ごくまったりとした塩気。
それが淡くうつくしい小麦味を移ろわせて快さへ導く。
噛み進んでいき、皮が細かい破片に分かれていくと、つややかな中身に甘いパウダーがかかったような状態になる。

「店は住宅街に建てたかった。
新宿に出なくても、食事パンを近所で、歩いていって買えるように」
なんの変哲もない郊外の風景に、赤いテントは突然現れる。
こころざしとは、東京の中心で名を挙げることばかりではない。

2人も入ればいっぱいになってしまうような店を夫婦2人きりで営む。
販売を担当するのは奥さん。
「お客さんの声を直接するようなところで、対面販売をするって、店をはじめる前から決めていました。
小さいけれど、そのためにお客さんとのふれあいが多いと思います。
犬を連れたお客さんや、自転車に乗った人は、外にいたまま入り口からオーダーしてもらうこともできるし。
寒いときは外で待っている人に声をかけて、みんな中に入ってもらって」

フランス食パン(263円)。
さっくりと歯切れているのに、どこか噛み切れない感じがするのはなぜだろう。
あまりのしっとり感、もちもち感を歯に感じるためでもあり、味がとても分厚くて、あまりに充実した小麦の味わいを次から次へ滲みださせてくるからでもあるだろう。
いつまでも噛みつづけられるし、噛みつづけていくべきパン。
バゲット同様の生地で、沖縄の海塩を使って、塩気を感じさせながら当たりがやわらかい。
ざくざくした皮の食感も印象的。

ラング・ド・ブフ(189円)。
ふくよかな甘さが、はかなくフェイドアウトする、ブリオッシュ生地。
ラング・ド・ブフ「牛の舌」とはフォカッチャのような形状を指すが、このおいしいブリオッシュを薄焼きにしてくれてうれしい。
さっくりした歯切れに、この世のものではない軽さがある。
表面に塗られた有塩バターの塩気と、ふりかけられた砂糖のダイレクトな甘さに引き裂かれる、果てしのない心地。
やがて、バターが口の中で生地の内部へと浸透してくると、ブリオッシュのやわらかな甘さに火がつく。
炎上しているのは、牛の舌なのか、私の舌なのか。(池田浩明)

Pain Tres Cher(パン トレ シェル)
京王線 国領駅
042-481-2072
11:00〜14:00 16:00〜19:00
日祝および月曜休み

#075

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カフェ トホ(笹塚)
70軒目(東京の200軒を巡る冒険)

パンを売る店だとわからず、はじめは通り過ぎそうになった。
小鳥と虹が書かれたシャッターの上に、螺旋階段で地上とつながった空中カフェがあるのを見て、まるで鳥の巣のようだと思った。

パンを買いにいくと、ご主人の東條吉和さんが説明してくれる。
「酵母を愛情を込めて育てようと思って五十音順にみんな名前をつけてまして。
青木さん、イボンヌさん、卯ーさん、エノモトエミリさん、小野田さん…」
一生懸命さに、やさしい人柄を感じて、思わず笑った。
それが糸口になり、開店までの長い長い人生ストーリーを聞き入り、思わぬ長居になった。

トロンボーン奏者の東條さん、ニッティング・アーティストである奥さんのモニカさん。
結婚前、2人が住んでいた風呂なしアパートは、料理とコーヒーがおいしいことが評判になって来客が絶えなかった。
その頃、モニカさんのお父さんが難病にかかり、介護をしながら仕事をするため、家の隣の古い倉庫を改造してカフェを開くことに。
お父さんはロシア文学者で倉庫にはたくさんの蔵書が眠っていたためにブックカフェに。
と思いきや、上京する前、パン屋でバイトをしたとき抱いた夢を東條さんが思いだし、手作りパンのカフェに。
モニカさんが「私、ボルシチ作れるよ」と、お母さんが何度も何度も作ってくれたボルシチとパンをスペシャリテに。
店ができあがるのと同時に出産、そこの助産師さんがたまたま元パン屋さんで、「酵母菌はかわいいのよ。子育てといっしょよ」といわれ、イーストをやめ天然酵母のパンへ。

自然に寄り集まってくる偶然の連続を編み上げてカフェはできあがっている。
私は話を聞きながら、いつか博物館で見たことのある、ワイアー製のハンガーでできた鳥の巣を思いだしていた。
鳥は手近にあるものならなんでもくちばしにくわえて木の上に運び、組み合わせて、巣を作る。

ご夫婦のお話を聞いていくと、偶然はきりなく積みあがっていく。
若き日の東條さんは、行く末に悩み、一人旅にでた先のニューヨークで出会ったトロンボーンが音楽人生を変えたのも偶然。
東條さんの活動の導き手であったレゲエミュージシャンP.JがCHARAと共演したことから、アルバムジャケットの衣装をモニカさんは頼まれ、『JUNIOR SWEET』は大ヒットし、ニットドレスはCHARAその人を表すアイコンのようになったこと。
たくさんの人びととのたくさんの出会い。
それを織り込んでできあがった2人の人生は、あのニットドレスがたくさんの色の毛糸やうつくしい石を編みあわせてできあがっていることを思い起こさせる。

東條さんはいう。
「1個1個、偶然が重なってきちゃう。
『2人の性分だから、受け入れるしかないね』と話しています」

鳥の巣はひなを育てる場所である。
2人はこのカフェで酵母を育て、子供を育てる。
4歳のとき娘の桃花ちゃんは「パンを作りたい」と突然いいだし、保育園になっていた夏みかんから桃花ちゃん自身が酵母を起こし、自分で「オツキサマ」と名づけた。
その酵母には他の酵母にはないモチモチした食感があり、食パンを作ることに。
桃花ちゃんの大好きな栗の花のはちみつを使い、桃花ちゃん自身が生地をこねることもある。
桃花ちゃんのための、桃花ちゃんによる食パン。

東條さんの名刺の肩書きは「酵母菌飼育係」。
「なんでも観察をするのが好きで」とモニカさんは酵母菌観察係。
手に常在菌がいるので、東條さん以外決してパンには触らない。
すべて手ごねなので少量しか作れない。
「酵母によって個性はちがいます。
つなぎつづけても特徴は残るものですね」
と五十音順に新しい酵母が誕生するたびに、特徴に合わせたパンができあがる。
パン種に使う小麦粉も東條さんの出身地、群馬県で生産される農林61号を使用。
頭の中のイメージにあわせて製法を考えるのではなく、偶然まかせのその先におのずとパンは生まれる。

こんなにも偶然にゆだねられた、パンが、人生がある。
いや、誰しも、どれだけがんばったところで、与えられた偶然と偶然ををくっつけつづけるしか、生きる術はないのかもしれない。
店をでて、そう考えながら降りていく螺旋階段さえ、東條さんの実家の鉄工所でお父さんと弟が作ったのを運んできて、くっつけたものだった。
「実家が螺旋階段で有名らしくて。
僕も知らなかったんですけど」

バナナブレッド(250円)。
普段は夏みかん酵母で作られるが、この日は柿酵母のコイケさん2号で。
目は詰まっているのに、空気をはらんだようにぷわーんとやわらかい。
バナナの甘酸っぱさ、まったりな甘さが、小麦や酵母の味わいと重なって、微妙な変化がもたらされる。
ゆっくり、ふにゃふにゃと生地がとろけいくので、本物のバナナがとけていく様子が目の前に浮かぶ。

ライ麦7(230円)。
しっとりして、やわらかい。
はっかのようなすっとする香りが発酵の香りと入り混じって心地いい。
なめらかに感じられた表面が、とけるとともにつぶつぶに分解していく。
7とはライ麦7割、小麦粉3割の意味。
サワー種ではなく、パン酵母で作るのはこれが限界とのこと。
ライ麦パンにサワー種を使わない偶然性も、おもしろい口溶けにつながっているのかもしれない(池田浩明)。

京王線 笹塚駅
03-3370-7700
12:00〜20:00(月曜は〜15:00)
火・水・木曜休み

#070


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トゥルナージュ(笹塚)
63軒目(東京の200軒を巡る冒険)

かつてトゥルナージュの神宮前店にいったとき。
商品は売り切れ、店内にパンはほとんど見ることができなかったが、女性たちが熱っぽく作業台を囲む場面を垣間見た。
中心にいたのはオーナーシェフの小山利千さん。
この店では天然酵母のパン教室を開講しているのだった。
なぜ小山さんの手から生み出されるパンはあんなにあたたかく、おいしいのか。
生徒たちはすごい集中力でそれを学び取ろうとしているのだった。

鋭角的ではっきりした意思の見える男性のパンに比べて、女性の作るパンは、おしなべてやわらかく、味わいの輪郭がグラデーションのようになっている。
トゥルナージュのパンもそうした特徴を持ってはいるけれど、高い完成度で一歩先をいっている。

たとえば、高い人気を誇る山型食パン(350円 1/2)は15年も同じ製法で焼きつづけられているけれど、いまなおほかの店が追いつけないような新しさがある。
一言でいえばリーン。
香ばしさや甘さを欲張らず、国産小麦の味わいだけに焦点をあわせ、ほかの要素が慎重に抑制されている。
だから、口に入れた瞬間からただまっすぐに、小麦の風味の陰影を感じることができる。
おだやかで上品なその味は10回以上噛んでようやく輝かしい甘さへと変貌していく。

「パンが好きではなかったんです」
と小山さんはいった。

「最初はイーストのパン屋だったのですが、つづけていけそうになかったんですね。
ごはんが好きなもので、軽い、空気が入るのは好きじゃない。
どこかのお店で天然酵母のパンを食べたとき、これだったらつづけていけそうかな、と思いました。
2年ですべてのパンを天然酵母に切り替えました」
イーストのパンに対して違和感を抱く感性を持っていたから、天然酵母のパンを奥深く繊細に探求していけたのだろう。

ストレートな自家製酵母のハード系パンもあるが、私にとってトゥルナージュのイメージは、ホシノ酵母を使った中身がむちむちのクロワッサンであり、やさしい食感のおやつパンである。

「添加物を絶対入れないようにしてますよね。
やわらかいパンを作ろうとすると、チェーンのパン屋さんではケミカルなものを入れていると思います。
化学的にじゃなく、私は私なりにやわらかいパンを作ろうとしています。
山芋とか大豆の粉とかを入れて。
化学に頼らない。
するとコストがかかる。
お客さんに高いなーと思われる。
わかってもらうのはたいへんですね」

そして、小山さんは、まったく新しいやわらかさをもつパンを生み出した。
ホールフーズ食パン(230円 1/4)がそれである。
スライスして手でもつと、指にのっていない部分がだらりと宙へ垂れる。
ふわっとして、しなやかで、なめらか。
そのどれもがいままでのパンと別次元である。
ふわふわが、口溶けとともに、軽やかに、実に快いねっちり感へと舌の上で変貌していく。

「パンじゃない、ぜんぜんちがったやり方で作ります。
パンというのは、1次発酵→2次発酵→焼成と進んでいきますが、そうじゃないぜんぜんちがったやり方でできる」
想像もつかない話に私が驚いていると、
「長くやってるとできるんですよ」と微笑した。

そのとき、時間は夜の19時半だった。
昼間は幾人かの従業員が忙しく働いていた店内に、小山さんがひとりで黙々とりんごの皮をむいている。
オーナーと呼ばれ、先生を務めている人が、もっとも地味な作業をひとりでこなす。
「ぜんぶ手作りなんで、時間がいくらでも必要なんですよ。
寝てる時間以外仕事。
ごはんも座って食べない。
よくないんですけど」
10年以上もこうした生活をつづける小山さんだからこそ、まったく新しいインスピレーションは降りてきたのかもしれない。

自家製酵母のアップルパイ(280円)は情熱に圧倒されるようだった。
持ったときの重量感、生地の厚み。
オーガニックの粒から自分で挽いたという全粒粉の味わいの濃さ。
にもかかわらず、パイ生地ではなく、発酵をとったパン生地なので、あたたかい重たさの中に、軽やかさをはらんでいる。
素朴なのに食べやすい。
リンゴのコンポートを強くだすより、シナモンやレーズンなどとのチームワークで食べさせる。

素材感を強くだしたものは得てして食べにくい。
「できるだけいい素材を使っています。
でも、素材がよくても、おいしくなければ商品としてつづかない。
おいしくて長つづきするようなものを作りたい」
情熱をこめて銘柄を選び、手をかけた全粒粉の醍醐味。
一方、食べやすさ、軽さも兼ね備えるアップルパイは、その解答なのだと思った。(池田浩明)

京王線 笹塚駅
03-5388-5167
9:00〜20:00
月曜休み(祝日の場合は翌日休み)

#063


 
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ウッドペッカー(桜上水)
39軒目

10年近く前、この店のそばを何度も通り過ぎていたが、一度も中へ入ることはなかった。
私は自分の不明を恥じるけれど、それでよかったのかもしれないとも思う。
自分なりにいろいろなパンを食べてきたからなのか、それとも時代のせいなのか。
いまやっとウッドペッカーの本当の価値が見えるようになってきた。

おいしさとは人から与えられるものなのだろうか。
あらかじめ用意されたキャッチフレーズを見つけだすことが食べることなのだろうか。
そうではなくて、本物の味とは、まだ誰の色もついてない無色なものの中から、自分でおいしさを見つけだすことではないのか。

小さなカンパーニュ(200円)を食べてそう考えた。
口にした瞬間はなにも言葉が浮かばなかった。
しっとり、もちもちという感触の快さはあるけれど、味わいについてはなにもわからない。
しばらく噛んでいくうちに、このパンと、自分の感性とのチューニングが合ってくる。
レーズンにも似た芳香が満ちはじめ、やがてそれはそこはかとない甘さへと変わる。
他にも言葉にならないいくつかの風味がほのかに漂っている。
このパンは押しつけない。
だから、前を素通りしてしまうかもしれない。
おいしさは食べる人が自分で発見しなければならないし、食べる人によって感想は変わってくるだろう。

天然酵母とイーストのちがいはなにか?
そう聞かれるとき、後藤雄一店長はこう答える。
「天然酵母っていうのは、人間でいったら、小学校の1学年なんだよ。
体操が好きなのもいれば、文学が好きなのも、勉強嫌いもいる。
イーストはその中から体操の得意なのだけ集めたようなもの。
天然酵母にはいろんなの入ってるから。
天然酵母は、わけわからない、まろやかな、不思議な味がある」

ウッドペッカーは創業して34年。
20数年前、ある人のすすめで天然酵母のパンを知ることとなる。
海のものとも山のものともわからない天然酵母パンを最初に作ったときの感想とは、
「かっちかち。
これ、パンじゃねーよ」

当時のパン屋の常識とはこういうものだった。
「添加物とかマーガリンとかたいてい入っていて、焼きたてで油と卵さえ入っていればなんでも売れた。
大手メーカーが開く『パンの講習会』というのがあって、パン屋はそこで習ってきた通りにパンを作る。
小麦粉と添加物をセットで売りつけられて、
『この添加物を使うと、こういうパンができます』っていわれる」

添加物を使わなければパンはできないと思われていた当時、オーブンから、焼き上がった天然酵母パンが出てくる光景は驚きだった。
「なんにもいらないんですよ。
小麦粉と塩と少しの砂糖と水だけ。
小麦を窯に入れたらパンが出てくる。
不思議だなーと思う。
そっからのめり込んだ。
考えてみれば、大昔はイーストなんかなかったじゃねーかよ。
工夫すれば、天然酵母でやわらかいパンだってできる。
(試作を)毎日、やったです」

情報がまったくない当時、天然酵母のパンを作るということは、地図を持たずに荒れ野をひとりで切り開くようなものだっただろう。
以来、暗中模索を繰り返しながら、ずっとつないできた種でパンを焼く。
「20何年つづいてきてる。
うまい酵母だなと思いますよ。
悪いのぜんぶ蹴散らしている。
天然酵母っていちばん簡単。
ほっとけばいいんだから」

簡単とはいいながら、毎朝4時に起きて、7〜8時間の発酵を取り、オーブンから天然酵母パンがでてくるのは昼の12時。
夜まで働きつづける。
それを20数年間繰り返さなければ現在の味には至らない。
天然酵母のパンを食べることとは、そうした目に見えない無数の出来事の継起を感じ取ることなのだろう。

奇妙な光景を見た。
オーブンの中から後藤店長が取り出した鉄板の上には卵の殻やじゃがいもの皮などが載っていた。
「もう24、5年前から生ゴミを出してない。
すべてコンポスト(家庭で堆肥を作る容れ物)に入れて、小さな庭に鋤きこんでいます」
生ゴミが分解しやすくなるよう、オーブンの余熱で乾燥させているのだった。
ただでさえ忙しい、パン作りの合間に。
頭の下がる思いがした。

「人って死ぬんですよ。
いまは火葬場で焼かれて灰になるけど、火葬がなかった時代は、死んだら埋められて、土になる。
体がぐちゃぐちゃになって、そこに種が落ちて、植物が生える。
人間も死んだら土になるから、土から生えたものがおいしく食べられるんだ。
化学物質はおいしく食べられない。
酵母菌は自分が生きようとした、その結果として、アルコールと炭酸ガスを作る。
それがパンを膨らませ、パンの味になる。
人間は、自然界で起こる生命の循環によってできた副産物を与えてもらってるだけ。
硬いとかやわらかいとか求めることがおこがましい」

誤解のないようにあえて付け加えると、後藤店長はウッドペッカーのパンが硬いといっているのではない。
哲学を語っているのである。
哲学とは高邁なことを言葉の上だけでいうことではない。
実際にそのように生きるということだ。

後藤雄一店長、またの名を「行革パン屋」。
都議会議員を2期8年務め、その間、行政の無駄を徹底的にあぶり出した。
いまでこそ普通に使われるようになった「官官接待」(公務員が公務員を公費で接待すること)も最初に摘発したのは後藤議員だったし、選挙の公費負担(ガソリン・選挙カー)の見直しの火付け役ともなった。
他の議員を尾行までして無駄遣いの証拠を握り、200件もの裁判を弁護士抜きで戦った。
「蓮舫がやってる『仕分け』なんて、僕がぜんぶ(東京都のレベルでは)直している」

天然酵母パン屋の顔と、正義を追求する都議会議員の顔。
まったく別々に見える2つの顔は、「自然」というキーワードによってひとつに重なる。
まじめに働いて収めた税金がまっとうに使われる。
自然に作られたまっとうな食べ物を食べて生きていく。
ごく単純な「自然」を求めているにすぎない。

パン屋を目指す若者にぜひ伝えたいことがあるという。
「パン屋なんか窯とミキサーとフリーザーさえあればできる。
あとはなんにもいらない。
おいしいパンができれば客なんかいくらでもくる。
一生懸命朝から晩まで働いてれば、使う暇ないから金なんかいらない。
あとはぜんぶ自分で作ればいい。
この棚は自分で作った。
この鉄棒、建築現場で使うやつ、1本10円ですよ」

「若い子にいいたい。
金をおっかけるな。
おっかけなければあとからついてくる。
自然から学ばなきゃ、って僕は思う。
自然から教わってれば人の道だけは踏み外さない」
(池田浩明)

ウッドペッカー
京王線 桜上水駅
03-3302-8291
7:30〜20:00
日祝休

#039


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AOSAN(仙川)
第35軒目

14時30分。
その日、2回目の角食パンの焼き上がりを待つ人びとで、AOSANはいっぱいだった。

約2ヶ月先まで予約がいっぱいという角食の、製法の秘密について。
「いい材料を使って、丁寧に、時間をかけて発酵させる」
とだけオーナー夫人である奥田さんは語る。

角食(250円)。
とろっとしている、という印象を与える食パンにはあまり出会った記憶がない。
皮はぱりっと、特に底辺の食感はがりっとして、クラッカーを噛んだかのようだ。
そして、果てしなく澄んだ発酵の香り。
中身はなめらかで、存在と非存在のあいだにあるかのように軽い。
噛み進むと、むちっむちっと歯ごたえを感じ、やや酸味があって、噛むごとに発揮される生(き)の小麦味は、どんどん明るさを増して発揮されていく。

投じられたパン種が生地を膨らませ、次々とパンを作り出していくように、一片の種だったルヴァン(自家製酵母パン屋の草分け)はたくさんの卒業生を送り出し、彼らによるパン屋はさまざまな場所にオープンしている。

中でも、もっとも成功した一軒がAOSAN。
自家製酵母のパンとイーストを使ったパン、両方を焼く。
いつ行ってもたくさんのお客がいる。
理想的な住宅地といえる仙川の地に、ちいさな子供連れのマダムも、若い人も、みんなが立ち寄れるパン屋を根づかせた。

卒業生である奥田さん夫妻にとって、ルヴァンとは何だったのか。
「とにかく場のインパクトに圧倒されて、考え方はとても影響を受けました。
パンというのはただのものじゃない。
体に入ってその人の一部になる。
おいしいものは食べた人の気持ちを高め、生きるためのエネルギーになる。
パンを作る技術だけでなく、そういう精神的なものを学びました」

AOSANはルヴァンから何を引き継ぎ、何を変えたのだろうか。
「厳密にオーガニックを求めるのはいいことなんですが、ルヴァンでは人件費や原材料費がかさんで、価格設定が高めになっています。
うちでは、もちろん安全でいいものをなるべく使うようにしていますが、なにがなんでもオーガニックということではありません。
安全なものはできる範囲で使うことにして、価格は抑え、日常生活で買っていただけるような、日々の生活に溶け込んでいけるパン屋にしたいと思いました」

ルヴァンの魅力は、「原点のパン」を作りつづけるストイックな精神性にある。
でもそれはときとして窮屈にも感じられる。
完全にオーガニックなパンを作ったとしても、値段が高すぎて毎日食べられなければ、本当に健康に資するとはいえないだろう。
あるいは、ハード系のパンを食べたいときもあれば、ときにはやわらかいパンや、甘いパンも食べたい。
それから、家の近所にあって、入りやすくなければ、買いにいくことができないだろう。

「ポリシーと値段のバランスを取りたいと思っています。
敷居の高いものにならないように。
人間でもストイックになりすぎるとまわりの人が窮屈に感じてしまうことはあると思います。
おおらかでないと、人も受け入れられない。
だから、お砂糖も使わないということではなく、甘いものは甘くして出したい」

高山のようにそびえ立つルヴァンから精神性のみを引き継ぎながら、日常の目線が届く場所までそれを下ろしてきたところに、AOSANの新しさはある。
AOSANのパンは形がかわいい。
女性らしい感性をそこに感じる。
夫婦とも厨房に入る、2人の役割分担からそれは生み出される。

「最初のレシピは私が作ります。
それをアレンジして技術的に高めていくのが主人です。
新商品のイメージはぽこっと出てきます。
『あ、こういうの食べたい』という感じで。
いろんなパン屋さんで触発されたり。
私がもやもやっとイメージしたものを、主人がきちっとしたものへ落としこんでいく。
私がもやもや係で、主人がきちきち係(笑)」

インテリアがかわいい店だ。
「主人の感性ですべて決めています。
私はいっしょにいって『これはいいね』『これはちょっとね』というだけ。
でも私がほしいものと主人がほしいものはいつも一致しています。
感性が同じなんでしょうね」

志は高く掲げながら、しかし主婦の目線で価格を考え、日常にはストイックなものばかりではなく、かわいいものも持ち込みたい。
しかしパンとしての完成度は妥協しない。
男性と女性、日常と非日常…さまざまな1と1が混ぜ合わさってマーブル模様を織り成し、2以上のなにかになっている、それがAOSANだと思う。

プレーンカンパーニュ(280円 1/4)。
しっとりして、ぷるぷるとしている。
軽く、食べやすいという印象がまず最初にあり、それから小麦の味わいは噛むごとにますます透明なものへと移ろい、ブランデーのような香りもどんどん強まる。
誰もが好むような食パン的な食べやすさと、カンパーニュ好きが好むマニアックな濃さがひとつのパンの中に両立している。

ジャムフルーツサンド(180円)。
プレーンな小麦味の丸パンに、酸味の強い山イチゴのジャム。
サンドイッチだから、生地の小麦味と山イチゴの野性味がともに活きている。
表から作っているところを見ていたら食べたくなった。
よつ葉バターの大きなひとかけを、半分に切った拳大のパンに塗り込む。
きちっと塗るのではなく、適当に。
だから、ぜんぜん塗れていないところと、固まりが入っているところとにムラができる。
バターのない部分の酸味を耐え忍んだあと、ついにバターの固まりが口に入る。
バターがとろけ、生地の甘さ、イチゴの甘さが突然際立ちはじめる。
その瞬間がたとえようもなく幸福である…ストイックすぎなくてよかった。(池田浩明)

AOSAN 
京王線 仙川駅
03-5313-0787
10:00〜18:00
日・月曜休み

#035

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kepo bagels(上北沢)
第34軒目

店の目の前を京王線の電車が行き過ぎる。
ありふれた日常の風景の中に、小さなベーグル屋がある。
かわいすぎず、とがりすぎず。

選びきれないぐらいたくさんの品目をそろえ、客の目を引こうとするベーグル屋が多い中で、この店のベーグルはひとつひとつに愛情とこだわりと職人気質が込められているのが感じられる。

ベーグルとしておいしいだけでなく、パンとしておいしい。
ケポベーグルと他のベーグル店を分けるのは、そのことだ。 

「ベーグルって知ってるか?」
まだ、ベーグルがそんなに知られていない頃、奈良の名店アルペンローゼでアルバイトをしていた山内優希子さんが店の人にそういわれたのがベーグルとの出会いだった。
「小さい頃から変わった食感のものが大好きだったので、もちもちして噛み応えがあるベーグルは、いちばん好きなパンだと思いました」

全国のベーグルを食べ歩いたが、もっとも影響を受けたのはニューヨークのベーグル。
「単純においしいというだけではなくて、文化とか、風土とかがまったくちがう。
カルチャーとして影響を受けました。
ラフな感じで、ディスプレイも、紙袋もざっくりしてるんですね。
安く、おなかいっぱいになるベーグルは、日本のそば屋みたいなもの。
通勤する前にこれだけヘビーなものを食べるなんて、ニューヨークってそれだけエネルギーが必要な町だと思うんですね。
それが文化というもの。
いつも離れないでおきたいと思い、2ヶ月ほど前もいってきました」

ニューヨークのベーグルのおいしさ、ラフさを再現しようとして、パン職人として培った技術や日本人の感性が邪魔をすることがある。
「パンの作り方を知っている人なら、こんなの絶対しないだろうということをするんですね。
例えば、パンを作るときに生地は乾燥させちゃダメだと習ったのに、成形したあとビニールかけずに冷蔵庫で放っておいて熟成させたり。
そうすると、皮が硬くなってふくらみにくくなるので、身が締まってて皮がしっかりしてという、ベーグルとしての理想的な生地になるんですね。
いま低温長時間が日本でも流行ってますけど、彼らの発酵時間というのは『1〜2日』みたいなアバウトなもの。
同じ棚に並んでいる中に、ふくらんでいるのと、そうでもないのが混ざっている。
嫌なら買わなきゃいいじゃんというのもあるかもしれないし、多少大きかろうが小さかろうが関係なく、別のところでパンというものを捉えているのかもしれません」

パンとは外国からやってきた食べ物である。
外国にあるそのままを日本でも作るパン屋もあれば、自分の感性にあった日本のオリジナルを作り出そうとするパン屋もある。
ケポベーグルではその両方を作っている。
ホシノ天然酵母+国産小麦を使用した和ベーグルと、イースト+アメリカ・カナダ産小麦使用のニューヨークベーグル。
本物は本物としていじらず、一方で自分の好きなパンをぎりぎりまで追求する。
本場の感性と日本の感性との葛藤をごまかさずに、両方をそれぞれ別に打ち出す。
そこにパン職人としての誠実さがあるように思われる。

ベーグルだけではなく、和ベーグルの生地で作った食パンも、なかなか出会えないほどのおいしさがある。
ケポベーグルがベーグル屋ではなく、普通のパン屋であったとしても、トップレベルにあっただろうことを想像させる。

和ベーグルは、4%、6%、10%と酵母の配合量を変えて食感にバリエーションをつけた3種類が用意されている。
「和のベーグルでは、食感にこだわったパン作りをしていこうと思い、パンの技術を使って作っています」

和ベーグル(プレーンベーグル酵母6%[150円])。
中身の味わいだけに終始しがちなベーグルにあって、焦げたしょうゆの香りにも似たいい匂いが、しっかりと独立した皮から漂っているのが特徴。
「もちもち」という言葉ではくくりきれないほど、強く、しかしやさしい歯ごたえがある。
歯の動きとともにゆっくりと沈み込んでいくのに、最後はひきちぎらねば噛み切れないしたたかさ。
皮一枚という0コンマ数ミリにまで食感へのこだわりが詰まっている。
食べた瞬間から味わいが沸き立ち、その波が収まった頃、天然酵母+国産小麦に特有のなつかしい「和」の風味がほのかに香る。

一方、ニューヨークベーグル(プレーン[160円])。
和ベーグルより肉厚でダイナミック。
和6%よりやわらかいニュアンスを持ちながら、咀嚼するときに感じる芯の強さが楽しい。
小麦の味わいはよりすっきりとスマート。
食べはじめはお菓子のようだけれど、噛んでいくにつれて小麦味が滲みだし、口に馴染むものになっていく。

ニューヨークベーグルを手渡すときにはパッケージも変え、ラフに店のはんこを押した紙袋にベーグルを入れる。
そうした細部にまで本物へのリスペクトがこもっている。

黒豆もち(240円)。
「黒豆を生地に練り込むと、食感が悪くなる。
だから、面倒くさいけれど、あんこのように巻き込むようにしています」
それは、食感のみならず、甘さと生地が別々にやってくることによる、味のめりはりにもなっているし、黒豆のふんわりとした甘さが、生地とじょじょに混ざりあっていく過程をも楽しむことができる。
驚くべきは、もちもちのベーグルの中に本物のもちが入っていること。
もちもちともちもちの競演。
同じように感じられる食感にこんなにもニュアンスのちがいがあることがまざまざとわかる。
のみならず、ホシノ酵母特有の、しょうゆの焦げたような香りとも、もちはとてもよく合う。
まわりについたぱりぱりの羽根は中から飛び出したもち。

あんばたサンド(280円)。
塗らずに、板状でバターがはさまれているから、口の中の体温で溶けるとともに味がしてきて、あんこに浸透し、味わいを変化させていくその過程が、限りない愉楽を生じさせる。
酵母10%の和ベーグルはやわらかさがあって、もちの食感により近く、あんこと抜群の相性。
あんこの甘さもやさしく、パンと一体となって、サンドイッチなのに違和感を感じさせない。
ベーグルであんばたというと奇をてらったようなのに、普通のあんばた以上にとても馴染んでいるのだ。(池田浩明)

京王線 上北沢駅
03-6424-4859
世田谷区上北沢3-17-8
9:00〜18:00
月曜(祝日の場合は営業)・火曜休

#034


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Stay Free(上北沢)
第33軒目
上北沢の駅を降りると新しい天然酵母のパン屋ができていた。

マニアックというイメージのある天然酵母のパン屋が、駅前の繁華な場所、チェーンのパン屋があるような場所にあったので、応援したい気持ちになった。
天然酵母のパンをみんなが食べる町。
すぐ近くのkepo bagelsと合わせて、上北沢がそういう町になれば素敵だろうと思った。

たくさんのお客がきていた。
12時頃だというのに売り切れの商品もあった。
2010年の12月にオープンしたばかりのStay Freeがこの町に根づきつつあることに安堵した。

店長の久保勉さんはいう。
「町の人たちに好かれる以外、あんまり大事なことはないと思います。
上北沢の町に好かれないとはじまらない。
『おいしいよ』っていってもらえるのがいちばんうれしい。
『きのう食べたのおいしかったんだけど、今日はないの?』って」

Stay Freeの自家製酵母パンはとても食べやすい。
酸味がなく、もちもちして、多くの人に愛される資質を備えている。
「食べやすいことをまず考えて作っています。
天然酵母のパンは酸味が強くなると食べにくいんだと思います。
酸味を弱くするためには、酵母を弱く起こす。
発酵がいきすぎないように、その手前のところで冷蔵庫に入れます」

Stay Freeの基本パン、ライ麦カンパーニュ(小・200円)。
酸味はほとんど感じない。
それだけではなく、すべての味わいが、感動的なまでに、そこはかとないのだ。
小麦の甘さ、森のような発酵の香り、ミントのようなライ麦の香り…。
これが発酵の香りであり、これがライ麦の香りであり、とはっきりしているわけではない。
味わいが輪郭をともなうその手前で、慎み深く誰かに発見されるのを待っている。
心を落ち着ければ落ち着けるだけ、豊かなやさしい味わいが感じられる。
かりっとした皮に、しっとり、もちもちの中身。
このもちもちの生地に、ソーセージでも、ラタトゥイユでも包んで食べてみたくなった。

「強さのない、落としめの味を心がけています。
糖分や塩はなるたけひかえめで。
パン屋さんにくるのは、女の人が大半なので、やさしい味のほうがいいと思います」

天然酵母は強い味わいをだすための方法論だと思う。
けれどもそれをポテンシャルとして秘めながら、味わいの複雑さはそのままに、やさしく、さりげなく提示することもできるのだ。

久保店長は天然酵母の草分け的存在のパン屋で20年以上勤め上げた。
「いい素材を使って手間をかければ必ずおいしくなる」。
師匠の教えは、いまもむぎさんの信念になっている。

「なるたけ手間をかける。
ぜんぶ自分で作ればぜんぶ自分のオリジナル。
自分の舌でいいものを選んで、自分の体さえ動かせば、おいしいものができるということなんですから」
サンドイッチにはさむ塩ハムも手作りする。
カスタード、あんこも自家製。
セミドライトマトは知人の作ったぶどうオイルを塗ってオーブンで乾燥させる。

「いい素材に手間をかければおいしくなる」
当たり前のことなのかもしれない。
しかし、この世の中で、絶対に正しいといえることなど、いったいどれほどあるものだろう。
ささやかだけれど、進むべき羅針盤を持ったこの店は、きっと生き残っていくだろう。

サンドイッチ
なんとじわじわと味が広がっていく食パンだろう。
ほのかではあるがとてもたしかなのである。
ふわっと歯切れてしゃくしゃくと音を立てる食感も心地いいもの。
しゃきしゃきの野菜がたっぷり。
パンとのバランスを欠いて、野暮ったいのかもしれない。
それでいいと思う。
やさしさとして感じられるから。

フレッシュカスタードクリームパン(140円)。
クリームの味はゆっくりゆっくりとやってくる。
人によっては物足りなく感じるかもしれない。
甘さで人を惹き付けようとしているのではない。
むしろ、甘さが足りないことによって見えてくるものがある。
クリームの冷たいのどごしや、バニラのやわらかい香り。
そしてなにより、クリームのついていない部分のパンのおいしさ。
少しざらついた舌触りも、ほんのりとした小麦と三温糖の甘さも、あたたかみを伝える。(池田浩明)


Stay Free
京王線 上北沢駅
03-6326-2502
世田谷区上北沢3-18-10
7:30~19:00
日祝休

#033


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