パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
パン ド ナノッシュ(茅ヶ崎)
172軒目(東京の200軒を巡る冒険)

とびきり暑い日だった。
茅ヶ崎駅を降りて、猛暑の中をナノッシュのある路地まで歩き着くと、風が吹いていた。
海からの潮風が熱気を払って、その一角だけはなぜかひどく涼しいのだ。

白い壁面。
ファサードにも、中の壁にも、敷き詰められたタイルの白。
それは砂浜の白であり、砕け散る波頭の白をも思い起こさせる。
自分が新しい店を作るなら、白いタイルで。
ナノッシュの店舗を作るとき、関谷勝美さんの頭にあったのはそのことだったという。
たしかに、マリンブルーにもっとも合う色は白にちがいない。
関谷さんは海に取り憑かれた人でもある。

「若い頃は、ふらふらしてました。
居酒屋やったり、スナックやったり、横浜福富町のカジノでディーラーやったり。
波乗りがしたくて、仕方なくて。
夜、働いてたら、昼間は波乗りできるじゃないですか。
実家がパン屋で、継ぐために専門学校行きました。
だけど、波乗りがしたかったもんで、こっち(湘南)のパン屋さんに入りました」

茅ヶ崎にナノッシュを開店したのは、いつでも波乗りができるようにだったという。
日に焼けたルックス、サーフィンの話。
まるで遊び人のようだけど、パンにかける思いは半端でなく、そのギャップがおかしい。

「開店したときは、すげえ大変だった。
必死でした。
使われるより、自分の店を持ちたかった。
いま茅ヶ崎の南口もパン屋が増えたが、当時はあんまりなくて。
『絶対いけるよ』と思ってやった。
自分が今までやってきたことを出せば、ぜんぜんいけるなと」

関谷さんは、独立前、櫛澤電機というオーブンメーカーに所属し、新規出店するパン屋のオープンにヘルプとして派遣され、数十軒の盛衰を見た。
それがパン屋・パン職人としての礎となっているという。

「開店のときは、チラシまいて、イベントやって、いろいろサービスやって、お客さんがばーっとくるもんなんです。
そのとき慣れてないから変なものを提供しちゃって、それでがっかりされて落ちてっちゃうパン屋さんが多くて。
売れるからって、問屋さんから提供されたものをそのまま売ったりとか。
それやりたくなかったし、それが売れてもうれしくない。
手伝いを入れて無理矢理たくさん売ったりとかやらないで、気心が知れた人に入ってもらって、少ない人数でいいものを作りたくて。
きれいで、自分の売りたいものだけを売ろう。
売り切れごめんで。
1日100円でも200円でもちょっとずつ売り上げを増やしてったほうがいいな。
それもよかったんだと思う。
少人数でやってて、お客さんの買いたい数にどうしても間に合わないから、パンが少なくなってしまうこともあります。
その代わり、いつも焼きたて。
焼けるのを待っててくれるお客さんがいたり。
オーブンから出したすぐのを天板からそのまま買ってってくれたり。
パンはやっぱり焼きたてがうまいですし」

寿司屋やバーのような長いカウンターにパンが並べられている。
従業員が中から手を差し伸べて、焼きたてのパンを置いていく。
次々と焼き上がってくるパンを、客と会話しながらでもスムーズに陳列することができるし、客からは厨房もよく見える。
一見しておしゃれなスタイルも、長年の経験で汲み取った、客への配慮から発想されている。

食パン(210円)
甘さと塩気のバランスがすばらしい。
甘いと思わせ、塩がきいているとも思わせる。
塩気をやや強めにして軽いインパクトを与えている。
歯切れよく、舌触りなめらか、歯ごたえはしなやか。
にゅっと溶けてミルクの風味が広がり、耳、とくに底面は強く焼かれて、さわやかに苦い。
オーソドックスな角食をきちんと作れば、オンリーワンに高められる。

「食パンが売れないと、パン屋は(経営が)むずかしい。
食パンが売れるから、小物も売れてくる。
メープルが流行ったからメープルの新商品を出すとか、小手先を変えても、追いかけてるばかりだと、結局はうまくいかないと思います。
『食パン』という名前で出しているのは、自分がいちばんおいしいと思っているもの。
いろんなバリエーションをそろえてるパン屋さんあるけど、うちは1本だけ。
『上食パン』も必要ないし、逆に下の食パンも作る必要ない。
これがいちばん。
毎日食べるものなんで、お客さんに負担がないように、ぎりぎりの値段(210円)でやってます。
だからって、材料の質を落としたりとか、そういうつもりもないし」

ミルキーメロン(180円)
メロンパンの新たな展開。
カットしたメロンパン2分の1と2分の1でクリームをサンド。
クリームチーズと練乳クリームのミックスは、さわやかさとなつかしさのハーフアンドハーフ。
これが混ざりそうで混ざり合わないところに、思わぬ奥深さがあった。
練乳の甘さとクリチの甘さ、練乳の酸味とクリチの酸味。
ちょっと似ていてちょっとちがうもの同士のじれったさ。
シーソーが揺れるように、前者と後者に交互に傾きながら、メロンパンとさまざまな合いかたをしてくる。
たとえば、酸味に意識が向いたときには、メロンではなくレモンパンか? と思う。

とろりチーズとベーコンのアルチザン(220円)
塩麹に漬け込んだベーコンは、塩気ともコクとも甘さともつかない力強い味わい。
それがたっぷりのチーズの分厚いコクと、とろり渾然一体になる。
パンには「アルチザンバゲット」生地を使用。
わずか1分しかミキシングしないというこの生地は、ぷりっぷりで、ソフトで、しかも口溶けがよくて、塩気によって香ばしさが押し出されてくる。
具材の秀逸さとパンが相まって、食欲が加速する。

スタイリッシュな店舗を見て、フランスパンばかり並ぶ店を期待すると、肩すかしを食うかもしれない。
ナノッシュに並ぶものの多くは惣菜パンにおやつパン。
確実にお腹と欲求を満たしてくれそうなパンばかりだ。

「余計な技やんなくていいから、基本に忠実に、温度見て、丁寧に作る。
バターロール、チョココロネ、食パン。
コンビニでもどこでも売ってるような、いちばんオーソドックスなものこそ、きれいでおいしいものを作りたいし、食べてもらいたい。
どのスタッフが作っても同じものを出せるように。
丁寧できれいに。
それけっこう、スタッフにうるさくいいますね。
昨日と、形や色や大きさが同じになるように。
当然のことだけど、毎日やってると、なーなーになってくる。
昨日と今日で形がちがうってありえない。
コンビニなんか、工場で作るものだから、形がいつも同じって当然じゃないですか。
手作りだとどうしてもブレがある。
だけど、お客さんからしたら考えられない。
同じ値段を払っているのに、なんで昨日と今日がちがうのか」

製法や原材料やキャリア。
パン屋の特徴とはほとんどがそうしたことで占められるだろう。
関谷さんの口からはその種の話題が出なかった。
ただ「丁寧に、きれいに」ということだけ。
パン職人の姿勢は、工程や材料以上に、パンの味を司る。

「丁寧に扱ったものとそうでないものは、できもまったくちがいます。
たとえ配合が同じであっても。
うちの店に、よそのパン屋さんが『見せてくれ』ときたりすることがあります。
聞かれれば、配合もぜんぶ渡します。
それは作り手がちがうと、同じものできないとわかってるから。
お客さんが気づくかどうかわからないけど、なあなあになっていると毎日毎日ちょっとずつちがいが積み重なって、ある日『あれっ』となる」
スタッフには徹底的に基礎をやってもらっています」

「よそからたったひとり入っても、それが慣れた人であったとしても、パンはまったくちがうものになる。
パンは作れるけど、パンに対する思いとか伝わってなくてわからない。
追っかけ仕事とか、ただ作るんじゃなくて、1個1個気持ち込めてもらいたい。
1日1500、2000作っているとその中の1個になっちゃうけど、お客さんにとっては1個のうちの1個。
それがナノッシュの味だと思われちゃう。
天板に12個並べてただ焼いてもムラになる。
焼き色が同じにしてないのを当然のように出すと、スタッフにめちゃめちゃ怒る。
気持ちが入ってない。
忙しくなると、どうしてもそうなっちゃう。
それは許さない」

「パンに対する思い」。
それを共有しない職人がたったひとり厨房に入っても、パンは別ものになる。
パンは気持ちで作るものだ。

「お客さんに対する思い。
そういうのを表現することが、実はいちばんむずかしい。
パン屋のほうは1日中『いらっしゃいませ』と1000回行っても、たまたまあるお客さんのとき言わなければ、『あそこは元気がない』となる。
1回1回の動作を気持ち込めてびしっとやりたい」

「パンに対する思い」が、「お客さんに対する思い」とイコールになる地点。
それがナノッシュの場所である。
パンへの思いが先走って客への配慮が忘れ去られたり、売り上げが優先されてパンのクオリティが忘れ去られることはない。

(カウンターの上に描かれた湘南の海岸線にはサーフポイントも記される)

関谷さんの話を聞きながら、波とひとり格闘するサーファーを思い浮かべた。
次々と襲いくる波に乗ったかと思うと、バランスを崩し、海中に没する。
それでも立ち上がり、またやってくる波に、何度でも何度でも挑む。

「パンって同じものがどうしてもできません。
ぜんぶまったく顔がちがいます。
色がつかなかったり、形もちがったり。発酵時間も遅かったり、早かったり。
だからむずかしくて、はまっちゃって。
波乗りもいっしょで、同じ波はひとつもない。
同じ波がないから、練習がむずかしくて、なかなかうまくできない。
克服できないからやってやろうと思う。
パンと波乗り以外、こんなに真剣にやったことってないですからね」

パンとはまるで海のようだ。(池田浩明)

パン ド ナノッシュ(ホームページを制作させていただきました)
東海道線 茅ヶ崎駅
0467-86-8757
[月〜金] 8:00〜20:00
[土・日・祝] 7:00〜19:00
不定休

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#172
200(JR東海道線) comments(1) trackbacks(0)
CALVA(大船)
168軒目(東京の200軒を巡る冒険)

パンがあり、お菓子もある。
さらに上の階にはフレンチ・レストラン「シェ・ケンタロウ」も備える。
ルノートルやフォションのような、フランスのブーランジュリー・パティスリーのあり方。
ここにいけばなんでもあるという安心感、あるいは、ここにくればなにかがあるというわくわく感。

この店でシェフを呼ぶと、こう訊かれる。
「パンのシェフでしょうか、お菓子のシェフでしょうか?」
パンのシェフは兄、お菓子のシェフは弟。
1人でもじゅうぶんに店をまわせる2人が、CALVAの名のもと、五分に力を合わせる。

パンのシェフは田中聡さん。
「僕のおやじがケーキ屋さん。
30年ぐらい、お菓子屋をやっていました。
僕の弟がパティシエなので、『いっしょにやろう』みたいな話をして、建物もかなり古くなっていたので、建て替えました。
パンとお菓子の店をやろう。
東京の大きな店は、パンも、お菓子も、レストランもある。
だけど、パンとお菓子は、名前は同じでも、作るのも、経営もぜんぶ別々。
お金もそれぞれが自分で用意しました。
レストランは、僕が前にいた職場の同僚だった人がやっています。
独立を考えているようだったので、『レストランをやらないか』と声をかけました。
そうすれば、お菓子、パン、レストラン、この店にくればなんでもある。
誰でもできるとは思うけど、こういう店ってめずらしいんですよね」

「東京の大きな店」とは、VIRONであり、ジョエル・ロブションであろう。
資本力も、名前も、定評もある有名店に、兄と弟が組むことで、ここ大船で伍していこうとしている。

「お菓子屋さんといえば、コンクールで賞を取った人が、お店を出す。
雑誌に出て繁盛する店もあります。
でも、いまは景気がよくないですよね。
自分の知人でも、あんなにいいもの出してるのにっていう人が、苦戦している。
1人より、2人、3人が強い。
パンがテレビに出れば、必然的にお菓子やにもレストランにもお客さんがくっついてくる。
取り上げられる機会も3倍だし、お客さんも3倍」

パン職人、パティシエ、料理人が結集する「3本の矢」。
イタリアンとパン屋が隣り合って営業するタルイベーカリー然り、どの業界も経営が厳しい時代に、注目すべき新しい業態だと思う。

この店のシンボルマークはりんご。
「フランスに1年半いました。
弟も僕もノルマンディにいた。
ノルマンディの特産品といえばりんごだし、お店の名前をりんごにちなんで、カルヴァドス(りんごを原料に作られたブランデー)から取りました。
だから、りんごは素材としてなるべく使おうと思っています。
ただ、パン屋さんがりんごのデニッシュを作ってしまうと、弟の作っているお菓子とかぶってしまう。
だから、ルヴァン種をりんごから起こしてます」

りんごとクルミのパンペイザン(265円)
武骨な見かけと相反する中身の味わいの清らかさ。
だからどんどん食べられる。
皮の独特な崩壊感覚。
歯ごたえも香ばしさもくるみと響きあう。
くるみパンにもかかわらず、中身はきちんと湿って、食感はむにゅむにゅとしている。
(大きく焼いたパンをカットして売っているからなのだろう)
分厚い皮のかりかり感ともコントラストになっている。
りんごの酸味がフレッシュで、中身のほんのりとした甘さを、これもコントラストによって掻き立てる。

田中さんの作るパンは、細やかでとてもうつくしい。
だから、お菓子といっしょに置かれている姿にまったく違和感がないのだ。
パティシエ出身のパン職人が華やかなパンを作ることはえてして多い。
田中さんも、小さいときから父の仕事を見て育ったことが影響しているのかもしれない。

「ケーキが大嫌いなんです(笑)。
家が商売やってると、大好きになるか大嫌いになるかどっちかですよね。
高校出て、すぐ仕事はしたかったけど、やりたいことがわからなかった。
深く考えず、プリンスホテルに入って、パン職人になりました。
週2日休めるし、かっこいいし、いいんじゃない? って。
ところが、帰れないし、夜勤もあるし。
先輩もみんなすごく一生懸命な人ばかりで。
だけど、自分でやっても、先輩のようには作れない。
1個ぐらいちゃんとしたものを作ってから辞めようと思っていたら、こんな年になりました(笑)」

キャリアは約20年、ミクニのパン部門でシェフも務めた。
それでもまだ「ちゃんとしたもの」ができないとは、パンの奥深さを知っている人の言葉である。

「この仕事はおもしろい。
ファッションほど華やかじゃないけど、同じもの出すために朝から晩まで四苦八苦、見えないところでの大変さがおもしろい。
今日できても明日はできないし。
パンは生き物なんで。
むずかしいからつづいている。
簡単にできたら飽きちゃうんで」

3人が3人それぞれに仕事をしていながら、CALVAというブランドには統一感がある。
それは、「フランス」という一点で3人のイメージが一致しているからだ。
田中聡さんも、若き日に訪れたフランスでショックを受けた。

「23でフランスに行きました。
プリンスホテルにいた頃、先輩たちが辞めていって、教えてくれる人がいなくなった。
先輩たちに追いつけない。
このままやっても3年後には、先輩たちも3年先に行ってる。
誰も行ってないところに行ったら対等なはずだと。
フレンチの料理人でフランスに行っている人はいたが、パン屋さんはまだ行ってなかった頃。
『地球の歩き方』買って、大使館で学生ビザ取って。
パン職人をやるかどうかまだ迷っていました。
『この先どうするんだ、俺?
どうするか、早く決めないとやばいぞ』
遊びたい盛りだったし、この先もパン職人やるか、決めてなかった。
海外でいろんなもん見て決めようと」

田中さんにパン職人になることを決意させる体験があった。
「シャルル・プルーストというチョコレートの世界の大会があって、アテスゥエイの川村英樹さんが選手としてきていました。
僕も通訳兼お手伝いをさせていただきました。
そのとき、同じ会場でクープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリー(パンの世界大会)も行われていた。
すごい人が代表になって、たくさんの人の前で作っている」

自家製酵母のおもしろさへ導かれたのは、あるフランス人との出会いがきっかけだった。
「僕がミクニ・マルノウチにいる頃、フランスフェアを行い、2つ星をとってるボルドーのレストランの人がきた。
ティエリー・マルクスさん。
おじいちゃんがパン屋さんだったらしく、自分自身でパンを作ってる。
僕もいっしょに作りました。
ティエリー(パン・オ・ルヴァン)は、そのとき教えてもらったのと、少しアレンジはしていますがほとんどそのまま。
この店をオープンするとき、名前を使っていいか訊いて、OKをもらいました。
すごく古い作り方。
僕なりに資料を調べたんですが、カルヴェル先生の本に出てくるようなやり方でした。
種も硬いし、生地も硬い。
いまのパン屋さんで流行っているスタンダード(水分の多い生地)じゃない。
売れなくてもいいから、思い入れがあるんだから、作ろうと。
はっきりいって、なにが正しい方法なのかはわからない。
『こうじゃねーの』って、手探りして作っています。
ティエリーさんはレストランのシェフなのに、料理は作らないで、朝は3時からきてパンばかり作っていました。
ティエリーさんが帰ったら、いいのがあがらなくなるし。
ぜんぜんわかってなかったんですね。
種も死にそうになった。
そのあとも勉強しながら、アレンジを加えつつ、なんとか形になりました。
そういう意味でつづけたい。
その人もりんごで種を起こしていた」

ティエリーのバターサンド(120円)
表面のひび割れとふりかけられた粉がうつくしい表情を見せる。
癖のない発酵のいい香りとわずかな酸味が、パン生地のうま味に絡み合いながら溶けていく。
香ばしさも若々しいし、強くなりすぎない白い繊細な甘さが活きている。
自家製酵母特有の目が詰まった生地だけに、味わいもその分密度が高い。
このバゲットに大量の無塩バターだけをサンドする、フランス的な思い切りのよさ。
バターがまるでクリームのようで、無塩なので強すぎないところも、この生地によく合っている。

ミクニ時代、田中さんは25歳でシェフに抜擢され、人を引っ張っていく立場になった。
だから誰にも教えられることはなかったが、フランスで、日本で、さまざまなものを見て、感化され、影響を受けてきた。

「ミクニにいたので、料理人が横にいたというのは、パンを作る上でも大きい経験でした。
それから、この店をオープンする前にはコムシノワに研修にもいきました。
西川功晃(現サ・マーシュ)さんはすごかった。
米山雅彦(現パンデュース)さんもまだいたし。
自分で勉強するしかなかったし、いろんな人に教わったり、本読んだり。
本見て、『これ、かわいいからやろう』とか、そんなのでうまいのできるわけないです。
パンにはその人の考え方とか、ストーリーが出るから、自分なりに解釈して作らないといけないんじゃないかな。
同じ工程をやっても、同じにできない。
人によってあがるパンはちがう」

野菜のスキャッチャータ(315円)
ごろごろと野菜ののったタルティーヌに大口を開けて齧りつく。
ジャガイモ、ズッキーニ、ピーマン、セミドライトマト。
さくっととも、しゃきっととも、にゅるっととも。
どの野菜も適切に火を入れられているがゆえに、さまざまな歯ごたえを豊かに感じさせてくれる。
一方で、パンはねちっという食感を残して一瞬にして歯切れて、ストレスがない。
パンの食べやすさは野菜の食感により意識を向け、シンプルな生地の味わいは野菜の滋味に寄り添う。
オイルとヴィネガーがうっすらと塗布されて、うつくしい照りを生み、野菜の味わいを活かしてもいる。

野菜を使ったパンは、神戸の名店コムシノワでの研修で学び取ったものだという。
「いろんな店で、似たようなのありますけど、なんかちがう。
生の野菜そのままのせるんじゃなく、ひとつひとつ下処理して、火を入れるものは入れる。
お菓子屋さんがあるので、パンにもうちの色を出そうと思って、そうしています。
野菜なら、お菓子屋さんの仕事じゃないから、かぶることがない。
3階の人間(フレンチのシェフ)にもソースとか相談できるし。
グリーンピースのソースとか、いろいろ教えてもらえる。
(ソースもフィリングも)ここでぜんぶ作ります。
それをよそから持ってくるんだったら、スタッフの子たちが勉強にならないですし。
たいへんだけど、やったほうがいいと思う」

本格的なお菓子のある店だから、スイーツ系のパンもおいしい。
レストランの同居する店だから、調理パンにもフレンチの技が活きる。
相乗効果、あるいは切磋琢磨の火花。
三本の矢はそんなところにも活きている。

「大事なのは、まじめにやること。
それ以外ないと思う。
僕らのやってることって、自分が作ったものオリジナルだって思ってる人もいるかもしれないけど、絶対にベースがある。
なにもないところから作ったものじゃない。
バゲットも、クロワッサンも。
パン自体にも名前にも歴史がある。
その商品のストーリーを知っておいて作るのと、思いつきで作るのとはぜんぜんちがう。
そういう気持ちが大事じゃないのかな」

タルティーヌがオリジナリティあふれる一方、ショーソン・オ・ポムやカヌレのようなフランス菓子は伝統的な形。
そして、おしゃれな店にもかかわらず、コロネやクリームパンも昔ながらの姿で棚に置かれている。
ユニークなパンも、定番のパンも、自家製酵母のパンも、フランスパンも。
その幅広さは例外的だが、まっとうさという点で1本筋が通っている。
(池田浩明)


0467-45-6260
7:30〜21:00
火曜・第3水曜休




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#168
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