パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
ゼルコバ(西武立川)
173軒目(東京の200軒を巡る冒険)

玉川上水が流れ、桜の並木があり、たくさんの緑が都市の風景と調和している。
西武拝島線に乗って車窓を眺めていると、いつも武蔵野という言葉を思いだす。

幹線道路を折れ、古い農家の敷地へ入る。
入るというより、迷いこむ、といったほうがいいかもしれない。
忘れていた価値観に身をまかせる。
草や木や炭の匂いを嗅ぎ、風や鳥の声をうつくしいものとして受け入れている自分に気付くことになる。
草むらにつけられた小道を曲がる。
トトロの住処へと通じる草のトンネルをくぐり抜けたように、少しだけ生まれ変わった自分が目にするのは、木造の農家である。

ここでパンを焼くのは小野孝章さんと奥さん。
「最初の7年は、(奥さんの)お父さんとお母さんがやっていましたが、僕と家内でやるようになって8年。
もともとお父さんとお母さんがやっていたのを、僕がお手伝いするようになって、ここの店をやらせてもらうことになりました。
ここは農家で養蚕をするための建物でした。
2人(お父さんとお母さん)は、いまは野菜を作っていて、完全にパンからは離れています」

農業を営んでいた先代夫婦が、敷地に建っていた農作業用の古い建物でパン屋を営むようになったのが、ゼルコバのはじまりである。
薪窯を使い、都会では味わえないような感覚のパンは、客として訪れた小野さんに忘れられない印象を与えた。

「ここのパンは衝撃でした。
もともと青梅の麦(MUJI)というパン屋さんに薪窯を作ってもらい、パンはお母さんが独学で作り上げたそうです。
僕はその頃そば屋で働いていましたが、立川におもしろいパン屋さんがあると聞いてここへきて、お母さんのパンをはじめて食べたときは、本当に衝撃を受けましたね。
パンの配合は当時と同じものも、ちがうものもあります。
本当は薪でやりたいのですが、いろんな事情でむずかしく、いまは休止しています」

もともと薪窯を使用していたが、いまは薪と同じく遠赤外線効果の高い窯でパンを焼いている。
私は本当に久しぶりにこの店を訪れたが、試食のひとかけらを口にした瞬間、かって食べた味が見事に甦った。
それほど、薪窯以前・以後に関わらず、ゼルコバの味は変わっていない。
自家製酵母の移ろいやすさを考えても、並大抵ではない。
独特の甘さ。
酵母からやってくるのか、国産小麦のものなのか。
誰もが心をつかまれ、好きになってしまう味だと思う。

ラムカランツとくるみのプチ(231円)
ざくざくと皮が割れ、上面と底面の、不揃いの香ばしさが愛らしい。
皮に味があり、噛みしめるほど濃厚な甘さがあふれ返る。
そのうちに中身も清澄な感じから、よりはっきりとした甘さへと移ろっていく。
パン自体の甘さと共鳴しながら、くるみやカランツ(カレンズ)の甘さが次々と発火する。
食感も、がさがさやら、ふわっやら、もちっやら、あらゆる愉楽がめまぐるしく訪れる。
たった1個のプチパンの中でそれらが巻き起こるのだ。

「特別な作り方はなにもしていません。
塩と粉と酵母。
発酵が大きいでしょうね。
パンというのは、作り手の発酵に対する見方がすごく影響を与えると思います。
いまはそれがうまく調整できていて、ずっと変わらないからじゃないでしょうか。
好きな味、出したい味がぶれてないというか。
知人の店には行きますが、基本的にパン屋さん巡りはしません。
勉強不足といえば勉強不足なんですが、それがぶれてないことにつながっているかもしれません」

自家製酵母さんカンパーニュ(1.3円/1g)
生地を指でひっぱるととても伸びる引きの具合はもちのようだ。
そのせいで、噛むときにはとても心地いいもちもち感になる。
褐色の同心円が刻まれたうつくしい皮は、がさがさっと快く崩れる。
その色合いの深さと同じように、皮の焦げ味さえ深く、酸味とほのかな甘さを発する。
ぷるぷるとしたこの中身を噛みしめ、あるいは歯と歯のあいだにはさまったのをぷちんと弾けさせ、もてあそんだり。
口の中で、あるときは皮の濃厚さに、あるときは中身のみずみずしさに、あるいはふたつの混じり合うさまに意識を向けて。
まったくのプレーンなものであってさえ、よくできたパンは、こんなふうにいつまでも楽しんでいけるのだ。

自然の中に囲まれていることの心のやすらぎ。
喧噪の中からやってきた私は、ここでパンを作れることの幸福を思う。
自然の色彩や、音や、香りにうつくしさを発見するような感受性は、パンと向き合うとき影響を与えずにはおかないだろう。

「食べる相手のことはいつも考えています。
パンを作るのは大好き。
もともと、ものを作るのが好きで。
自分がいいと思うものを作る。
そのことを大切にしたいと思っています。
パンだったり、無農薬の野菜だったり。
大切に作られた、(作った人との)つながりが見えているものを、納得した形で出す。
それを共感してもらえるとうれしい」

月曜と土曜は鈴木農園(小野さんの両親の農園)の野菜も売る。
無農薬であったり、自家製酵母であったり。
平和に作られたもの、自分がいいと思うものだけが、人の手から人の手へ渡っていく。
それが理想的な社会を作り出すための、ひとりからでもできる実践である。
小野さんの言葉の中には、そうした思想が垣間見えた。

金時豆のシャンピニオン(231円)
「ラムカランツとくるみのプチ」と同じ3%ふすま入り生地をきのこ型に焼きあげている。
ころころとこぼれ落ちそうな金時豆をそれでも落とさずに、なんとかかぶりつく。
硬そうで硬くないのだ。
ざわざわと崩れ落ちる皮の下の中身のぷるぷる感。
はちみつ入りバタークリームのやわらかな甘さが、甘さを控えた豆を補強して、やさしい階調において響きあう。

薄暗い建物の中に、冬の日が差し込んでいる。
ストーブであたためられた室内はとても快適だ。
このカフェで時を過ごせば、どれだけ心安らぐことだろう。
木漏れ日が輝く草むらに横たわって、意外なあたたかさに体全体を包まれながら、林の中に横たわって過ごすような。
『武蔵野』と名づけられた小説で主人公がおこなっていた黙想の時を思いだした。

都心から西武立川は遠い。
だが、遠い距離をはるばるいかなくては食べられない時間、過ごせない時間がここにはあった。

ゼルコバ
西武拝島線 西武立川駅
042-560-4544
立川市西砂町5-6-2
10:00〜16:00(売り切れ終了)
火曜水曜木曜休み

#173
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ゼルコバ(西武立川)
173軒目(東京の200軒を巡る冒険)

玉川上水が流れ、桜の並木があり、たくさんの緑が都市の風景と調和している。
西武拝島線に乗って車窓を眺めていると、いつも武蔵野という言葉を思いだす。

幹線道路を折れ、古い農家の敷地へ入る。
入るというより、迷いこむ、といったほうがいいかもしれない。
忘れていた価値観に身をまかせる。
草や木や炭の匂いを嗅ぎ、風や鳥の声をうつくしいものとして受け入れている自分に気付くことになる。
草むらにつけられた小道を曲がる。
トトロの住処へと通じる草のトンネルをくぐり抜けたように、少しだけ生まれ変わった自分が目にするのは、木造の農家である。

ここでパンを焼くのは小野孝章さんと奥さん。
「最初の7年は、(奥さんの)お父さんとお母さんがやっていましたが、僕と家内でやるようになって8年。
もともとお父さんとお母さんがやっていたのを、僕がお手伝いするようになって、ここの店をやらせてもらうことになりました。
ここは農家で養蚕をするための建物でした。
2人(お父さんとお母さん)は、いまは野菜を作っていて、完全にパンからは離れています」

農業を営んでいた先代夫婦が、敷地に建っていた農作業用の古い建物でパン屋を営むようになったのが、ゼルコバのはじまりである。
薪窯を使い、都会では味わえないような感覚のパンは、客として訪れた小野さんに忘れられない印象を与えた。

「ここのパンは衝撃でした。
もともと青梅の麦(MUJI)というパン屋さんに薪窯を作ってもらい、パンはお母さんが独学で作り上げたそうです。
僕はその頃そば屋で働いていましたが、立川におもしろいパン屋さんがあると聞いてここへきて、お母さんのパンをはじめて食べたときは、本当に衝撃を受けましたね。
パンの配合は当時と同じものも、ちがうものもあります。
本当は薪でやりたいのですが、いろんな事情でむずかしく、いまは休止しています」

もともと薪窯を使用していたが、いまは薪と同じく遠赤外線効果の高い窯でパンを焼いている。
私は本当に久しぶりにこの店を訪れたが、試食のひとかけらを口にした瞬間、かって食べた味が見事に甦った。
それほど、薪窯以前・以後に関わらず、ゼルコバの味は変わっていない。
自家製酵母の移ろいやすさを考えても、並大抵ではない。
独特の甘さ。
酵母からやってくるのか、国産小麦のものなのか。
誰もが心をつかまれ、好きになってしまう味だと思う。

ラムカランツとくるみのプチ(231円)
ざくざくと皮が割れ、上面と底面の、不揃いの香ばしさが愛らしい。
皮に味があり、噛みしめるほど濃厚な甘さがあふれ返る。
そのうちに中身も清澄な感じから、よりはっきりとした甘さへと移ろっていく。
パン自体の甘さと共鳴しながら、くるみやカランツ(カレンズ)の甘さが次々と発火する。
食感も、がさがさやら、ふわっやら、もちっやら、あらゆる愉楽がめまぐるしく訪れる。
たった1個のプチパンの中でそれらが巻き起こるのだ。

「特別な作り方はなにもしていません。
塩と粉と酵母。
発酵が大きいでしょうね。
パンというのは、作り手の発酵に対する見方がすごく影響を与えると思います。
いまはそれがうまく調整できていて、ずっと変わらないからじゃないでしょうか。
好きな味、出したい味がぶれてないというか。
知人の店には行きますが、基本的にパン屋さん巡りはしません。
勉強不足といえば勉強不足なんですが、それがぶれてないことにつながっているかもしれません」

自家製酵母さんカンパーニュ(1.3円/1g)
生地を指でひっぱるととても伸びる引きの具合はもちのようだ。
そのせいで、噛むときにはとても心地いいもちもち感になる。
褐色の同心円が刻まれたうつくしい皮は、がさがさっと快く崩れる。
その色合いの深さと同じように、皮の焦げ味さえ深く、酸味とほのかな甘さを発する。
ぷるぷるとしたこの中身を噛みしめ、あるいは歯と歯のあいだにはさまったのをぷちんと弾けさせ、もてあそんだり。
口の中で、あるときは皮の濃厚さに、あるときは中身のみずみずしさに、あるいはふたつの混じり合うさまに意識を向けて。
まったくのプレーンなものであってさえ、よくできたパンは、こんなふうにいつまでも楽しんでいけるのだ。

自然の中に囲まれていることの心のやすらぎ。
喧噪の中からやってきた私は、ここでパンを作れることの幸福を思う。
自然の色彩や、音や、香りにうつくしさを発見するような感受性は、パンと向き合うとき影響を与えずにはおかないだろう。

「食べる相手のことはいつも考えています。
パンを作るのは大好き。
もともと、ものを作るのが好きで。
自分がいいと思うものを作る。
そのことを大切にしたいと思っています。
パンだったり、無農薬の野菜だったり。
大切に作られた、(作った人との)つながりが見えているものを、納得した形で出す。
それを共感してもらえるとうれしい」

月曜と土曜は鈴木農園(小野さんの両親の農園)の野菜も売る。
無農薬であったり、自家製酵母であったり。
平和に作られたもの、自分がいいと思うものだけが、人の手から人の手へ渡っていく。
それが理想的な社会を作り出すための、ひとりからでもできる実践である。
小野さんの言葉の中には、そうした思想が垣間見えた。

金時豆のシャンピニオン(231円)
「ラムカランツとくるみのプチ」と同じ3%ふすま入り生地をきのこ型に焼きあげている。
ころころとこぼれ落ちそうな金時豆をそれでも落とさずに、なんとかかぶりつく。
硬そうで硬くないのだ。
ざわざわと崩れ落ちる皮の下の中身のぷるぷる感。
はちみつ入りバタークリームのやわらかな甘さが、甘さを控えた豆を補強して、やさしい階調において響きあう。

薄暗い建物の中に、冬の日が差し込んでいる。
ストーブであたためられた室内はとても快適だ。
このカフェで時を過ごせば、どれだけ心安らぐことだろう。
木漏れ日が輝く草むらに横たわって、意外なあたたかさに体全体を包まれながら、林の中に横たわって過ごすような。
『武蔵野』と名づけられた小説で主人公がおこなっていた黙想の時を思いだした。

都心から西武立川は遠い。
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#173
200(西武新宿線) comments(0) trackbacks(0)
ブレッドボード(井荻)
165軒目(東京の200軒を巡る冒険)

私にとって、小さな宝物のような店だった。
昔、ブレッドボードの近くに住んでいたことがある。
そうでなければ見つけることができない。
メディアで派手に取り上げられているわけでもないからだ。
だから、通りすがりでこの店を見つけたときのよろこびはひとしおのものだった。
パンが食べたくなったとき、おいしいものが手に入ったとき、自転車を走らせる。
思えばそうしてブレッドボードは私の日常になっていった。

店主の津野薫さんはこの店を開く前、アンデルセンで技術指導や店づくりに携わっていた。
「おふくろが、パンが好きでいつも食べてました。
うちは広島で、原爆で焼け野原だった戦後すぐのころからアンデルセン(高木ベーカリー)におふくろはよく通っていた。
なんでも、アンデルセンの創業者は戦地から広島に帰ってきて、生きるよろこびをみんなに与えようと、『なんでもやってやるんだ』という意気込みでパン屋をはじめたそうで。
おふくろが買ってくるアンデルセンを食べて育ち、僕もパン好きになりました。
大きくなって大学に入ってもやることが見つからないままで、そんなときおふくろが『アンデルセンに面接行ったら?』って(笑)」

パンではなく、ブレッド。
ブレッドボードのパンはアメリカで育まれた。

「3、4年、現場に出たあと、希望してアメリカの子会社に行きました。
5年間ニューヨークにいました。
アメリカのパンは、当たり前ですけど、すごくヨーロッパ的ですよね。
菓子パンとか惣菜パンじゃない。
日本人にとっての米のような、食事パンが中心。
バゲット、ライサワーがあって、食パンもある。
スペインのパン屋さんに2週間ぐらい、生活をともにするぐらい、つきっきりで教えてもらいました。
カルチャーショック。
スペインのやり方で種を起こして、本当に時間をかけて作るパンを見せてもらいました」

まだ自家製酵母が日本ではあまり広まっていなかった時代に、パンの原点を目の当たりにしたことが、津野さんの基礎になっている。

「欧米ではパンが生活の中に入っている。
パンはキリストの体、ワインはキリストの血だといいますけど、その感覚がわかった。
パンが人間の体を形作っている。
そういう気持ちで作らなきゃいけないと思います。
素材を生かしながら、生活に密着してパンを作る。
僕、コックでもなんでもないんで、小麦と酵母を使ってパンを作る。
ただ、それだけです」

アメリカの洗礼を浴びたのは、パンだけのことではない。
雑貨に彩られたこの店のインテリアは、いっしょにアメリカへと同行した夫人の仕事である。

「家内は雑貨おばさんと呼ばれています(笑)。
前職は雑貨屋。
ちょうど僕らの年代というのは、雑貨がブームになったはしりで、この人はその栄枯盛衰をぜんぶ見てきた」

カリフォルニアでオーガニックの素朴なレストラン「シェ・パニース」を開き、世界的に有名になったアリス・ウォーター。
かわいいイラストが載っている彼女のレシピ本は奥さんのお気に入りだという。

「シェ・パニースが大好きなんです。
絵本をコピーしてパウチして貼っています。
私たちがちょうどアメリカに行ってたころ、アリス・ウォーターの『ベジタブル』という本が出た。
出版記念のイベントに行ってサインをもらいました。
握手もしてもらって(笑)」

パンの味は本物だったとご主人も振り返る。
「アクメ・ブレッドとカフェ・ファニーをガレージでやってる頃で。
すごくおいしかったなあ」

客がひとりかふたり入ると、もういっぱいになってしまう。
写真をうまく撮るアングルさえ見つけられないほどの狭さ。
この小さな店で経営を軌道に乗せているのは。アンデルセン時代の経験則が生きているからだ。

「アンデルセンの商品構成の通りにやったのがよかったですね。
スイート6割、食事パン2割(うちフランスパン1割)、惣菜パン2割。
それを基本に試行錯誤でやってみようと。
うまくはまりました。
これでいいんだ。
でも、長い目で見たら、常連のお客さんについてもらわないといけないんで、食パン、イギリスパンは安めに設定しました。
そこの利益は我慢して、おいしいのを一生懸命作る。
儲けは少なくなったけど、お客さんはついた。
製造は完璧にやるんだけど、接客は隙があったほうがいい。
かわいらしく、フレンドリーに、一歩引いてあげる」

イギリスパン1.5斤(273円)
店主の狙いにものの見事にはまっていたのかもしれない。
このパンを朝食べるためにブレッドボードに通い出したのだから。
なんといってもこの食感。
やわらかく沈み込み、ある地点でコシにぶつかる。
それに抵抗されつつ、戯れる。
いっぽうでパンは溶けつづけるから、噛むことが快感になる。
この食パンの魅力は、甘さではなく、リーン(シンプルな小麦の味わい)であること。
皮の香ばしさ、中身の小麦味は、塩気に高められ、噛むごとに濃厚になっていく。

カンパーニュを作って食事の中に入り込もうとしているんですが、なかなかむずかしい。
食べ方がむすかしいとお客さんが思ってしまうんですよね。
やっぱりカンパーニュのオープンサンドが究極ですね。
新鮮な野菜と、チーズとハムに、ドレッシングかけて食べたら天国。
あとは、亜麻の実のパンなんか、ドライブのときにいい。
旅行のときって甘いものを食べがちなんだけど、こっち食べたほうが、体もよくなりますし。

キャラウェイシードのヴァイツェンミッシュブロート(ハーフ240円)
このスパイスの使い方は新しい。
キャラウェイシードの、ミントに似たすっとする香りがパン全体から立ち上っている。
それはライ麦の香りに通じるところがあって、その香ばしさに寄り添って一体になる。
舌先を刺激するわずかな酸味もそれと響きあい、ライ麦のコクをいっそう燃え上がらせ、口の中を吹きすさぶ。
ストライプの入ったバナナ型のキャラウェイシードがトッピングとして散りばめられているのもかわいい。

アーティチョークとハーブのフォカッチャ(231円)
噛んだ瞬間、マリネしたアーティチョークの酸味がほとばしって、口がいっぱいになる。
その鮮烈さゆえに、背後からじょじょに高まってくるフォカッチャ生地の風味が、よりいっそうあたたかく感じられる。
パンの甘さにもキレがある。
アーティチョークが消え去ったあと、滲みこんだヴィネガーだけでおいしく食べられるほど、このフォカッチャは秀逸である。

「おいしいってなんだろう。
自分がおいしいのがいちばん。
自分の店で残ったパンを食べたとき、『これうまいなー』って心から思えなきゃだめですよね。
お客さんに『おすすめは?』って聞かれるんですけど、『ぜんぶです』って答えます。
おいしいパン作るっていう使命感ですよね」

自分が本当においしいと思ったものだけを出すということ。
自分と客を分けないということ。
パン職人の良心とは、一言でいって、これに尽きるのではないか。(池田浩明)

ブレッドボード
西武新宿線 井荻駅
03-3395-7408
10:00〜19:30
日祝休

#165




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