パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
1月20〜25日 「カネルブレッド」銀座三越催事に登場!
1月20日(水)〜25日(月)まで銀座三越7F 催物会場
「春を待ちわびて、パンとコーヒー。」
カネルブレッド×カフェ・ファソン
新麦コレクションがプロデュースするベーカリー&カフェ。
栃木県那須黒磯からカネルブレッドが登場、オーブンなど製パン機材が持ち込まれ、その場でパンが焼きだされる。

あの那須SHOZO CAFEで、のちにカネルブレッドのオーナーとなる岡崎哲也さん、シェフとなる平山翔さんは出会った。
当時パティシエをしていた平山さんは、パンへの情熱を抑えきれず、試作をつづけていた。

「そのパンがもうすごくおいしかった」
と岡崎さんは当時のことを思いだす。
平山翔という才能を見いだした岡崎さんは、東北本線・黒磯駅前にカネルブレッドを開店することを思いつく。
焼きたてのパンのぬくもりを提供し、地元の人びとをよろこばせるために。

カネルプッレ
この癖になる食感はなんだろう?
菓子パンのやわらかさを想像しながら噛む。
しなやかにふにっとしつつさくっと痛快な歯切れ。
そこからゆっくりと溶けてくる。
子供の頃、食べ終わるのが惜しくて、ビスケットをしゃぶったことを思いだす。
シナモン,カルダモン。
エッジの効いた香りなのにどこかやさしく。
北欧の伝統を踏襲しながら、日本のなつかしさを潜ませる。

28歳の平山さんが新世代のパン職人である所以。
それは、素材からのインスピレーションを受けてパンを作っていくことにある。
とりわけ国産小麦をごく自然なものとして使いこなす。
そもそものきっかけは、十勝の前田茂雄さんの畑を訪ねたことだった。

「国産小麦でしかできないパンがある。
国産小麦で日本のパンを作りたい。
外国のパンを国産小麦で作るのではなく。
日本人が自分たちのパンを作る時代。
もち食感は日本人に合っていますし。
吸水を多くし、国産小麦を使ったフォカッチャは、特に年配の方ほど好まれます」

ディンケルメロンパン
香ばしいビスケット生地の心に食い込んでくるフレーバーは、滋賀県大地堂のディンケル小麦(スペルト小麦。小麦の原生種)のもの。
噛む快楽があり、しかもぱさつきもないパン生地は甘さがほのかで、口の中で一気に溶けて小さくなり、ビス生地の甘さをうまく中和して、さわやかさへ導く。

食べるのが好きな平山さんが、おいしいものを求めて東京を巡っていたとき。
一軒の店に出会ったことが、パン職人への転身を決定づけた。
吉祥寺、ダンディゾン。
木村昌之さん(ダンディゾン元シェフ)は素質を見抜いてか、店を訪ねた平山さんに、仕事の手を休めて長い間パンの話をした。

「木村さんの話しを聞くだけで学びになる。
聞いたことを、あとから自分で噛み砕いて、参考にしました。
尊敬する方々の背中を追いかけている。
でも、同じことはやっていません」

弱冠28歳。
少しの間、パン屋で働いていた経験はあるが、ほぼ独学というから驚く。
パンの常識に縛られないということがプラスに働いているのだろう。
平山さんのような新しい世代が登場してきたのは、素材中心・国産小麦の使用へと傾いていくパン業界の流れがある。

「木村さんや、片根さん(カタネベーカリー)が一気に、みんな変えてった。
東京の店を見てまわるとすごく刺激を受けました。
見たものを持って帰って、試作をする中で、レシピがシンプルになってった。
材料の点数が極端に減りました」

素材の素。
恐れずにそれと向き合ったとき、きっと素材は新しい魅力を放ち、澄んだ音色を奏ではじめたことだろう。
その作り手自身の感動を、カネルブレッドのパンからは食べ手も感じることができる。

林檎とイチジクのジャムパン
イチジクが放つブラウンの甘さ、フレーバー。
ブランデーの香気がそれを後押しする。
りんごの甘酸っぱさがそこに合わせられ詩的な次元へと昇華されている。
ぷるんとしたパンの食感のおもしろさ。
でも普通の菓子パン生地とはちがっていて、砂糖よりも香ばしさ、小麦の甘さが全面に出ている。
だからこそ、フィリングと合わさって実に味わい深く、一口運ぶたびに趣きを変えるので、パンの魅力にずぶずぶと引き込まれてしまう。
いちじくの種がぱちぱちとはぜることさえ食感のおもしろさとして味方に取り込む。

365日の杉窪章匡さんはもっとも影響を受けた一人だという。
キタノカオリに粉対比100%の水分を入れて作られる、365日「ソンプルサン」。
そのみずみずしくクリアなおいしさは、平山さんに国産小麦で主食になるパンを作ることへの可能性に目覚めさせた。
製法を予測し、油脂をオリーブオイルに変えて、何度も試作を繰り返し、「フォカッチャ」の形に落としこんだ。
もちもち感、ごはんのような食べやすさ。
それはイタリアのパンではなく、日本の麦で作る日本人のためのパンだ。

最後に、以前平山さん自身から送られてきたメッセージを載せたい。
「麦や作物を育てる方へ敬意を表し、食材を扱うこと。
それらを食べる方々を気遣い、寄り添うこと。
日本の四季を感じ、食材の旬を楽しみ、味わうこと。
安心安全という安堵感、驚きや興奮、そして美しさなど。
私たちは『美味しい』の、その先にあるものを大切にし、一つ一つ丁寧にパンを焼いています。
『LOCAL FOOD  & GOOD COMMUNICATION』」

カネルブレッド
JR東北本線 黒磯駅
栃木県那須塩原市本町5-2
0287-74-6825
7:00〜18:00(火休)

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新麦パーティ報告
あけましておめでとうございます。

おいしくて、安全な小麦がもっと日本中にあふれる未来を目指し、新麦コレクションは今年もっと活動を加速させたいと思っております。
引き続き応援をよろしくお願いします。

たいへん遅くなりましたが、2015年10月17日に、ログロード代官山内「GARDENHOUSECRAFTS」で行われた「新麦パーティ」のご報告です。
新麦の収穫を祝い、小麦がやってきた大地や収穫した農家さんの仕事に思いを馳せ、感謝する収穫祭がこの「新麦パーティ」です。

10:30からスタートした新麦パーティ【販売会】。
朝まで降りつづけた強い雨は予報に反して奇跡的にあがり、なんとかイベントを開催することができました。
とはいえ冷たい風が吹く寒い天候の中、たくさんの方に足をお運びいただき、行列までできたことは、たいへんありがたいことです。

(ソーケシュ製パン+トモエコーヒー)

GARDENHOUSECRAFTS周辺のスペースに白いテントが立てられ、特設ブースにおいしそうなパンが並べられました。

(麦家)

全国各地の新麦の個性をパンとして表現したい。
各店のパンはそんな思いにあふれていました。

(リュミエール・ドゥ・ベー)

第1回10:30〜
カネルブレッド(栃木)、ブルージャム(福岡)、麦家(宮城)、
ソーケシュ製パン(北海道)、リュミエールドゥベー(神奈川)、テーラ・テール(愛知)、パンストック(福岡)


(川越ベーカリー楽楽)

第2回12:30〜 
パーネ・エ・オリオ(東京)、宗像堂(沖縄)、和むぎやろくじゅう(埼玉)、GURUGURUBAKERY(東京)、川越ベーカリー楽楽(埼玉)、TOLOPANTOKYO(東京)、チクテベーカリー(東京)

(和むぎや ろくじゅう)

第3回14:30〜
シェ・ジョルジュ(広島)、ヨシダベーカリー(東京)、komorebi(東京)、コウボパン小さじいち(鳥取)、セテュヌ・ボンニデー(神奈川)、禅ぱん(広島)、ムール・ア・ラ・ムール(神奈川)

販売にあたったのは、ボランティアの人たち。
笑顔で接客、みんなの力を合わせて、このイベントを支えてくれました。

13時からGARDEN HOUSE CRAFTS屋上で行われたのは新麦パーティEATLIVE!。
全国8つの小麦産地から生産者・製粉会社が来場。
8人の人気シェフとチームを組んで、今年の新麦を表現したパンを出展しました。
来場者は8つのブースを巡り、パンを受け取り、直接作り手と触れ合う。
またマイクでは作り手のインタビューを随時行います。
ミュージシャンのように、農家やパン職人が行う、食べるライブなのです。

■江別製粉(北海道) × ブーランジェリーレカン割田健一シェフ
ハルユタカ30周年を記念したバゲット「2015ハルユタカポーリッシュ」。
国産小麦でパンを作ることなどほとんど誰も想像していなかった時代から、地元の小麦をすくいあげ、ブランドとして確立したのは江別製粉でした。
それを記念するパンとして、はるゆたかの個性を最大限に活かすため、副材料の入らないバゲットを選択しました。

そして、ホットワインをイメージ、山梨のカベルネ・ソーヴィニョンとスパイス、銀座のはちみつ、みかんを入れた「春よ恋」。
廣瀬さんのスペルト小麦の粒、チーズ、たまねぎソテー、千葉の加瀬さんのピーナッツを混ぜたリゾットパン「キタノカオリ」。
割田シェフが大きく焼いたパンは来場者の歓声を誘っていました。


■前田農産・前田茂雄(北海道) × ブラフベーカリー 栄徳剛シェフ
自らの味わいを強く主張するより、食感のよさや製パン性で他の小麦や具材を活かすのが、はるきらり。
そのさっくり感や香ばしさを活かすために、栄徳シェフが弾き出した答え。
ブラフベーカリー名物のミルクフランスに仕立てることです。
引きのない不思議な食感は、小麦粉の30%だけ先にローストしてグルテンを死活させるテクニックで作られます。

前田さんはジーンズで作ったかっこいい作業服で来場。
高齢化が進む農業を若い人があこがれるような職業にするための試みです。

■素材舎(三重県) × カタネベーカリー 片根大輔シェフ 
もちもちの食感がおもしろい「桑名もち小麦」。
もちを思わせる和の食感がふさわしいパンはあんぱん。
智子さんがあんを炊き、片根シェフが包あんする。
このイベントのために夫婦で200個以上も作りました。

いま話題のオーブントースター「バルミューダ」がもちこまれあたためられたあんぱんは、表面ぱりっと、中もちっと、あんことろとろという最高の食感。
寒気も手伝って最高のおいしさとなりました。

■前田食品(埼玉) × タルイベーカリー 樽井勇人シェフ
埼玉で作られるハナマンテン。
かっては麺用しかなかった埼玉で、パン用小麦を作るのは年来の悲願でした。
ハナマンテンを作る農家、川越のとなり坂戸市の原さんも来場してくれました。

新麦の名にふさわしく、10日前に挽いた埼玉県産の小麦「国産ふらんす」。
それを使って、樽井勇人シェフが作ったのは伊予かんピールとマカダミアナッツ入りのパンです。


■ぼくらの小麦(山梨・神奈川) × 365日 杉窪章匡シェフ
おいしい空気、寒暖差があり乾燥した気候、きれいな水。
小麦をおいしくする要素がすべて揃ったような山梨県の高原地帯・北杜市で作られた小麦を石臼で挽いた「ぼくらの小麦」。

杉窪シェフは小麦のフレーバーを最大限に表現するため、あえて無発酵でパンを作りました。
数珠のように小さな玉がつながっているのを手でちぎって分けあう形。
生産者、製粉会社、流通業者、パン職人、消費者がつながりあうという新麦コレクションの理念を表現したパンです。
■湘南小麦(神奈川) × ル・ルソール 清水宣光シェフ
おいしさにこだわって作られた小麦を、風味をとばさないよう低速で石臼を挽いて作られる湘南小麦。

清水宣光さんが湘南小麦のパンにアンチョビバターをはさんだのは、湘南→しらす→いわし→アンチョビという連想から。
■大地堂・廣瀬敬一郎(滋賀) × パーラー江古田 原田浩次シェフ
個性の塊のような二人組。
原田浩次さんがディンケル小麦で作ったのは、粒のディンケル小麦を炊いて生地に混ぜ込んだパン。
また、原田さん自身が収穫してきたワイン用のぶどうを種のままちらしたスキャッチャータも販売。

イタリアで秋の風物詩となっているスキャッチャータは収穫祭にふさわしいパンです。
ワインも持ち込まれ、お祭りの雰囲気が漂いました。
■ろのわ・東博己(熊本) × パンデュース 米山雅彦シェフ

米山シェフが「ミナミノカオリ」の全粒粉で作った「 み な み ち ゃ ん の パ ン ケ ー キ 」 は、パンとパンケーキの中間。
全粒粉ならではの野性的な香りを発酵クリームやバターの甘さやミルキーさでバランスさせたもの。
自然の感動を、やわらかくソフィスティケートした形で伝えたいという米山さんの狙いがはまっていました。

千葉県産のピーナッツペーストがベーカリーの圧倒的支持を受けているボッチの加瀬宏行さんがブースを出したり。

世界各地の豆の個性を見事に表現して焙煎するカフェ・ファソンの岡内賢治さんもパンに合うコーヒーを供してくれました。

こんな一幕もありました。
観客として来場していた若い農家・小林祐さん(群馬県すみや農園)。
私は数年前、農業をはじめる前の小林さんに大地堂(滋賀県)の廣瀬敬一郎さんのところで出会ったことがあります。
自分もディンケルを育てたいと廣瀬さんに話を聞きにきていたのです。
あれから3年、小林さんは農園主となりいよいよディンケル小麦を植えることになり、このイベントの中でディンケルの種(つまり小麦の粒です)が手渡されたのです。
来場者みんなに祝福され。
農業は高齢化が進み、離農する人が後を絶ちません。
そんな中、おいしくて安全な小麦を育てる人にもっと出てきてほしい。
新麦コレクションの切なる願いです。

東博己さんも挨拶で言っていたように、イベントに参加した農家さんは、自分の丹誠込めた麦を食べる人を見て、本当によろこんでくれました。

観客のみなさんはどうだったでしょうか。
みなさんの笑顔が会の成功を物語っていたと言うのは、手前味噌でしょうか。

最後になりましたが、ご来場いただいたみなさま、そして運営を手伝ってくれたボランティアのみなさま、ご協力いただいたパン屋さん、その他の業種の方々。
みなさまに厚くお礼を述べたいと思います。

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北海道、新麦を訪ねる旅2 ハルユタカを救った男
国産でふっくらとしたパンを焼くことを可能にした強力小麦「ハルユタカ」が登場して、今年で30周年になる。
日本に強力小麦がなかった頃、奇跡のように誕生し、高タンパクと豊かな風味で支持を広げてきた一方、病気に弱く、何度も不作に泣かされてきた。
一時は、後継の「春よ恋」に取って代わられようとしていたこの品種の、画期的な栽培方法を確立、再び多くの農家によって栽培される道筋をつけた人がいる。
片岡弘正さん。
国産小麦の普及に尽力してきた江別製粉のお膝元である江別市の農家。
彼が行った栽培法は、常破りの方法だった。

話は二十数年前に遡る。
北海道でようやく生まれたパン用小麦ハルユタカの収量を安定させようと、江別市の農家では試行錯誤が行われていた。

「いまの社長(江別製粉・安孫子建雄社長)に誘われて、いろんなことをやった。
ペーパーポットを使って苗仕立てでやってくれんかと。
『無理です』と言ったけど押し切られて。
4年ぐらいやった。
いいものはとれるけど、春の忙しい時期に苗植えをやるのは大変」

ペーパーポットでひとつひとつ育てた小麦の苗を広大な畑に植え付ける。
野菜を作るときのような農法を北海道の大規模農地で行うのだから気の遠くなる手間だ。

そんなとき、転機が訪れる。
「平成3年の秋か4年の秋だったと思う。
ペーパーポットをやめたと同時に『初冬まき』をはじめました」

北海道の小麦には「春まき」と「秋まき」がある。
ハルユタカや春よ恋など、「ハル」という言葉がつく小麦は春まき小麦。
ゆめちからやキタノカオリの登場まで、パン用小麦といえば、春まきだった。
春、雪溶けのあと種をまくのが普通。
それを、初冬にまこうというのだ。

「『初冬まきっていうのがあるよ』。
改良普及所の人が、わずかA4一枚の紙で話を持ってきた。
それがスタート。
ハルユタカや春よ恋は、秋にまいたら普通は越冬できない。
でも、春まき小麦を前年度にまいても、芽が出なければいいのであって。
芽が出て青くなっちゃうと冬越しできないけど、葉っぱが広がっていかなければ枯れることがない。
土の中で積算温度(種蒔きからの日ごとの気温の合計)が110℃になると発芽がはじまるんだけど、冬の地温は2℃ぐらい。
温度が低ければ、休眠したままになる。
12月、1月ぐらいにやっと雪の中で芽が出てくる」

生産者として初冬まきに取り組んだ例はない。
片岡さん自身、半信半疑のチャレンジだった。

「ここらへんは1m50センチぐらい積もります。
最初は雪が降る前の日にまいた。
11月10日か20日ぐらいだったかな。
雪が溶けて姿を現したときはびっくりしたよ。
4〜5センチのもやしみたいなのが生えていたんだから。
こりゃだめだと思った。
芽が、雪解けで黄色っぽくなるんだよな。
それが、あたたかくなるにつれて、どんどん黄色から緑になってきた」

「ハルユタカは、開花のとき雨に降られると赤カビの被害に遭いやすい。
北海道は梅雨がないっていうけど、『蝦夷梅雨』(えぞつゆ)ってあるんですよ。
雨がつづくと赤カビの胞子が飛ぶようになり、それが開花時期に重なると、赤カビ病になる」

赤カビが発生すると小麦はどうなるのか。
片岡さんが見せてくれた写真は無惨なものだった。

「3日間ぐらい雨が降ると、こんなになる。
いまはほっと一安心だけど、収穫期の雨がどうなるかまだわからないよ」

農業は自然との戦いとよく言われる。
だが、観察と知恵で、敵であるはずの自然を味方にすることができる。

「初冬まきだと、なんで赤カビになりにくかというと、開花時期がずれるから。
春まき小麦だと、開花時期は6月20日すぎ。
それが、初冬播きだと6月15〜20日になります。
そうなると秋まき小麦の開花時期となんぼも変わらん。
今年も心配したんだけど、(蝦夷梅雨の影響は)たいしたことなかった」

地球が丸いと信じて海に乗り出す大航海時代の船乗りのように。
いまでは確立された初冬まきも、はじめた当初は、はた目に無謀と見えるチャレンジだった。

「邪道って言われました。
でも、やったのは物好きだからかな。
農業試験場で試験栽培して、データが残ってるちゅうことは、たぶんなんとかなると思いました。
それまでも農協の部会の取り組みで、(ハルユタカの栽培を安定させるための試みを)いろいろやったけど、みなさんうまくいかなくて。
失敗したり、損したり。
それでも、初冬まきをやってみようかなって、よく思ったもんですよ。
取り組んだのは、僕ともう一人ぐらいかな。
種をまく時期をずらすなんて、みなさん関心なかった。
ところが、僕の収量を見て、『そんなばかな、まぐれだろう』と。
初冬まきで作ると、粒張りもよくなるし、品質的にもいいんですよ。
(一般の農家に初冬まきが定評を得るまで)10年かかりました。
最初の3、4年はみんな信用しない。
少しずつやる人が増えてきた。
そんな寒い時期に播くなんて、普通は誰もしないよ。
冬休みもずれこむし。
普通なら、トラクターも掃除して、パチンコ行くぞーってなってるのに(笑)。
(初雪が溶けたあとの)どろどろの畑に入ってたんだから。
昔はいまみたいに、全天候型のトラクターじゃなかったしね。
栽培方法がわかってきたから、(種まきの時期を)前倒しできるようになった。
10月10日ぐらいに、いまは種をまく」

不作のリスクを背負いながら、やっとの思いで確立した初冬まき。
その技術を、片岡さんは道内各地の農家に惜しみなく教える。

「自分のとこだけ、これっぽっち作ったってしょうがない。
みんなで作ってロット(まとまった量)を作らないと。
栽培面積を増やさないといけない。
北海道として、ハルユタカのロットを増やさなければ」

小麦作りは大きなチームだ。
ロットがなければ、製粉工場の巨大な製粉機を動かす採算ベースにのせることができない。
あるいは、各地で作られなければ不作のリスクにさらされやすく、年ごとの収量が不安定となり、パン屋が安心して使うことができない。
そうなれば、消費量が減って、ハルユタカをもはや作れなくなってしまう。
自分だけのことを考えるのでなく、見も知らぬ誰かのために動くことが、自分に返ってくる。
だから、片岡さんは初冬まきを伝えつづける。

小麦の栽培は、流通や交付金を司る農水省による、基準の変更に翻弄される。
赤カビの検査である「DON」の基準が厳格化されたのは、病気に弱いハルユタカにとっては不幸なことだった。
それまで、検査にかからなかったものまで、不合格とされたからだ。

「平成21、22年は不作。
江別全体でも10〜20トンしかとれなかった年もある。
特にDON検査が厳しくなったので、ハルユタカは壊滅。
初冬まきだけがなんとか残った。
それをきっかけに全道的に春よ恋に変わった。
残ったのは江別だけ」

初冬まきの技術が確立されなければ、ハルユタカはもう食べられなくなっていたかもしれない。
ここに片岡さんが「ハルユタカを救った男」と呼ばれる理由がある。

「ハルユタカが生まれて30年
名前がつく前から、試験の段階から関わってきました。
小麦って、一品種の寿命が短い。
早いもので5年、長いもので10年、15年。
病気に強いもの、タンパクが多いものにどんどん切り替わる。
それでも後継が出ないのはなんでかっていうと、ハルユタカの二世は育種をやってもなかなかできない。
同じ味を出すと元のに戻っちゃう。
すごく独特で、突然できたもの。
だから、この味は出せない」

北海道の品種に共通する甘さを持ちながら、古い麦に特有であるフレーバーの力強さや野趣も併せ持つ。
この品種を未来に受け継ぎたい。
片岡さんは「ハルユタカは世界一うまい」と断言する。
それはもちろん主観にすぎないけれど、ハルユタカに農業人生を懸けた、この人の言うことなら信じてみたい。

新麦コレクション収穫祭2015
全国から農家、トップシェフが集結!

ベーカリー様へのご案内
江別製粉の新麦コレクション
江別産限定「ハルユタカ100」
10月初旬発売予定
ご購入はこちらへ

9月27日(日)江別製粉の新麦を語ろう@カタネベーカリー
片根大輔シェフが5種類の小麦のバゲットを焼き分け、作り方のツボを語ります。
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新麦コレクション『収穫祭2015』
小麦農家×パン屋×製粉業者×消費者
みんなで作るパンイベント

新麦コレクション『収穫祭2015』

2015年10月5日(月)〜25日(日)
GARDEN HOUSE CRAFTS(ログロード代官山)など都内各所で

全国8つの産地の新麦パンとトークを楽しむ「新麦パーティ EATLIVE!」
全国の名店から寄せられた新麦パンが買える「新麦パーティ 販売会」
パンと料理とお酒のマリアージュを提案する「新麦ダイナー&トーク」
新麦のパン作りを気軽に体験する「新麦パン作り体験」
など、自然の恵みに感謝するイベントを続々展開! 
 

新麦コレクションは、10月5日(月)〜25日(日)の期間中、今年度産・挽きたての「新麦」を使ったパンのイベントを展開いたします。

新麦コレクションとは、とれたての新麦を使ったパンを食べていただき、パンが小麦という「自然の恵み」からできることを知っていただくプロジェクトです。

6月に九州からはじまる小麦の収穫。小麦前線は日本を縦断して北上し、7月下旬〜8月には北海道に到達。最速で製粉された日本中の新麦が10月はじめに出そろいます。小麦の一年という壮大なストーリーのフィナーレを飾る「収穫祭」(日本版「サンクスギヴィングデイ」)に日本を代表するパン職人が集結。日本中からやってきた新麦をパンにし、多くの方々に麦の持つテロワール(その土地の味)を楽しんでいただきます。

イベントの核となるのは、17日に行われる「新麦パーティ」。会場には全国からトップシェフたち、小麦生産者が来場。参加者のみなさんに小麦のメッセージを直接語りかけます。

参加ベーカリー(予定):
365日、カタネベーカリー、ブラフベーカリー、GARDEN HOUSE CRAFTS、パーラー江古田、ブーランジェリージャンゴ、ブーランジェリーレカン他、全国から20店舗以上

参加農家(予定):
前田茂雄(北海道・十勝)、廣瀬敬一郎(滋賀県)、東博己(熊本県)他


新麦コレクションとは
小麦生産者、製粉会社、流通業、パン屋、消費者が出会う場所。小麦というバトンを受け渡すチームとしてみんなが話し合い、もっとおいしいパン、よりよき未来について語り合います。小麦が畑から食卓に届くまでのストーリーを知り、互いの仕事を尊重して「おいしい」「ありがとう」という言葉を伝えるとき、日本の食はきっと変わるはずです。「EATLIVE!」「販売会」「ツアー」「講習会」などを通じて、出会いの場、メッセージが伝わる場を作りだしていきます。
ホームページ mugikore.net  

■ イベント全体概要
・総タイトル : 新麦コレクション「収穫祭2015」
・場所 :    GARDEN HOUSE CRAFTS(ログロード代官山)など都内各所
・日時 :    2015年10月5日(月)〜25日(日)
・主催 :新麦コレクション    

■ 新麦パーティ EATLIVE!
・場所 :    GARDEN HOUSE CRAFTS 屋上イベントスペース(ログロード代官山)
・日時 :    2015年10月17日(土) 第1回13:00〜15:00 第2回15:30〜17:30 第3回18:00〜20:00(完全入替制)
・チケット予約方法: 新麦コレクションHP、新麦コレクションFACEBOOKからネットで予約。9月21日〜27日までは会員先行予約期間です。割引価格で購入できます(一般発売は9月28日〜)。
・定員 :各回80名(計240名)    
・概要:九州から北海道まで、全国8つの地域から小麦生産者が来場。彼らとつながりを持つパン職人と二人一組となり、その小麦でパンを作る。小麦がどのように育ったか、小麦をどのように解釈し、パンを作ったのか。来場者は、生産者・パン職人が語るストーリーを聞きながらパンを食べる「EATLIVE!」(イートライブ)という新しい形式で送る。
・出演:【生産者】東博己(熊本)、廣瀬敬一郎(滋賀)、東博己(熊本)他
    【パン屋】365日、ブラフベーカリー、カタネベーカリー、パーラー江古田、ブーランジェリーレカン、麦ノ屋(鳥取)、パンデュース(大阪)他(すべて予定)
・詳細&予約 :本日から一般発売! 10月17日「新麦パーティ EATLIVE!」。365日、パンデュース、ブラフベーカリー、カタネベーカリー、パーラー江古田、ブーランジェリーレカン…全国から農家、有名パン職人が集結!新麦のパンとトークショー。
予約・決済ページ  

■ 新麦パーティ 【販売会】
・場所 :    GARDEN HOUSE CRAFTS 特設会場(ログロード代官山)
・日時 :    2015年10月17日(土)第1回10:30〜 第2回12:30〜 第3回14:30〜売切れ終了(各回ごとに出店者が異なります)
・概要:九州から北海道まで、麦にこだわりをもつパン屋さん約20軒が作ったパンを一般販売。東京初出店の知られざる名店も多数。
・販売方法 :予約なしでどなたでもお買い上げいただけます。
・出店者 : パンストック(福岡)、ブルージャム(福岡)、禅パン(広島)、シェ・ジョルジュ(広島)、テーラ・テール(愛知)、セテュヌ・ボンニデー(神奈川)、チクテベーカリー(東京)、GURUGURU BAKERY(東京)、パーネ・エ・オリオ(東京)、川越ベーカリー楽楽(埼玉)、カネルブレッド(栃木)(すべて予定。その他現在交渉中)
※出店者情報は分かり次第更新いたします。

■ 新麦ダイナー&トーク
・日時 :     10月10日(土) パーラー江古田
      10月11日(日) ブーランジェリージャンゴ(場所:ハロー・オールド・タイマー)
      10月11日(日) カタネベーカリー
      10月12日(祝) 365日×アルドアック×15℃(場所:アルドアック)
      10月16日(金) GARDEN HOUSE CRAFTS
      (日時場所未定) ブラフベーカリー
・予約方法: 各店店頭もしくはお店に電話で直接予約(会員先行予約は9月21日〜、一般は9月28日〜)。
・概要: パーラー江古田・原田浩次、カタネベーカリー・片根大輔、365日・杉窪章匡、ブラフベーカリー・栄徳剛、ブーランジェリージャンゴ・川本宗一郎、GARDEN HOUSE CRAFTS・村口絵里ら、日本を代表するベーカーが、各地の新麦を使ったパンと、それに合う料理・ドリンクを提案。料理人とのコラボレーションもある、一夜限りのスペシャルダイナー。各シェフとパンラボ池田浩明が、パンと料理の関係、小麦畑で見たもの、食の未来について語り合うトークも。
詳細:新麦コレクションFacebookイベントページ

■ オリジナル新麦パン限定発売
・場所 :    GARDEN HOUSE CRAFTS(ログロード代官山)
・日時 :    2015年10月5日(月)〜18日(日)
・概要: GARDEN HOUSE CRAFTSシェフ・村口絵里が新麦で作るパンを販売。この時期しか食べられない、小麦産地のテロワールが感じられるスペシャルなパン。

■ シンポジウム「小麦・未来・展望2015」
・場所 :    BSホール(高田馬場)
・日時 :    2015年10月18日(日)13:00〜
・出演 :安孫子俊之(江別製粉株式会社)、東博己(ろのわ)、廣瀬敬一郎(大地堂)、杉窪章匡(365日)、片根大輔(カタネベーカリー)、原田浩次(パーラー江古田)、池田浩明(パンラボ)
・概要: 全国から小麦生産者、パン屋、製粉会社、パン屋がパネラーとして登壇。安心・安全でおいしい小麦とは? テロワールを引き出す製粉方法とは? 小麦の個性をどのようにパンに活かすか? 地産地消にどのように取り組むか?などをテーマに語り合う。ノウハウを共有し、アイデアを出し合い、パンと小麦の未来を展望する。
・チケット予約方法: 新麦コレクションHP、新麦コレクションFACEBOOKからネットで予約
・詳細&予約 :http://mugi-1.peatix.com/

■ 新麦パン作り体験&新麦販売@青山パン祭り
・場所 :    青山パン祭り(国連大学前広場)
・日時 :    2015年10月24日(土)・25日(日)
       第1回10:00〜 第2回12:30〜 第3回15:00〜
・料金:2200円(会員・賛助会員) 2500円(一般)
・チケット販売方法: 9月21日より新麦コレクションHP、新麦コレクションFACEBOOKからネットで事前予約
・概要: ポリ袋に小麦粉などの材料を入れ、しゃかしゃかふるだけで、誰でも簡単にパンが作れる「ポリパン」で、新麦パン作りを体験できる。講師に梶晶子(happyDELI主宰)などを迎える他、滋賀県の小麦生産者・廣瀬敬一郎も来場し、小麦ができるまでについて語る。新麦を使った小麦粉(家庭向けサイズ)の販売も行う。
・詳細&予約 :近日中に公開

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