パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
Boulangerie A(半蔵門)
135軒目(東京の200軒を巡る冒険)

桜で名高い千鳥が淵に近い。
瀟洒なオフィス街・高級住宅地にスマートな店舗。
カフェがパン屋と化している。
カウンターのまわりにパンを並べて、カフェスペースで朝食やランチを取ることもできる。
あるいは、コーヒーとパンをテイクアウトして、オフィスや、付近のうつくしい公園で食べてもいい。

作り手もおしゃれな人だった。
「オーブンからパンが出てきた瞬間、おいしそうもあるけど、かっこいいな、と思っちゃいますね」
と中込直(ただし)シェフはいう。

かっこいい。
それはこの店のパンを表すのにぴったりした形容詞だ。
形がかっこいい。
ハード系を中心とした品揃えもかっこいい。
でも、なにがなんでも伝統のまま、というわけではない。
崩し方、フィリングとの合わせ方にセンスがある。
パンのコンセプトが見える。
形でコンセプトの片鱗を感じさせ、一口食べた瞬間に狙いを完全に理解し、噛めば噛むほど、考えが正しくパンに結実することを納得する。

ノア&カレンズ(180円)
極細カンパーニュ。
パンの皮愛好家に贈るカンパーニュのかりんとう。
齧りついた一撃でがりっと砕け、散っていくさまは、かってないほどの木っ端みじんぶり。
くるみのかりかりまでが歯ごたえの祭典に参加する。
皮面積の多いパンならではの味わいの濃さ。
カレンズの酸味がコントラストによってそれをより活かし、生地のかすかな酸味とも響きあって、皮体験を充実させる。

キャラメルノア(150円)
糸を引きそうなほどねっちりなのは、パンオレ生地の中にキャラメルが練り込まれるからだ。
パン生地のミルクはキャラメルと呼び合って、ミルクキャラメル状態になる。
それは、ねっちり食感と相まってやさしい甘さを表現する。
底面には焦げたキャラメルが敷かれて、この甘さはより華やかで、パン生地のミルクと淡いコントラストを描く。
クルミの甘さにも追撃されながら、やがて生地はねっとりからねとねとへと変わって、よりおだやかに舌に滲みこむ。

この店のコンセプトを、
「パンを中心としたライフスタイルの提案」とシェフは説明する。

「このスープにはこういったパンが合うとか、お酒にはこういうパンが合うとか。
たとえば、セロリとカマンベールのようなしょっぱい系のリュスティックにはビールが合います」

スパイシーカレーパン(230円)
辛さを予期しながら齧りつくと、ブリオッシュの甘さが広がる不意打ちがあって、一瞬のちに黒カレーがぐいぐい押してくる。
舌先の熱さにはじまってじわじわと延焼する辛さはくしゃみがでそうなほど鼻腔を刺激し、喉から食道をひりひりと通り抜け、胃に収まっては体中の血管をどきどきと脈打たせる。
予想を超えた強烈さで後頭部にまで押し寄せて、さわやかな辛さによって、脳天をホワイトアウトさせるので、リセットボタンを押したみたいに、食後は爽快な気分になる。
繰り返すが、辛いのではなく、頭の中を、喉を、風邪が吹き抜けるように、涼しく、爽快なのである。
これがカレーの効能だったか。
こんな気分をインド料理店ではなく、パンで味わうのは希有。

カレーパンでさえも。
町場のレトロなパンではなく、パン・オ・キュリーに変貌している。

「見た目がすごく重要。
見た目でおいしそうじゃないと買っていただけない。
それから、おいしく作ろうと思うこと大事。
いつも、おいしくしようと思いながら作っていたい」

内と外、外見と中身、表層と本質。
かっこいいパンに、かっこいい味は宿る。


東京メトロ半蔵門線 半蔵門駅/東京メトロ有楽町線・JR中央線・都営地下鉄新宿線 市ヶ谷駅/東京メトロ 半蔵門線・東西線・都営地下鉄新宿線 九段下駅
03-3230-8484
8:00〜18:30
日祝休み

#135

パンラボ単行本発売しました。


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#135
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