パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
プルクル(代々木)
140軒目(東京の200軒を巡る冒険)

ある日、藤沢市にあるプルクワに、ミュージシャン小林武史氏が訪ねてきた。
彼が構想した空間、代々木ビレッジに出店しないかというオファーを携えて。
プルクワと、小林武史氏のプロジェクトkurkkuはコラボし、プルクルというパン屋ができあがった。
シェフは藤田麻衣さん。
オーナーシェフの神田淳さんのもとプルクワで3年にわたってパンを焼いてきた。

「プルクワは、できるだけ体にやさしい材料で、製法にもこだわりをもって作っています。
天然酵母と少量のイーストを使って低温長時間発酵させて味をしっかり出しています。
プルクルでも新しいものを取り入れていますが、プルクワの元の部分はぶれないように心がけています」

プルクワのオリジナルに、藤田さんが得意とする焼き菓子や、ほんのり甘い豆乳はちみつパンなどを加えて、プルクルはできあがった。

シナモンロール(190円)
フィンランドの元祖シナモンロール、プッラに似ている。
口にすれば、シナモンの香り、卵の香りがふんわり広がる。
やわらかくふにっとしたお菓子っぽい噛みごたえがあって、やさしい甘さがじわっと溶けて、やがて出会うアーモンドクリームと交錯してコクを加え、ひりひりと強まりながら舌に滲み入ってくる快さで、心は虚ろになる。
アーモンドクリームが生地からはみだしたところは、かりかりしゅわっと溶ける。

「プルクワの神田シェフは新しいものを取り入れていく方です。
おいしいものならなんでも取り入れる柔軟さがあり、商品はバラエティー豊か」

プルクワ=プルクルの新しさ、石窯オーブン。
フランスパンやデニッシュなどきっちり仕上げたいパンには普通の電気オーブン、フォカッチャやパニーニなどイタリア系のパンや、もちっとさせたいベーグルには石窯オーブン、と使い分ける。
石窯に入れたパンは、点々とついた焦げ目で、すぐそれとわかる。
プルクルの焦げは苦くない。
さわやかに香ばしい。

「石窯オーブンだと、普通のオーブンとはできあがりはまったくちがいます。
石窯だと高温なので、焦げた部分も焼きすぎじゃなくて、香ばしさだけが残って苦くない。
一瞬で焼き上がるので、水分が閉じこめられる。
まわりをぱりっとさせて、中をもちもちにします」

石窯ホットドッグ(330円)
豊かに肉汁あふれるソーセージが、ロースト感によってさらに味わいを深くしている。
焦げた部分が生地に滲みこんだオリーブオイルの風味と直結して、甘さとして感じられる。
この感覚は石窯で焼くピッツァ=フォカッチャ系パンならではの至福だと思った。
ザワークラウトの酸味、ソーセージ、パンの三位一体。
具材の味わいが、小麦味のふくよかさと出会ってやわらかくなり、また具材の味わいゆえにより小麦味を甘く感じるという、幸福な関係が結ばれている。

自家製酵母を使用している店だが間口は広い。
酵母ならではの味わいのふくらみがあって、しかも食感に硬さや尖りがなく、口溶けもスムーズ。
あらゆるパンにやさしさがある。

「天然酵母だけだと酸味が強くなるので、イーストもちょっとだけ入れて、両方のいいところを引き出しています。
天然酵母は硬くなりがちなので、そこを食べやすくするのがイーストだと。
ハード系だと、手が出にくいものもありますよね。
日本人にはむずかしい。
毎日の食事に合うもの。
地元の方によろこんでいただけるような、毎日食べられるものを心がけています」

パニーニ(350円)
手に取るとあたたかかった。
それはなんと幸福なことだろう。
それはパンの表面をさくさくにし、チーズをとろかし、生地をやわらかに、風味をより軽やかに広がらせ、小麦味をふくらませる。
炎の香りは石窯ならではのもの。
トマトの甘酸っぱさ、生ハム、バジルの香りは、生地をふにゃふにゃにしてしまうほど豊潤な果汁と肉汁を通じてパンに移りこんでいる。
これでなくてはならない、という厳密なマリアージュではなく、ゆるやかだけれど、すべては共振している。
素朴ゆえの幸福感。

プルクルで買ったパンのほとんどがほのあたたかかった。
驚異的な焼きたて率は、たゆまぬ心配りによるものだ。

「奥さん(神田晴美さん)が、接客に関してもすごく勉強になりました。
地元の方との交流がすごくあって、接し方がすごくよくて。
その姿を見て、プルクワに入りました。
明るくて、心配りをすごくしている。
たとえば、なるべく焼きたてをお出しすること。
前の回の分を下げて、新しいものを出したり。
すぐ食べるお客さまには、『あたため直しますか?』とお尋ねしたり。
焼きたてにこだわっています。
あるいは、どなたかへのおみやげにする方には、『お包みしましょうか?』と声をかけたり。
お客さまひとりひとりに対して尽くす。
忙しいからといって手を抜かずに、ひとりひとりに対してじっくり接客する」

プルクルを出たあと気づいた。
東京というぎすぎすした都市にあって、この店の中だけが、ゆるく、ふわふわしていたことに。
パンがやさしい。
女性スタッフばかりのせいもあって、人がやさしい。
代々木に出現したこの新しい空間に与えられたビレッジという名に、プルクルはふさわしいのだった。


JR山手線 代々木駅
03-6300-5390
8:00〜20:00

#140

パンラボ単行本発売しました。


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#140
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まさかあのような場所にこのような施設があるとは!

代々木ゼミナールの裏にあのような施設があるとは!?

ぜんぜん気づかなかった!

けっこう代々木は利用するのですよ。
JRと都営線の乗り換えで。

で、時間があると駅前のタリーズやスタバで時間を潰す。

いやはや。


こんどはプルクルでシナモンロールとしゃれこもう。

from. かしわで | 2012/03/22 16:09 |
かしわで様
ぜひいってください。
テラス席あるのでそこでパン食べられます。
ほっかほかです。
from. 池田浩明 | 2012/03/22 19:32 |
クロワッサンがサクサクで食べ応えもありいいですよ!ハードなパンも味わい深く大好きです!
少し高いけど、満足感は抜群☆
from. めぐ | 2012/10/13 10:54 |
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