パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
ブーランジェリー クー(船橋日大前)
177軒目(東京の200軒を巡る冒険)

船橋日大前という駅で降りた。
新しい駅から伸びる、広くまっすぐな道と、新しい町。
だだっ広い土地に、新しい建物が立ち並んだその1軒が、ブーランジェリー クーだった。
船橋日大前の人にとって、この店は誇りだろう。
文字通り、「queue(クー)」=「行列」のできるパン屋のある町に住んでいるのだから。

渋いドアひとつあって、窓からパンは見えない。
一歩中に入ると、小さい店に焼き立てのパンが詰め込まれている。
客たちは狭い通路を譲り合いながら買い物する。
だが、パンに囲まれることの高揚感で、その手間さえ厭わなくなる。
この感じをどこかで味わったことがある。
中島さん夫妻はZopfで知り合い、職場結婚し、3年前に独立してクーを開いたのだった。

中島直人さん「独立のタイミングは、奥さんと知り合ったということも大きかったですね。
どんな店にしようとか、Zopfにいる頃はそこまで話し合ってはいなかったんですが、共通意識として、こんな感じというのはありました」

知美夫人「パンに囲まれていたいというのはあります」

中島「Zopfに入った瞬間、『わーっ』て思う、その感じは出したかった。

夫人「だから窓を作らなかったんです」

中島「店がちっちゃいのは意識してそうしました。
店に置ける量があまり多いと、すべて焼きたてで出せないですから」

夫人「Zopfでは、パンのおいしそうに見える並べ方も勉強になりました。
平台をうまく使う方法だったり」

知美さんもパン職人だが、売り場ではとても明るく接客し、常連さんと話をする。

夫人「気持ちよく買物して帰ってほしいので、お客さんの名前や食パンのスライスの好みとか覚えて、お客さんにもよろこんでいただける。
パートさんも、私よりもっとよく覚えてくれています」

中島「Zopfというのはブランドなんだから、恥ずかしくないパンを出しなさいと徹底している。
販売の人も、ちゃんとパンを並べたいというこだわりがある。
そういう意識の高さは勉強になりました。
店を出ても、Zopfの名前を汚さないものを出さなきゃいけないなと。
そのプレッシャーはいまでもあります」

Zopfで学んだいちばんのこととは?
答えとして挙がったのは、「やりきる」という言葉である。

中島「やりきるってことですよね。
どれだけお客さんがきても、最後まで焼きたてを出そうとする。
種類もすごく多いし。
お客さんにいかによろこんでもらうかを、スタッフみんなが考えてる。
よろこんでほしいから、作りきるし、最後に来た人まで焼きたてを食べてほしいと思う。
店長とりえさんの考えを、みんなが理解してやっている。
うちの店でも、お客さんによろこんでもらいたいと思います」

お客さんのためだから、やりきる。
手間はかかっても、たくさんの種類を、焼き立てで作りきる。
なんとかして、お客さんをよろこばせたいという気合いが、パンからびんびんに伝わってくる。

クリームパン(140円)
クリームを食べるのではなく、ごくごく飲む感覚。
底が抜けそうなほど大量にクリームが詰め込まれている。
口溶けのよさも手伝って、パン生地の存在感は希薄。
無論、それは歓迎すべき事態である。
口一杯にクリームを頬張り、ぐいぐい飲み干し、喉で甘さを感じる。
百数十円で味わえる贅沢三昧。

中島「具材の量は多いかもしれないですね。
妻の好みもあるんですが。
満足してもらいたい。
サンドイッチも、焼き込みも、具はすごい量。
それはうちの店の特徴です。
単純なんですが、量を多くすれば、よろこんでもらえるじゃないですか。
クリームパンは、生地が45グラムに対して、クリームが75グラム」

厨房を訪ねたとき、ちょうどクリームパンの仕込みをしているところだった。
あふれそうなカスタードを生地で包む。
作業台に並んだたくさんの個数が、人気ぶりを証明していた。

中島「うちの店の味は強いと思います。
僕らの嗜好、強め。
基本的に僕らの考え方は、いかによろこんでもらえるかですね」

夫人「いつか、なかなかむずかしいと思いますが、Zopfよりおいしいパンを作りたいな。
うちも同じ土俵までいきたい。
あとは自分たちの独自の色を出したいな。
Zopfで勉強してるから、似たようなパンになっちゃうんですけど、自分たちらしいパンが焼けたらいいな」

厚切りベーコンと冬野菜のビネグレットサンド(季節限定)
具の響宴。
チャバタにはさまれた、分厚いベーコン、クレソン。
レンコン、パプリカ、カボチャ、玉ねぎとドレッシングでマリネされた野菜もこれでもかと大量に。
しかもタプナードからオリーブとアンチョビの風味がどっとあふれてくる。

夫人「契約農家さんが湧き水で作ったクレソンを使っています。
野菜は、近くの道の駅で、地元産のものを売ってるので、そこまで買いにいっています」

パンからこぼれおち、手のひらに余り、口に入らないのではないかと思うサンドイッチを頬張るよろこび。
強めの具材の味を、多めの野菜でバランスし、しかも新鮮ならば、おいしいことは必定である。

中島夫妻はそれでも足りず、もっともっとよろこばせたいと思っているようだ。
「サンドイッチにはすごく満足しました」
と、私が言うと、夫妻の声は期せずして揃った。
「満足してくれてるのかな?」
2人は同じ思いを抱き、同じ目標を見据えて、いっしょにパンを作っている。


ブーランジェリー クー
東葉高速線 船橋日大前駅
047-497-8340
千葉県船橋市坪井東2−14−27
7:00〜18:00 (7・8月は6:00〜15:00)
(売り切れ終了)
火曜水曜休み(月に1度臨時休業日あり)




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