パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
パンデュースがプロデュース! キャニス・ミノール開店
大阪の雄パンデュースの米山雅彦シェフが、ついに関東進出を果たした。
米山プロデュースの新店、キャニスミノール。
場所は新興住宅地、千葉・新鎌ケ谷。
駅前にそびえ立つ豪壮なビルディングの1階にあり、木と石という自然素材を使った内装にも、コンセプトは表現されている。
すべてがナチュラル。

たとえば、パンデュースではすべてのパンに国産小麦を使用する。
「外国の小麦はポストハーベスト(輸送時に船中で散布される農薬)の問題があり、全粒粉の場合、残留農薬が皮についたままになる。
焼けば飛ぶのかもしれませんし、安全安心を謳う気持ちもないが、普通にすっと食べることができない。
身内に食べさすなら、農薬かかってたらいややな、と思ってしまう。
国産が広まるべきやと思う。
人として、作り手の顔が見えるほうがいいですよね」

スペシャリテである野菜を使ったパンには、農家から直送された素材が使われる。
「その季節に採れるものを農家さんがいろいろ送ってきてくれます。
それがうちの店の旬になる。
野菜がなくなったらその商品は終わり。
商品は(送ってもらった野菜から発想して)受け身で作っています」

キャニスミノールでも農家とつながっていく姿勢は変わらない。
「千葉の近隣の野菜を使って、パンを作ろうと思っています。
まだ1軒の農家さんしか取引ルートができてないのですが、今後は広げていきたい」

食べてもらう人の身体を思い、作物を作ってくれる生産者のことを思い。
パンデュースのパンは、さまざまな人の顔を家族のように思い浮かべながら作られる。

ほうれん草と黒ごまチーズのフォカッチャ(180円)
玄米茶のようなすがすがしい香りを、このほうれん草は持っていた。
ふりかけられたチーズは香ばしく。
トータルとしての味わいもやさしい。
チーズのコクを頂点にして味わいはやわらかさい甘さの方へ流れていく。
ナチュラルなものの後口よさ。
生地を切ったままのラフな形もこのパンの特徴。
つまり生地を成形によって締めつけていない。
それは食感にも大きく影響を与えているはずだ。
表面はさっくりと。
一方で中身はソフトに、にゅっと歯切れる。
生地は噛まずともほどけ、たっぷりの水分がしんなりした口溶けを演出する。

紅芯大根とミニョレット(240円)
大根のうつくしい赤、さっくりとした歯ごたえが、心を躍らせる。
大根のわずかな酸味であり、苦み。
ざくっと音を立てて割れると、慈味深い野菜の汁が口の中にあふれかえる。
全粒粉入りの生地は、香ばしさとナチュラルな甘さを表現する。
チーズがえぐみをやわらげ、カブの個性を活かす。
ベシャメルソースのおだやかなミルキーさや甘さと、カブの透明なエキスが相性のよさを見せる。

千葉という新たな土地で、どんなパン作りを目指すのか。
「ここらへんは郊外型の大きなパン屋さんが多い土地柄。
駅前で手作りのパン、どれだけ受け入れられるんかな、と思っています。
いまこの辺りで売れてるパンをやっても意味がない。
うちは国産小麦でやってるから、食パンも食べたことのないような香りがするはずです。
それを感じられるお客さんもいるでしょうし、あんぱん、クリームパンが単純においしいねっていう人もいるでしょうし。
手作りのおいしいパン、国産小麦のパンを売っていきたい。
パンデュースがおいしいというパンを。
大阪駅構内にデトゥット・パンデュースという店舗があって、駅のニーズはつかんでいます。
こだわったパンを求める層から、通勤途中に買って日常で楽しむ層まで。
100円の食パンをスーパーで買ってる方を取り込めたら」

関東だから、住宅地だからといって、妥協はない。
パンデュースのやってきた100%が展開される。
「うちらしいことやってどこまで受け入れられるか。
郊外店の成り立っている土地柄で、実験するのおもしろいかな。
厨房が大きいんで、生産能力があります。
ここを販売拠点にして、カフェを併設した支店に卸したり。
店舗展開を秘めた土地。
この駅は地方のターミナルで、乗り換えのお客さんが行き交っていますし、郊外型の大きい店が多くて、こじんまりした店が逆に少ない。
おもしろい商圏やなと思っています」

フルリル(150円)
フランボワーズの爽快な酸味で幕を開ける。
アーモンドクリームの表面に出たところはかりかり、パンの中にあってはしっとりさを演出する。
焦げるか焦げないかのきわきわの焼き加減が生むアーモンドクリームの甘さ。
それはフランボワーズとの鋭い対照によってさらに心地よいものとなる。
表面のかりかりの歯触りとともに、ぽろぽろっと崩れるこの食感も、その甘さと感覚的に響き合うものだ。

「ルセットに意思がある」
米山さんが厨房でスタッフに諭していた言葉である。
レシピに込められた米山さんの意思を再現するのは熊田和弘さん。
メゾン・カイザーやゴントラン・シェリエで経験を積んだ逸材をシェフに迎えた。

同じビルの2階に本格的フレンチレストラン「キャニス・マヨール」、ライブハウス「エムティー・ミリーズ」を備える。
「大人が聴いて楽しめるものを」とオーナーの小川桃伴実さんは言う。
ライブハウスであってもきちんとした料理を出したいと、著名料理人にフレンチレストランのプロデュースを依頼した。

写真は、エムティー・ミリーズでの豪華絢爛なオープニングパーティの様子。

米山さんは、パーティのあとも、熱っぽく語りつづけていた。
低温殺菌ではない普通の牛乳には焦げたような香りがあり、それが牛乳嫌いを作り出していること。
添加物を食べられない子供の感覚の鋭さと、大人はそれに比べたら「舌がけがれていってる」のだと。
米山さんはナチュラルなものだけを使ってパンを作る。
どれだけ手間ひまがかかっても、いつも素材の作り手と、食べる人の体を思いやる。
このパンが関東のパン屋に与える影響は少なくないはずだ。(池田浩明)

047-401-6601
7:30〜20:00
火曜休み
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