パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
希望のりんご、春の旅
陸前高田を支援する「希望のりんご」の活動を、雑誌「ecocolo」(5月29日発売)さんで取り上げていただくことになりました。
取材旅行の報告です。

養蜂家と出会う
陸前高田に養蜂家がいます。
後藤文博さんという方で、純度100%のはちみつを作っています。
気仙川のほとりに自宅はあり、津波が堤防からあふれましたが、2つ目の堤防でなんとか難を逃れたそうです。

「希望のりんご」とも実はつながりがあります。
毎年5月、陸前高田米崎町のりんご畑に蜂を放し、はちみつを取っています。
りんごと蜜蜂は切っても切れない関係にあります。
花が咲いても受粉をしなければりんごは成りません。
そのため、りんご農家は養蜂家を呼んで蜂を放ってもらい、そのとき蜂たちが巣に持って帰った蜜はおいしいはちみつとなるというわけです。
共存共栄、なんという自然の循環でしょうか。

養蜂家とは手間を惜しまなければ勤まらない仕事だと後藤さんはいいます。
毎日見回り、ひとつひとつ巣箱を開け、不具合がないか点検を行う。
熊に襲われたり、寒さによって蜂が死んでしまえば、大きな損害となります。
ここ10数年は農薬の被害がこれに加わることとなりました。
新たな農薬の出現によって、蜂が大量死するようになったというのです。
「蜂が死んでしまうのだもの、人間に害がないわけがない」
蜂という小さな生き物と向き合う、養蜂家という職業は、こうした人間の目に見えない危険をいち早く知り、伝えるために存在しているのではないか、とも私は思いました。

りんごのはちみつをパンにつけていただきました。
蜜りんごのさわやかな甘さ。
それだけではありません。
鼻腔をすーすーと刺激する花粉の香りが普通のはちみつ以上に濃厚にあって、まるでお花畑にいるようなのです。
バターとの組み合わせでさらにおいしく変身しました。

まっとうに、おいしいものを作る人を応援したい。
「希望のりんご」でも後藤さんの作る「りんごのはちみつ」を販売する計画を進めています。

りんごの木を育てる
「希望のりんご」を作る人、金野秀一さんにお会いしました。
東京ではもう散ってしまった桜を、金野さんの畑で見ることができました(4月16日)。
りんごの木の下には野花がたくさん。
除草剤をなるべく使わないから、この風景を見ることができるのです。

金野さんがつぼみを開いて見せてくれました。
その中には小さな花びらが隠れていました。
冬の間にも春は着々と準備されているのです。
りんごの花が咲くのは5月10日頃だと言います。
白い花が一斉に山を彩る景色を見に、また陸前高田に行こうと思っています。

うれしいニュース。
「希望のりんご」で「オーナー制度」を計画しています。
パン屋さん・お菓子屋さんに、りんごの木のオーナーになっていただき、芽の段階から成長を見守っていただき、5年後の収穫からは、お店で自らのりんごを使ったパンやお菓子を売っていただこうという計画です。
各店の方には、陸前高田にきて、植樹や収穫にぜひご参加いただき、帰ってからはその思いを売り場でお客さんと共有していただきたいと思っています。
被災地のことを忘れず、長いスパンでおつきあいしていきたいという思いもそこには込められています。

金野さんは私たちの思いに応え、いま苗木を育ててくれています。
まず地面に差し木をして根を生やして土台を作り、さらに育てたい苗をそこに継ぎます。
いま作っている苗は紅玉。
お菓子やパンなど加工に向いたりんごです。
従来、希望のりんごには紅玉がありませんでした。
いままでご協力いただいた、有名なパティシエの声を活かし、この品種を選びました。
収穫まで長い時間がかかりますが、ここでも折に触れ成長ぶりをご報告する予定です。
見守ってください。

アップルガールズ
アップルガールズとは、菊池清子さんを中心に、米崎町のお母さんたちによって結成された、町を元気にするためのグループです。
「希望のりんご」の活動をいつもバックアップしていただいています。

『ecocolo』編集部さんの希望で、アップルガールズがりんごを使った料理を披露することに。
案内された場所は、津波が襲ってから未利用になっている空き地でした。
道なき道を海のほうへ降りていくと、小屋があり、そこにアップルガールズのみなさんが持ち寄った、心尽くしの料理が並んでいました。

ホットケーキのようなものは、小麦餅。
小麦粉とタマゴをベーキングパウダーで膨らませ、中にりんごを入れたものです。
金野さんの奥さん眞喜子さんが作ってくれました。
「子供の頃、畑で働いている親に持ってった。
『タバコだよー』って」
10時と3時に一服することを「タバコ」と呼び習わすそうです。
中には玉砂糖を入れるのがポイント。
ときどき塊が口に入ると「やったー」とよろこぶのだと。
それから、りんごのコンポートはレンジでチンするだけで簡単においしくできあがります。

佐々木順子さんには、とれたてのホヤも持ってきていただきました。
しょうゆもご用意いただきましたが、海で洗っただけのものがいちばんおいしいといいます。
その通り、磯の香りとじわっとやってくるコク、さわやかな苦み。
米崎町の人はなんておいしいものを食べているのでしょう。

この敷地にはかって伊藤由美子さんのお宅がありました。
ボランティアできた宮大工の人がこの小屋を建て、また別のボランティアの人がひまわりを植え、野菜の種を蒔き。
伊藤さんがそれを育て、またボランティアの人たちがくれば、とれたてを振る舞っていたそうです。
その後こなくなったので、伊藤さんが引き継いで、面倒を見ているとのこと。
700本ものチューリップを植え、ちょっとした庭園という趣きです。
「草ぼーぼーになるのはいやだ。
花が好きだから、こういうの夢だった」

見渡す海岸は荒れ果て、なにもないまま。
防波堤の工事が淡々と進んでいます。
ここで8人もの方がお亡くなりになったとのこと。
伊藤さんのお兄さんもいまだ帰らず、遺体も見つかっていません。
「こんなふうに花を植えて、きれいにしてれば、兄さん、帰ってこれるかな。
目印に鯉のぼりもあげてるし」

こんなに悲しいことがあったのに、アップルガールズはとても明るいのです。
プロのカメラマンにまるでアイドルみたいに写真を撮られて、楽しそうにはしゃいでいました。
「こんなババア撮ったら、カメラ壊れてしまう(笑)」
「どこにガールズがいるんだって、雑誌を読んだ人が探してしまうよ(笑)」
明るく前向きにいることで、お互いに励ましあい、元気を与えあう。
そうすることで、3.11という共通の苦難を乗り越える。
アップルガールズとはそういう活動なのです。
私はまた陸前高田で大事なことを教わりました。(池田浩明)


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希望のりんごジュース「点 TOMORU」、KEEP CALM AND EAT BREAD Tシャツを代官山蔦屋書店のパンフェア、パンコレ(東急ハンズ池袋店5月19日〜25日)で発売しております。すべての売り上げは希望のりんごによる復興支援活動に使われます。
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