パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
「小麦ヌーヴォー解禁祭りin東京」出品FILE10 パンストック
最先端のパンをユーザーフレンドリーなものへ落とし込む、未来志向の行列店。
福岡の雄パンストックが、「とかち小麦ヌーヴォー解禁祭りin東京」に満を持してパンを送り込む。

ヌーヴォー小麦は夏にとれたばかりの小麦を挽いたばかりのもの。
酸化によって失われることなく、繊細な部分まで残されたその風味は、平山哲生さんを揺さぶった。

「このキタノカオリはなんともいえない甘さがある。
かなりテンション上がりました。
キタノカオリT85、スムレラ、ゆめきらり、どれもきれいに上がりますし。
新麦っていままでマイナスのイメージ。
小麦は寝かせて使うものだと思ってました。
新麦だから、酸味が強かったりするんですけど、粉が甘いので、それもおいしさにつながる。
おいしさの懷が広かった感じです。
いろんな角度からのおいしさがあるんだってわかりました」

酸味、苦み、青さ。
新鮮な野菜ではそれらもまたおいしく感じられるのに、パンの世界ではそうしたファクターを負として排除してきた。
味わいや香りのエッジは心をえぐり、強烈な印象を与えるはずなのだ。

平山さんの小麦ヌーヴォーにかける意欲は並々ならぬものだ。
「ずっと試作して、冷蔵したり、吸水多くしたり、いろんなセッティングで試してみました。
結局シンプルに、2種類にしました」

・ルヴァン
・栗とナッツのパン

ヌーヴォー小麦から平山さんがふくらませたイメージは、中世の農村で作られていたような、自家製発酵種のパンだった。

「いろいろやって、やって、やったあと、普通の作り方に行き着きました。
ルヴァン(東京・代々木八幡にある日本で最初の自家製発酵種専門店)のような、真っ向勝負でいこうかな。
昔ながらの、ポワラーヌ(カンパーニュが名高いパリの名店)みたいなパン。
気泡ぼこぼこ空いてないけど、でも小麦の味がしておいしい。
吸水を上げたりしないで、原型的なものを作りたい。
逆にそっちのほうがおいしいんじゃないかな。
アンダーミキシング(標準的なこね方よりちょっと足りないぐらい)で粉の味わいを残したのは手ごねのイメージです。
昔はミキサーがなかったので、吸水を多くすることもできなかったはずですし。
でも、生地を置いとけばグルテンはつながる。
じわじわゆっくりと発酵させる。
小細工が入ってない小麦ですからね。
昔はエイジングもしないですぐ使ってたと思うんで」

福岡からパンを送るというハンデ。
それでも新麦の香りを感じさせたいと心を配る。

「焦げるぎりぎりまで焼いて、ぎゅっと締める。
窯伸びさせすぎないイメージ。
ナッツもグルテンを阻害してくれるので詰まった生地になる。
焼き固めると日持ちするんですよね。
しっかりと焼きこむと水が抜けにくいんですよ」

技でおいしさをキープさせる。
1週間もかけてパンを食べていたような中世の食文化を、最先端のテクノロジ−で再構築する。
それが「パンストック」(パンをストックする)のもともとのコンセプトでもある。
その通り、今春行われたパンコレというイベントでも、ルヴァン生地は際立ったクオリティを見せていた。

新しいテクノロジーやセオリーを覗き見、切り開く瞬間のぞくぞくするような快感。
それが、平山さんを飽くなきパンの探求に突き動かす。
小麦ヌーヴォーはそのトリガーになった。

「おいしさを見つける旅に出る。
いつもよく知っている町をうろうろしているんだけど、知らないところに行って、あっちに行ったらなにがある、こっちに行ったらなにがあるって、冒険してるような。
小麦のおいしさっていろいろあるんだな。
すごく勉強になりました」

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