パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
ブレッド&バターファクトリー(二子玉川)【2014年オープンの新店3】
待ちに待ったコンセプト。
パンとバターという切っても切れないコンビを商品ラインナップの中心に据える新店が二子玉川に出現した。
さっぱりと整理された街区に整然と立ち並ぶハイセンスな再開発ビル群RISEを抜けたところ。
黒い外観、白を基調とした内観。

整体師から転じて、30で武蔵小杉のラ・セゾン・デ・パンでキャリアをはじめた永田希介さんがシェフを務める。

入口近くの冷蔵ケースに並べられたバター。
いまや高級バターの代名詞ともいえる「エシレ」をはじめ、フランスのバター「イズニーAOP」、「セーブルAOC」など。
海藻バターで名高い「ボルディエ」も、「ゆず」や「燻製塩」などあまり知られぬバリエーションまで並ぶ。
日本からは「町村バター」「トラピストバター」など北海道産のもの。
すべてを入れると、その品揃えは約30に及ぶ。

「世界各地からめずらしいバター、おもしろいバターを集めています。
パリで食べておいしくて、日本に帰ってきてから探したけどどこにもなかったものを、やっとここで見つけたという方もいます。
このパンにはこのバターが合うという提案もできる。
バターも個性があって、個性が強いものは、個性が強いパンに合う。
全粒粉のバゲットには、海外産の癖のあるバターが合う。
食パンには、国産などのあっさりしたバターがいい」

バターといえばクロワッサン。
クロワッサンはこの店の代名詞となっている商品である。

「土日は、昼頃に出すとすぐなくなります。
バターはよつ葉バターを使っています。
今後は、コストは高いですが、海外産でクロワッサンを作ることも計画しています。
イズニーでクロワッサンを作るとすごくうまいので、いつかやってみたいと思っています。
でも、食べやすいのはよつ葉ですね。
慣れ親しんでいる感じがあります。
日本人にはこのクロワッサンが合うんですよね」

バターの香りは生々しくて鮮やか、でありながらやさしい。
ぱりぱり割れる外皮を噛み破り、くにゃっとやわらかな中身にまで唾液が滴り落ちるとき、そのことはよりはっきりとする。
生々しい甘さが溶けだしてくるからだ。
もう一口齧りつき、さらにざくざくの表面がその甘さと入り混じるとき、バターは眩いほど輝やく。
バターの付着した自分の唇さえが甘い。

バター不足が報じられる昨今、クロワッサンなどの商品を減産するパン屋もあるが、この店ではそんな苦労はないのだろうか。
「バターをコンパウンド(マーガリンとバターを混ぜたもの)にするぐらいなら、この店をやめたほうがいい。
問屋さんに無理をいって調達してもらってます」

クロワッサンと並び、バターといえば思いだすパンはブリオッシュ。
キューブ型に作って、菓子パン系、惣菜パン系ともに展開している。

「パンはバターをイメージしてスクエアにしています。
甘めなんですけど、見た目もちっとして、売れ筋です」

cubeカレー
チーズの溶岩流。
カレーパンのチーズがこんなにとろけたところを見たことがない。
安らかで高らかなカレーの風味をバターみたいに甘いチーズがますますマイルドにする。
ごろごろ入ったひよこ豆は噛めばねっとりと旨味を口の中にすりつける。
コーンのつぶつぶからも甘い汁が出て、ブリオッシュのバターに追い打ちをかけて、このカレーパンに甘さを重ねていく。
生地は表面がかりかり、中は湿ってしゅっと溶ける。

ショコラクランベリー
生地にココア、クリームにチョコのダブル攻撃。
バターじゅわーな生地。
それが混ぜ込まれたヴァローナのココアの香り高さを信じられないほど加速させる。
意識をすべて奪い去っていくほどのチョコクリームの濃厚さ。
ときどき噛むクランベリーの酸味は、喉にひりひりするほどの甘さを引き締めつつ、チョコレートの中の酸味にフォーカスしてその深さを強調する。

「いちばん推しているのはチャバタです。
しっかり上げて(上に伸ばして高さを出して)、リュスティックに近い感じにしています。
まわりがぱりっとした薄皮で、中は軽いので、大きくても食べれてしまう。
チャバタの魅力ってこういうもんじゃないのかな。
サンドをチャバタで作って出しとくと、これ食べておいしいなと思ってくれた方が、チャバタを買ってくれて、固定客になっていただいている」

軽くむしゃむしゃ食べることの心地よさ。
薄い皮も、大きな気泡によってエアリーに感じられ、気泡の膜はしゅわんと瞬間的に溶けることで、軽い食感と軽快な溶け味を楽しめる。
そしてそこからすがすがしいオリーブオイルの風味が豊かにとろけだしてくる。
かつ歯切れよく。
永田シェフがいう通り、これはかってどこかで食べたことがある気がして、と同時に他店にはなかなかないものとして一歩先んじている、新しいチャバタなのである。

ポテト
チャバタ生地にじゃがいもとコーン、ベーコン、黒胡椒を練りこんだパン。
恐るべきやわらかさ。
ぽわんぽわんぱふぱふ。
弾む、そしてまったりまとわり、ねっちりと溶けていく。
じゅわーっとうるおいに満ちた生地が溶け、と同時にじゃがいもを、ベーコンを、小麦の甘さを滲みわたらせる。

母体はエイ出版フード事業部。
アメカジの雑誌『Ligntning』で知られる出版社。
同社の経営として知られる飲食店に「用賀倶楽部」があり、かってその一角でパンの製造・販売を行っていたことが、ブレッド&バター ファクトリーの前身である。
「バゲットや天然酵母パンなど、用賀倶楽部時代にあったものは基本的に変えていません」

牛のイラストがかわいい包装紙が目についた。
「なにしろエイ出版なので、頼めばいつのまにかかわいいのが出てくるんですよね。
こういうひとつひとつのちっちゃいアイデアがお店を作るんですよね。
おもしろいものがいっぱいあります」

入口で出迎えられた古い木で作られた牛のオブジェや、バターケースにショップカードを入れておくアイデア、アンティークの大きなブリキ文字(ティン・ビッグレター)で「B」「&」「B」と見つけて置いてみるアイデアも気が利いている。

「エイ出版には『カリフォルニア工務店』(アメリカンなデザインを得意とする設計事務所)という部署があって。
いちばん最初に訊いたのは白を基調としながら、そこにやわらかさも求めていこうというインテリアの方針でしたね」

言われてみればたしかにそうだ。
この店のインテリアを見れば見るほど、かって『Ligntning』で見たあの感じがオーバーラップしてくるのだ。(池田浩明)

ブレッド&バターファクトリー
東急田園都市線・大井町線 二子玉川駅
03-3700-3301
7:00〜19:00


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