パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
被災地に女性たちが作るパン屋

被災地・南三陸町。

女性たちが自分自身の手でパン屋を作ろうとしている。
特定非営利活動法人ウィメンズアイによる、「パン・菓子工房oui(ウィ)」


震災以来、買い物に困るようになったこの地域で、焼きたてのパン屋は待ち望まれている。
それは女性たちが活き活きと働く場所を作り、コミュニティを作り、地元の食材を使って地産地消を行うハブとして役割も担うだろう。

 

2016年3月、石巻のパン工房ficelleでは、高橋清美さんを囲んでわきあいあいとパン作りに励んでいた。
ウィメンズアイが主催するパン教室「ここむぎ」。
津波によってコミュニティが失われた南三陸で、女性たちが絆を取り戻すことを後押しする活動の一環だ。

 

「大丈夫? みんなだけでパンを作らないといけないんだからね!」
ベーカリーカフェをひとりで切り盛りする高橋清美さんは、その大変さを痛いほどわかっていて、自分のことのように心配している。

 

地元の無農薬栽培の野菜と国産小麦、自家培養の種でパンを作っているficelle。
パンとコーヒーでほっと一息つける場、おしゃべりの場となって人と人をつなぎ、地産地消によって地元の生産者と消費者をつないで、被災地に灯りを点している。

OUIがお手本にする存在だ。

 

教室のあと、ウィメンズアイの栗林美知子さんを中心にみんなでパン屋のイメージを話し合った。
地域の人たちや農家さんが、農産物を加工したり、パンやお菓子を作って、販売できる施設にしたい。
地元でできるおいしい野菜や魚介類を使ってパンやお菓子を作りたい。
農家さんに協力してもらって無農薬の地粉を使いたい。

 

やりたいことはいっぱいあるが、ここむぎメンバーはみな本業を持っていて、集まれるのは週に1回か2週に1回。
年に24回しか店は開けないけれど、それをお店のコンセプトにできたら。
思いついたのが、二十四節季。
二十四の季節それぞれの食材を使ってパンを焼こう。
女性たちが、自分たちに合ったペースでパンを焼き、コミュニティを築き、地域を活性化させていく。
そんなパン屋があってもいいのではないか。

 

翌日、南三陸。
パン屋兼加工所の予定地を訪ねた。
自然栽培で小麦を作っている地元の農家・栗原洋一さんが、空いている土地を貸してくれることになったのだ。

 

そこには、地元でとれる塩竈石(しおがまいし)が積まれたままになっている。
「これを使って、薪窯を作れたらいいね」
 

南部小麦を植えているという小麦畑を見せてもらう。
3月末、東北ではやっと春の足音が聞こえてきたばかり。
小麦もまだ雑草みたいな姿をしている。

 

栗原さんに案内してもらい、小麦畑の奥へ分け入っていくと、集落を見下ろせる場所にきた。
ここには入谷八幡という鎮守様があり、秋になると入谷打囃子という秋祭りがあるという。
黄金色に稲が実った田んぼの中を、村人や子供たちが着飾った極彩色の行列が八幡に向かって練り歩いて行進していくのだという。

そのときお祝いとして伝統的に食べられてきたのが、餅御膳。
かやの実や豆や雑穀などこの里山でとれた食材をタレや具材にした色とりどりの餅。
それらぜんぶそのままおいしいパンになりそうではないか。
「ここは食材の宝庫だから、いろんなことをやろうと思えばできる!」
夢はどんどん広がっていく。

 

その夜、廃校になった学校を利用した校舎の宿「さんさん館」の研修室「南三陸ポータルセンター」で、「食の仕事勉強会」が開かれることになっていた。
私が講師となり、日本全国で地産地消の取り組みを行うパン屋を紹介するもの。

パンを食べながら聞いてもらう。
これからできることになる「ここむぎ」のパンを地元の人たちにはじめて披露するのだ。

 

気仙沼から高橋さんも応援にやってきて、みんなで丸パンを作った。
小麦は栗原さんの作ったものを使用。
ちゃんとパンができるのだろうか。
どきどきしながら焼きあがるのを待つ。

 

パンは大成功。
小麦の甘さに加えて、草っぽさというか土っぽさというか、この土地ならではのなつかしいような匂いがしていた。
おまんじゅうのようにも食べれるし、切り込みを入れればサンドにもできそうだ。
単純だからみんなで成形できて、いろいろ応用がきく。
女性たちのパン屋の形が見えてきた。

 

パンはお茶といっしょに供せられ、勉強会の参加者にも好評を博した。
協力していただいたアンケートには熱い声がたくさん寄せられていた。
カンパーニュが食べたい、牡蠣やホタテなど地元のおいしい海産物を使ってほしい…etc
パン屋への期待は高まっている。

 

そして、パン・菓子工房ouiは着工され、2月末のオープンに向けて、地元の大工さんの協力によって建設が進んでいる。

 

予算がない分、自分たちで壁を塗り、内装を行う。

 

小さな窓を開け、パンを焼きながら販売する。

「ここむぎ」が月に1、2回パンを販売するのに加え、ウィメンズアイもパンの製造販売を週2回、またあらたな登録利用者も製造販売に加わるシェア工房だ。

ついに復興される南三陸さんさん商店街内の産直市場で販売する他、小学校や役場で販売してほしいという声が舞い込んでいるという。

 

だが、依然として資金が150万円不足しており、クラウドファンディングで調達しようとしている。

CAMPFIRE「女性たちと新しい働き方をつくる 南三陸にパン・菓子の共同工房を!」
https://camp-fire.jp/projects/view/17436

2017年2月8日現在、まだ目標金額未達成で、締切りまであと10日しか残されていない。
女性たちが自立し、活き活きと働ける小さな生業を作って、被災地を活性化させる試み。
もし共感していただけるなら、ご協力をお願いします。

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