パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
新刊「パンソロジー」発売!

 

『パンソロジー』(池田浩明編・平凡社刊)とは?

パンのアンソロジー。

パンについて書かれた古今東西の書物を探しまくり、とびっきりおいしそうなもの、うつくしいもの、変なもの、驚くべきもの、なんだかわからないけれど心揺さぶれるものの「ここ」という部分をコレクションした本。

http://www.heibonsha.co.jp/book/b298033.html

 

収録された作家

椎名誠、林芙美子、川上弘美、東海林さだお、吉田篤弘、片岡義男、伊丹十三、アテナイオス、ウディ・アレン、沢村貞子、石井桃子、辺見庸………etc。

 

子供の頃、石を集めていたことがある。

道を歩いていて、きれいな石があったらポケットに入れる。

持って帰って水道でよく洗えば宝石になると信じていた。

何度洗っても宝石になることはなかったが、石を入れた箱を何度も出しては見とれたりした。

 

この世界から、うつくしいものだけを拾い集め、きれいな容れ物に入れて飾る。

ひととき見つめて、我を忘れて、普段と別の時間を生きる。

美術館、博物館、雑貨店、ギャラリー…。

届いた本をめくっていて、次々と現れる名文の数々を眺めながら心の中に浮かんできたのは、それらの場所を訪れているときに似た、なにかいい心持ちだ。

 

 

世界は広い。

「パンに脊椎があったら?」なんて空想した小説家がいる。

花をパンにはさんで食べる詩人がいる。

クロワッサンのことを「三日月パン」(クロバチンとフリガナあり)と呼んでいた戦前の女流作家。

家具もベッドも…パンで寝室を作ってしまったパン屋(しかもダリの求めに応じて)。

世界でもっとも早くエジプトで焼かれていた発酵パンについて書かれた文章の隣に、

パンに対する人々の見方や考え方は時代と地域によってまったくちがうことに、心地いい幻惑を覚えるだろう。

本ならページをめくるだけで数千年を飛び越えることができる。

 

パンの命は短い。

生まれ落ちた瞬間から刻々と変化し、数日で生命を失う。

あるいは、人に食べられた瞬間、パンにとっておそらく幸福な一生が閉じられる。

どれだけ懸命にパン職人によって作られたパンであっても、消えていくことを運命づけられている(パンより少しばかり長いとはいえ人もまた死すべく運命づけられているわけだが)。

だが、文字(やデータ)に残されれば、紙(や保存メディア)が朽ち果てない限り、世紀をはるかに超えた命を持つ。

 

そうだとしたら、Twitterやその他のメディアで日々パンについて発信しつづける私の奇妙な情熱も、パンに永遠の命を与えたいという衝動からくるのかもしれない。

でも、そんなこと少しも特別ではない。

この地球上のいつでもどこでも、自分が食べた(あるいは夢想した)パンを書き残したいと熱望し、それを行ったたくさんの人たちがいる(そのさきがけは4千年前エジプトのお墓の壁画だったことも『パンソロジー』を読むとわかる)。

彼らの書いた文字のパンが忘れ去られる前に、『パンソロジー』を通じてみなさんに手渡そう。

それは食べても食べても減らない永遠のパンだ。

 

装丁と挿絵(すべての作品に添えられている)を描いていただいたのは、foodmoodの包みなどでおなじみの中島基文さん。

それによって、私のコレクションは、とびきりかわいい容れ物に収められることとなった。

 

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