パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
キューカンバーサンド
かしわで


13年くらい前、ある女性誌で
「持てる男」みたいな特集があって、
そこであるイラストレーターが

「ささっと手際よく美味しいキューカンバーサンドを作れる男っていいよね」

と描いていました。

モテるというキーワードとキューカンバーサンド(きゅうりのサンドウイッチ)というキーワード、
その組み合わせが
当時の自分にはとにかく破格で
すぐに(記憶にないスピード)でハマったのでした。

そこには
「シンプルだけど本当に難しいサンドウイッチ」という注釈があって、
言いたいことは
「シンプルで奥の深いことをさら〜っと涼しい顔でやってのける男」
というメタファーだったのかもしれないけど
当時の自分は頑張りましたよ。

その本には
パンにバターを塗って、
きゅうりを薄くきって、
軽く塩をふって、
挟み込む。

それだけしか使ってはならぬ!

とあって
まぁ実際、まぁそれをおいしく作ることの難しさを
まぁすぐに知ることになったのでした。

でもシンプルこそディープ!
道か? これは道だな!
とも思えるタイプなので挫けずにまぁ頑張りました。

で、しばらくしてあることに気づきました。

どこで、
どのような展開で
ささっと作ればいいのだ!?
少なくともミーにはそのシチュエーションがない!
思い浮かばない!
ジョージ・クルーニー!

で、そこからキューカンバーサンド道は急速にクールダウンしていったのでした。

ただ女子とお話をするときの根多としてはけっこう役立ちました。
オチつきで話したりなんかして(ジョージ・クルーニーね)、
「バッカじゃないのぉ〜」と「ッ」入りのお言葉を頂戴したりなんかして、
ぜんぜんモテませんでしたが、また自虐的な苦しみも襲ってきましたが
刹那的には使える多根でそれはそれで役には立ちました。


そのキューカンバーサンドの熱が再び上がってきております。
その理由の1つはもちろんこの企画です。
パン・ラボに参加するようになって、
意識するようになりました。

パン屋に行き、サンドウィッチを見て、思うようになりました。
ないなぁ〜キューカンバーサンド。

それもそのはず。
ネット等で調べるとあれはイギリスの階級系の人が
夏に、ティータイム時に、つまむ、ものらしいじゃないですか。
お茶請け。正確には紅茶請け。もしくはミルクティー請け。
だからマヨネーズは厳禁(あわない)。なるほど。

そういうことを知らずにただただ「モテ」という理由だけで走っていた自分。
タハー!グローイングアップ! 毎度お騒がせします!股間、イタタタタ!

実際、ずっと思ってました。
ふつうに食べるにはマヨネーズはあっていいと。



編集Dと合羽橋を歩いていたときにもたしかキューカンバーサンドの話が出ました。
もちろん自分は前述の「多根」をまじえつつ一席ぶったわけですが
(特にリアクションなし。むしろ一番悲しいスルーリアクション。タハー!イタタタ!)
偶然にも編集Dにもキューカンバーサンドには一家言あったらしく
自分の技の話をされてしまいました。
たしかみじん切りにしてはさむみたいなことを言ってました。
もちろんマヨネーズ付きで。
やっぱマヨネーズはあっていいでしょ。
日本の空には。日本の夏の空のもとでは。日本のきゅうりで作るなら。


などと考えていた2009年初夏。


ところがです(理由の2つ目です)。

先日、伊丹十三さんのエッセイ「女たちよ!」を読んでいたら、
そこに「キューカンバー・サンドウィッチ」なる掌編コラムがあって、
そこでこのようなことを言っていたのです。

  略〜
  実にけちくさく、粗末な食べ物でありながら、妙においしいところがある。
  胡瓜のサンドウィッチというと、みなさん、胡瓜を薄く切って、マヨネーズ
  をつけてパンにはさむとお考えだろう。違うんだなぁ、これが。
  マヨネーズなんて使うのはイギリス的じゃないんだよ。
   マヨネーズじゃなくて、バターと塩、こうこなくちゃいけない。
  パンは食パン、このサンドウィッチに限り、パンがおいしい必要は少しもない。
  中略
  これにバターを塗りつけ、薄く切った胡瓜を並べ、塩を軽く振って、いま一枚の
  パンで蓋をする。これを一口で食べやすい大きさに切って出す。たったこれだけ
  のものなんだが、不思議とイギリス以外の国ではお目にかかったことがない。


伊丹十三さんといえば傑作食系映画「タンポポ」を監督脚本した人で
(自分はこの映画が相当好き。本当に好き)
実際このエッセイでも随所に食に関することを題材にしてて、
パンに関することもたびたび出てきます。
特にフランスで食べたパンのあまりの旨さを「パンによる一撃」というタイトルで
書いているくらいで基本的にパンはフランスという認識があります。
(初出が昭和43年!!今から約40年前。ちなみにタンポポは24年前)
その伊丹さんがイギリスのキューカンバーサンドの旨さを書いてるわけで
そうなると今一度、
今一度、
トライする必要ありなのか?
マヨネーズに頼らない旨いキューカンバーサンドにトライすべきなのか?

2009年晩夏です。


夏が終わるというのに最近はキューカンバーサンドのことばかり考えてます。





ぶどう


写真は9・17発売号のパン・ラボの1コマです。
今回はブドウパンです。

キューカンバーサンドにトライしようかと思いましたが断念しました。

ちなみに「女たちよ!」は新潮社文庫で発売されてます。
http://www.amazon.co.jp/%E5%A5%B3%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%82%88-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E4%BC%8A%E4%B8%B9-%E5%8D%81%E4%B8%89/dp/410116732X
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