パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
ブーランジュリー プーヴー(代々木上原)
23軒目

デニッシュのおいしい店である。
と同時に、おいしいデニッシュのような店でもある。
ちいさいポーションの中に、さまざまなものが類い稀なセンスで同居しているからだ。

店に入った瞬間、ショーケースの華やぎに目を奪われる。
東京広しといえど、こんなにうつくしい棚は2つとないと思えるほどに。

デニッシュの具材の取り合わせの妙、鋭い感覚、具材をひとつひとつ手作りする丁寧な仕事にいつも脱帽させられる。

すばらしいのは、そうした誰もが目を引く部分にだけ情熱が注ぎ込まれているわけではなく、食事パンにも誠実さがこもっていることだ。

情熱はどこからやってくるのか。
片岡達志シェフは、パンに引き込まれた理由を、どこまでいっても理解し尽くすことができない「複雑さ」ゆえだと語る。
「日々が発見です。
こねるときにかかる微妙な力加減や、水加減、ミキシングの時間のちがいによって、まったく別なものができあがる」

「オーブンからできあがったパンがでてくる瞬間はいまでも不思議な気持ちになります」
そのような、日常を驚きとして捉えられるような繊細さを、片岡シェフの作るパンのいたるところに見いだすことができる。

フランスに行っていた経験のあるシェフの店のパンにはどこか共通してフランスの味わいがあるのではないかと訊ねると、
「僕もそう思います。
意識的にしていなくてもでてしまうものなのではないでしょうか。
フランスのやり方、日本のやり方、いいところと悪いところがありますが、自分で判断していいと思うことをやっています」

そこはかとないフランスの味わいの中に息づく日本のこまやかな心配り。
プーヴーのパンとはまさにそうしたものだ。

片岡シェフがフランスで学んだこととは、パン作りに限らず、その空気の中で暮らすことすべてだったという。

「フランスと日本では、パン作りに限らず、生活スタイルがぜんぜんちがいます。
パンのあり方も、パンの文化もちがいます。
バゲットひとつとっても、僕は1日1000本もバゲットを焼いていましたが、みんなが3食パンを食べ、生活の一部になっています。
フランスではほとんどの店が対面販売ですが、行列ができているのに、お客さんと平気で世間話をしていて、誰もあわてていない。
フランスで作っていたようなパンを作りたくてやってみることがあるのですが、同じ味にはなりません。
浮遊している菌がちがうのではないでしょうか」

いまは育児のためにお休みしているが、売り場に立つ奥様のセンスが片岡シェフのパンをよりうつくしいものに見せている。
前職は美術関係の仕事をされていて、例えば、前述したショーケースの色合いにはとことんこだわったとのことだ。

バゲット(260円)。
薄く硬い皮に歯を入れると心地よくひび割れていく。
そこには、すがすがしい香ばしさと明るい甘さがともにある。
一方、みずみずしい中身には、どこまでも透き通っていくようなピュアな小麦の味わいが。
パリのバゲットの皮と国産小麦のおいしさが、一本のバゲットにおいて邂逅を果たしている。

チキンシーザーサンド(350円)。
さっくりと焼かれたチキンのロースト。
とびきりの自家製ドレッシングで和えられたぱりぱりの野菜と、薄く削られたパルメザンチーズが添えられている。
もし、このようなランチをどこかのビストロで食べることができたら、小さいけれどずっと記憶に残るような幸福感を覚えるだろう。
そのような食事がピタパンの中におさめられ、わずかな値段で食べることができる。
片岡シェフの師であり、サンドイッチに抜群の才を発揮する、アンジェリーナの隅シェフから受け継がれた感覚がある。

ショコラフランボワーズ(240円)。
以前食べたタルト的なショコラフランボワーズが忘れられなくて買ったが、このクロワッサンオザマンド的なほうも負けずにすばらしい。
ホワイトチョコレートが塗られた表面のビスケットを食べただけでもう深い満足に襲われてしまう。
デニッシュのさくさく感、とろとろのフランボワーズジャムに対して、ぼりぼりとした板チョコを持ってきて、意外性と食感の対比を演出してしまう心憎さ。
それらが時とともに溶けあい、じょじょに混ざりあって境界線を失い、一体のすばらしいなにかになるとき、茫然自失してしまう。(「ぷ」こと池田浩明)

ブーランジュリー プーヴー 
小田急線・千代田線 代々木上原駅
03-5465-2333
9:00〜19:00(日祝〜18:00)
水休・第3火休

#023


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かしわで


女子アナオススメのパンで
さらお姉さんが紹介してたのがこの店の
期間限定のパン・いちごでした。

かじった瞬間に4人の女子アナ全員のテンションが上がった、瞬間最高リアクションのパンだったと記憶してます。

代々木上原には侮れないパン屋が多いなぁ〜

四川料理のおいしい店もあるらしいし、

キャンドル・ジュンさんの本拠地もあるし、

侮れない街だ。
from. かしわで | 2011/02/26 11:40 |
なんどか、買いにいきました。
食パンが、おいしい。しかも、安い!!!!
食パンが、おいしいって、最高ですね。
from. あーちゃん | 2011/02/26 15:42 |
あーちゃん様
そうなんです。
食パンがおいしいのです。
本当は食パンのことも書きたかったのですが、長くなるので割愛しました。
食パンがおいしいとそのパン屋さんのことを好きになります。

かしわで様
代々木上原・代々木八幡はパンの聖地です。
おいしいパンが焼ける酵母菌が生息しているとしか思えません。
これからどんどん出てきますよ。
from. ぷ | 2011/02/26 22:06 |
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