パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
ル・プチメック東京(新宿)
第30軒目

プチメックのことを誰かにいうときは、おもしろい映画を人に勧めるときみたいに、
「君はまだプチメックのパン・オ・ショコラを食べたことなくていいな。
あの感動を新鮮な気持ちで味わえるんだもの」
と、いうだろう。

プチメックのパンを食べることは、西山オーナーのたくらみを読み解くことである。
想像を超えるエンディングに驚くことである。
おもしろい映画を見たときのように。

プチメックのパンには重力がない。
そのために、現実の退屈や疲労感から、パンを食べている間だけは解き放ってくれる。
映画館の闇の底で、スクリーンの明滅に照らされながら、おもしろい映画に心を奪われている瞬間に似ている。

だから、プチメックには映画のポスターが貼られているのだと私は考えている。

クロワッサン(160円)。
私はパリを歩きながらパン屋に出会うたびに1個クロワッサンを買い、味見をしていた。
何を求めてそんなことをしていたのだろう。
この味を探していたのだ。
パリのクロワッサンが夢見て、しかし本当にはめったに到達することがなく、可能性のままにとどまりつづけているもの……無重力のクロワッサンが新宿にあった。

ミッシュ(630円 1/2)。
ルヴァン種(自家製酵母)を使用。
「ミッシュと長時間発酵のバゲットを自分の納得するところまで作った時点で、もうこれ以上無理って思ったんですよ。
これ以上おいしいパン作れっていわれても、作れないと思ったんですね」と西山オーナー。
しばらく噛んだあとにようやく姿を現す、酸味と小麦味が渾然一体となった味わい。
それは軽く、透き通って、どこまでも響きわたっていくので、高い空を見上げたときのように、果てのない感じに気が遠くなる。

パン・ド・ミー(141円 1/2)。
2011年2月の新商品。
低温長時間発酵によって引き出された小麦の甘さ(および砂糖の甘さ)と、強い発酵の香りとのあいだで、危ういバランスをとっている。
いつまでもつづく、甘さと発酵の香りの抜きつ抜かれつを夢中になって追いかけている自分に気づくとき、またプチメックの策略に引っかかったことを悟るのだ。
ふにゃっと生地が沈み込み、最後にぱちっと弾けるように歯切れる、食パンの理想型。
ハード系好きでプチメックを訪れた人にとっては、食パン狂いへの入口になるかも。

私はあえてシンプルなパンのことのみ書いた。
その他のパンに仕掛けられたたくらみをばらして、読者のみなさんから楽しみを奪わないように。(池田浩明)


ル・プチメック東京
山手線・中央線 新宿駅
丸ノ内線 新宿三丁目駅
03-5269-4831
11:00〜21:00(日祝は20:30まで)

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