パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
テコナ ベーグルワークス(代々木八幡)
第36軒目

地下への階段を降りると、ガラスの内側がきらきらしていた。
この店のベーグルはとても華やいでいる。
思わず手に取って触れてみたくなるような愛らしさがある。

パン作りを教えている高橋雅子さんが開いたのは、いちばん得意とするベーグルの店。
自家製酵母の「もちもち」、ホシノ丹沢酵母使用の「むぎゅむぎゅ」、イースト使用の「ふかふか」という3種類の食感のベーグルがあるのが特徴。

ベーグルを焼く小林千絵さんは10年間パティシエールを務めたあと、この店の店長になった。
「女の子が作っているのだから、見た目にもかわいいものをとこだわって、スタッフと心がけています。
1個1個に愛情をかけ、顔を見つつ作ります」

「ベーグルの顔を見る」。
1個のケーキに手間と時間を注ぎ込むパティシエならではの表現だと思った。
そして、パティシエにベーグルの製作をゆだねるという方法にも膝を打った。
考えてみれば、ベーグルの立ち位置はパンとお菓子の中間にある。
ベーグル屋に足を運ぶ人たちの多くはパンの味もさることながら、食べたことのないフレーバーを求める。
パン専門の職人よりも、フレーバーの開発についていえば、適材適所なのである。

「お菓子屋さんでは、パン屋さんの何十倍もの菓子の素材を扱います。
その中にはパン屋さんが知らない素材や調理法があると思います。
普通のパン屋さんが使わないものを使ったらおいしいベーグルができるんじゃないかと思いました」

ブーランジェの知らないパティシエのこだわりのひとつに、漬込みフルーツがある。
「ドライフルーツをそのまま使わずに、煮込んだり、2、3ヶ月前から漬込んだり、香りを足したりして使います」
ラムとブランデーとはちみつに漬込んだフルーツは、ときどき開かれる、土日のフェアのときのみ登場する。
たった数十個のベーグルのために、できあがる瞬間を想像してわくわくしながら、数ヶ月も前から用意をはじめるときの気持ちは、愛情という言葉がまさにぴったりくるものだろう。

「パティシエの頃に感じていたのは、お菓子が日常食として食べてもらえないということでした。
よくいらっしゃるお客さんでもせいぜい3ヶ月に1回とか。
お菓子は特別な日のためにあるものですから。
でも、この店では、1週間に2度3度通ってこられるお客さんもいらっしゃいます。
焼きたてを食べてもらえるし、お客さんと接する機会もある。
パンっていいな、ベーグルっておもしろいな、と思います」

大納言塩(むぎゅ、230円)。
生地に練り込まれたそこはかとない豆の味わいをふりかけられた大粒の塩が浮かび上がらせる。
ほのかだけれど、くっきり、というはじめての味わい。
アメリカンな食べ方を日本の食材に合わせた意外性がおもしろい。
反発してくるのではなく、沈み込む食感が「むぎゅ」生地の心地よさ。
酒種にも似た風味が特徴のホシノ天然酵母の生地に和の味わいは合っている。

おいもチョコ(ふか、240円)。
ココアを練り込んだ生地+巻き込んだチョコチップがとろけるダブルチョコ。
そこにさつまいもが入る新機軸。
はじめて食べるチョコとさつまいもの組み合わせは、とてもよく合っていた。
甘さの少ないチョコの苦みを、いもの甘さともたもたした食感が癒してくれる。
逆の言い方をするなら、チョコの苦みによって、いものやさしさを再発見させてくれるのだ。
もっともふっくらした「ふかふか」生地のやさしさも、いもにふさわしい。

クランベリー(もち、200円)+レモンミルククリームチーズ(170円)。
好きなベーグルとディップを自分で組み合わせたオリジナルサンドイッチ。
レモンクリームのせつない甘酸っぱさは、乙女心を持つすべての人へおすすめできる。
レモンはチーズの中に練り込まれて、鋭さがいい感じに丸まって、ふわっと甘い。
そこへ、クランベリーのとてもいい甘さが、ゆっくりと近づいてくる。
甘さはベーグルの皮の香ばしさともいい相性があって、甘いだけではなく、ベーグルの味わいに目を向けさせてもくれる。
「もち」生地は、普通のパンのもちもちよりは強いけれど、普通のベーグルのもちもちよりはやさしい。
自家製酵母+国産小麦の味わいの豊かな滲みだしは、ベーグルとして希有。(池田浩明)


小田急線 代々木八幡駅/千代田線 代々木公園駅
03-6416-8122
11:00〜18:30

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