パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
ルヴァン(代々木八幡)
53軒目

以前、ルヴァンの信州上田店を取材に訪れたとき。
甲田幹夫オーナーに、「パンの特徴は?」と尋ねると、
「原点のパン」。
その一言で取材が終わってしまった。
原点とは領域ではなく、つまり一点しかないものなので、それ以上、なにも聞く必要はないように思った。
甲田さんも、それ以上なにかをいうつもりもないようで、どこかへ消えた。

コンセプトというのはシンプルなほどいいと思う。
プロジェクトの参加者それぞれが自分で考えることができる。
私も、甲田さんにそういわれてから、宿題をもらったつもりで、「パンの原点」について折に触れ考える。

なぜルヴァンはこれほどの吸引力を持っているのか。
天然酵母のパン屋の草分けといわれるこの店は、創業以来約25年間、原点のパンを焼きつづけている。
ルヴァン種のパンは、いまではそう珍しいことでもなくなった。
無添加や国産小麦、オーガニックというコンセプトも目新しくはない。
けれど、後からきたものは、もはやただの「原点のパン」を作ることは決してできない。
ルヴァンでないパンを焼こうと思ったら、「原点のパン」+アルファを目指さなくてはならない。
その時点で、シンプルさにおいて後れをとっている。

原点のパンとはなにか?
最初にその言葉を聞いたときから1年後、私は改めて尋ねた。
「原点というのは、昔のヨーロッパの、いわゆるイーストができる前の、酵母で作っていたパンのこと。
塩と水と粉だけでできてる。
それが原点に近い。
大昔、パンが生まれた当時に近い」

これは説明ではあるが、答えではない。
甲田さんもひょっとしたら、「原点のパン」の意味を本当に知っているわけでもないのかもしれない。
ルヴァンは原点を目指しつづける。
食べ物においてもっとも大事なことはなんなのか。
それを見つめつづける意志がルヴァンなのではないだろうか。

カンパーニュ317(1円/1g)。
「原点のパン」を焼くルヴァンの原点。
つまり、日本の天然酵母パンの原点といってもいいかもしれない。
中身が触れた途端、舌がじんじんする。
酸味は酸味であるが、一色ではない。
レイヤーとして重なったいくつもの酸味がそれぞれに、+アルファとしてのうまみを孕む。
(酸味+α)+(酸味+α)+(酸味+α)…。
気品さえ帯びた分解不能の複雑さは、酵母をつなぎつづけた27年の歳月のたまものでもあるのだろう。
中身は独特のさくさく感、味わいはおっとりして洗練されすぎない。
トップランナーにして、この素朴さ。

メランジェ(2円/g)。
酸味はパンにとっての敵だろうか。
決してそうではないとメランジェが語る。
これは酸味と友達になるパンだ。
天然酵母パンにつきものの酸味から逃げず、さらに強調する。
カレンズの酸味と酵母の酸味が重なる。
カンパーニュ以上に鋭く、舌を、上あごを、喉の奥を酸味が襲う。
とたんに、口の中が、気分が爽快になり、すべてがリセットされる。
すっぱさを通り越したのち、現れる感じのいい甘さによりいっそうの幸福を感じる。

ル・シァレの春サンド(493円)。
中央・コンプレ25、左・イングリッシュマフィン(あんばた)、右・フィグノア。

四季折々の食材を使ったサンドイッチ。
コンプレ25には春らしく、菜の花とにんじん。
なんと辛く、なんと苦く、なんと甘いのだろう。
自然とは、おいしさの先入観をいつも逃れつづける、なんと鮮烈な体験なのだろう。
ルヴァンの必殺技ゴマペーストが、西洋の食べ物であるパンと、日本的自然の味わいを不思議につなぐ。
自然を体内に取り入れる感覚。
そういえば、ルヴァンのパンを食べるといつもこの感じがあるな、と思った。


小田急線 代々木八幡駅
03-3468-9669
8:00〜19:30(日祝は18時まで)
水曜・第2木曜休み

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かしわで



山手通りをちょいと渋谷方面に進むと代々木八幡がある。

自分の住処から縦にバスで10分15分。

しかしこの縦の動きが取りにくくて、いまだ足を運べずにいる。

新宿や中野・吉祥寺には横に電車で進む。

横は動きやすいのに縦は動きにくい。


切り裂かねば!

切り裂いて進まねば!

ルヴァンへ!

from. かしわで | 2011/05/12 18:46 |
かしわで様
代々木上原→ルヴァン、テコナベーグル、イエンセン
代々木八幡→カタネベーカリー、プーヴー、アトリエベック、マンマーノ
名店ぞろい。
ぜひどうぞ。
from. ぷ | 2011/05/25 09:46 |
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