パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
あんですMATOBA(浅草)
55軒目

あんぱんが神様、の世界。
大型サイズの額装あんぱん写真がご神体に見える。
多種多様のあんぱんは想像力の限界を振り切っている。
こしあん、つぶあん、白あん、小倉あん、白あん、栗あん、うぐいすあん、ずんだあん、桜あん、ごまあん、パンプキンあん、抹茶あん、芋あん、ピーナツあん、杏あん、柚あん。
あんや豆を使ったアイテム数、60種。
近未来、あんぱん以外すべての菓子パンを禁じられたならば、世界はこの店のようになるだろう。

オレンジ色のエプロンでそろえた、「あんぱん娘」たちが笑顔で迎える。
「お彼岸に 家庭で作ろう 手造りおはぎ」
白い清潔な空間に、今月の標語が掲げられ、水彩画の商品イラスト付きメニューポスターと、宇宙飛行士・若田光一さんの写真入りサインがひときわ映える。
あるいは、月1で「感謝の日セール」が存在したり、サービスデーが存在することも、山の手のブーランジュリーでは見ない、下町らしさである。

もしこの世に、赤い糸があるなら、あんですMATOBAの誕生は運命にちがいない。
あんこ屋の社長に、パン屋の娘が嫁入りした。
あんとパンのマリアージュはあんぱんを産み落とすほかない。

「お得意様に対して、同じ商売は失礼。
あんぱんを売るのに私は反対だったんですがね、妻には弱い」
83歳にして現役の代表取締役はそういって笑った。
年商17億を誇る、あんこ業界のリーディングカンパニー。
地上9階建て本社屋の1階にあんですMATOBAは鎮座する。
30種類のあんこをそろえる的場製餡所の商品を使ったあんぱんベーカリー。
夫の反対を押し切って、夢を実現した老女将は、いまもあんぱん娘の先頭となって店に立つ。

パンフレットを飾る、あんこ研究室の風景や、あんこ顕微鏡写真。
あんこの研究は日夜行われ、さらにおいしいあんこを生み出そうと、悪戦苦闘がつづく。

それでも、あんこ道60年の的場研二代表取締役はこう語る。
「あんこは家庭で作ったのがいちばんうまい」
それはつまり「物体あたりの熱伝導面積」においしさが比例するからである。
平たくいえば、あんこは少量を作るほどおいしい。
豆にうまく熱が伝われば伝わるほど、うまみは引き出される。
では、長時間、あるいは高温で熱を入れればいいのかといえばそうではなく、豆が熱変成を起こしてしまう。
工場でできた食べ物より手作りのほうがおいしい理由のひとつがここにある。

的場製餡所では、小型サイズの釜であずきを炊く。
R2D2のような、銀色に輝く、自動式球形あんこ釜が36台並んだ光景(パンフレット参照)は、やっぱり近未来を想像させる。

83歳は、若いブーランジェをこう叱咤する。
「自分で作らなきゃ、あんこはわからない。
自分であずきを買って、選別して作らなきゃ。
小豆は怖い。
花は1ヶ月咲いている。
咲いた端から実がなっていく。
どんどん咲いていってしまうから、穂の1番下と1番上とでは1ヶ月の差がある。
先にいくほど粒は小さくなっていく。
同じ穂でもそれだけ粒の大きさに差がある。
粒をそろえないと均一に煮えませんよ。
あんこは煮すぎてもいけないし、早すぎてもいけない」

愛パン家の渡邉政子さんに聞いた、あんですMATOBA必勝法。
午前中早い時間なら、できたてのあんぱんが次々でてくる。
なにも考えずにそれを買って、浅草寺の境内のベンチで食べる(こっそりいうとお茶無料)。
あたたかいあんぱんほどおいしいものはない。
うまくいけばご利益もついてくるかも。

シベリア(170円)。
下町にあって山の手のパン屋にないもの代表。
きちんと作ればこれだけおいしい。
秘密は「ややかための水ようかん」。
水っぽすぎればサンドできないし、硬いとみずみずしさが失われる。
硬すぎずやわらかすぎずのぷるぷる羊羹が、カステラ生地を潤していく。
甘さ+甘さであるけれど、豆と卵のコントラスト、あるいはあんこのつぶつぶな口溶けと、カステラのしゅわっとした口溶けのコントラストが鮮やか。

ずんだあんぱん(140円)。
枝豆の中でもグレードの高い茶豆を使用。
青い夏の風味が口中を席巻する。
やわらかで少しつぶつぶを残したずんだあんがぎっしり詰め込まれている。
生地に混ぜ込まれたよもぎがずんだとの相性を発揮。
草原を想わせる青い味わいを、さらに強調しながらアクセントも加える。
厚すぎず薄すぎずで、歯切れよく、あんと生地のバランスも巧み。

黒ごまきなこあんぱん(140円)。
中華系でしかほぼ食べることのないごまあんがあんぱんになったら。
濃厚なコクの流動体を、パンチのあるあげぱんで迎え撃つ。
インパクトvsインパクトの戦場と化した口の中を、きなこのとぼけた感じが素朴方向へとシフトさせる。
そして、喉の奥からアルコールっぽい芳香が吹き返すとき、ごまあんの醍醐味を感じる。

それぞれのあんに、さまざまな生地、さまざまな形をカップリング。
ひとつひとつ、もっともふさわしい生地が考え抜かれている。
ここは各種あんをお菓子屋やパン屋に売りこむ、見本市会場でもあるからだ。(池田浩明)

東京メトロ銀座線・東武線・つくばEXP 浅草駅
03-3876-2569
9:00〜18:30
日祝休

#055


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かしわで


自分は断然、うぐいすパンです。


あんパン系を食べたくなると必ずうぐいすを探します。

ご存知のとおりうぐいすパンはスーパーでもコンビニでもパン屋でもあまり見かけません。


おそらく人気がないんでしょう。


なぜ人気がないのか? その理由はまったくわかりません。
from. かしわで | 2011/05/16 12:10 |
うぐいすあんパンが人気のない理由、それはあんぱんを食べたいときに、だれもうぐいすあんパンを想像しないということに尽きるでしょう。
かしわで様のようには。
決して味自体においてあずきに劣っているわけではないと。
あずきといんげん豆の関係は、チョコレートとホワイトチョコレートに似ていますね。
from. ぷ | 2011/05/17 03:17 |
siesta
私は こしあんぱん と うぐいすぱん が大好きです。
たしかに うぐいすぱんを手にできるチャンスは レアですね。
だから ぱん屋さんとか ぱん売場を見かけたら
急いでいるときは無理だけど 立ち寄るのが楽しみです。
どこかで おあいしてるかも
from. siesta | 2012/06/02 10:35 |
一年前のスレにコメントがつく。

なんだかいい気分です。

しかもうぐいすに同意していただけるなんて!

うぐいすあんに興味のない人は、うぐいすあんがレアであることも知らないと思います。

味がそもそも好きだけど、その環境も好きかも。

メジャー・マイナー感みたいなのがね。

うぐいすあんのストライクゾーンは広いです。スーパーでもとりあえず探しますから、緑を。

from. かしわで | 2012/06/02 11:00 |
先週日曜日にランニング中にあんですさんの前を通り、気になりネットで調べて、昨日¥4,000以上購入。友達、ランニング関係にに配りました。大好評でした。明日、神田から往復17キロの食べランに参加しょます。時間が許せば、あんですさんに、よってくれるそうです。汗臭い連中が行くかも。宜しくお願いします。えつこ
from. 平山 | 2015/08/14 21:48 |
土曜日16人でランニング中に行き、大勢でご迷惑おかけしました。みんな大喜びで、食べランのコーチも又利用したいと言ってますい。
パン美味しいくいただきましたが、今クラッカーにカッチィチーズを乗せ、その上に粒あんを乗せるのにこってます。浅草方面に行った時は、又いきます。
from. 平山 | 2015/08/17 00:22 |
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