パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
ピクニクス(大崎)
65軒目(東京の200軒を巡る冒険)


店の入口と胃袋が直結している。
食欲に忠実である。
パンありき、ではなく、自分がなにを食べたいのかという問いからメニューは作られる。
すると、サンドイッチが多くなる。
食べたいものをなんでもはさむ。

ご主人の高木さんは、
「ぶっちゃけていうと、口に入っておいしければいいよね、と。
自分たちのおいしいパンがなかった。
だったら、作っちゃえ、とこの店を開きました。
サンドイッチのアイデアが突然降りてくる。
いい素材を見つけたら、これパンにはさんだらおいしそうだよね、と。
スーパー見たり、市場見たりするときが、いちばんインスピレーションが湧きます」

野菜3種のソテー(300円)。
なにも考えず瞬間的においしいと思える、この感じがイタリアンの醍醐味。
パプリカ、エリンギ、ズッキーニ。
3種類のマリネをフォカッチャにはさんでいる。
りりしい苦み、ほのかな甘さ、ざっくりした噛みごたえ。
それを包み込むフォカッチャの小麦味は意外なほどまったりしている。
どの野菜がどういう味だとかおかまいなく、夢中でかぶりついていく。
ポケットに詰め込まれた有無をいわせぬおいしさ。

土日には13種類、平日でも8種類ものサンドイッチをそろえる。
フォカッチャ、フランスパン、ドッグサンドとパンも多彩。

「よそのお店にはあまりないそうですが、うちはサンドイッチに魚を入れたり。
パン自体がしっかりしていれば、中は自分がおいしいと思うものを入れればいい。
素材はこだわればこだわるほど高くなっちゃうけど、そこを安くするのが、作ってて楽しいところ。
魚がパンに合うんですよ。
ソテーして、塩、こしょう、ハーブをふりかける。
旬のものをきちんと選べば、近所のスーパーでもいいものが手に入ります。
いろいろ考えて、できるものを作ってサンドイッチに入れれば、なんとかなるだろうと。
主婦の方と同じです。
加工品を買うと高くつく。
あんこと、ハム、ソーセージは買いますが、それ以外、パテ、チキンレバー、ジャムはうちで作ります」

イワシのハーブソテー カスクルート(330円)。
魚の風味がでたオイルがパンに滲みこんでいる。
自家製のオイルサーディンは臭みもなく濃厚な海の香りがする。
ハーブとワインビネガーのすがすがしい芳香もまとわせて。
とろとろのチーズやトマトのフレッシュさと出会って新たな局面も見せながら。
小さく細く作られ、焼きしめられた、サンドイッチ用のバゲットが秀逸。
全身皮となり、渋めのいい香りがする。
魚とパンとオリーブオイルは鉄板の組み合わせにちがいないが、海に面した都市である東京のパン屋で、あまり見かけることがないのは残念だと思う。

イタリア系のパン、サンドイッチが多い。
イタリアに10年住んでいた友人とパーティをする間柄で、彼女からたくさんのおいしいものを習ってメニューに取り入れる。
イタリアにはいったことがないというけれど、大きな声でおおらかにしゃべる奥さんの佳子さんを見て、精神のイタリア人なのだ、と思った。

佳子さんはいう。
「うちにはしばりがまったくない。
逆にいうと正統派ができない(笑)。
まがいもの、かなりあやしい、なんちゃって。
でも、イタリアに行ってた彼女もいってた『向こうのよりおいしい』って。
向こうのお母さんが普通に自宅で料理作るでしょ。
その感覚だと思っていただければいい。
買ったら高いけど自宅で作れば安くできる」

スライスしたパンに好みの食材をのせて食べるイタリアのサンドイッチ、ブルスケッタ。
取材の途中で佳子さんが手早く作ってくれた。
あじのマリネ、フムス、トマト、レバーパテ。
たちどころに並んだ皿の上のごちそうに驚いた。

「これがあれば、本物のブルスケッタがすぐできますよ」
イタリア・トスカーナ地方の塩を使ってないパン、パーネ・トスカーノ(1/2 450円)。
「作れるようになるまではたいへんでした。
とくにこねるときが、なかなかまとまらなくて。
おかずといっしょに食べてはじめておいしい。
素材の味をじゃましないので、いくらでもパンが食べられるんですよ。
なんにでも合うし、水分を吸ってもぐちゃぐちゃにならないので、サラダやスープにクルトンのように入れてもいい」

カンパーニュのようだが、ふわっとして歯通りがいい。
ためしにパンだけで食べてみたら、塩がないというだけで、どんよりと重い味がする。
塩の効果というのはすごいものがある。
おかずといっしょに食べてみると、今度は普通のパンより軽やかになる。
ほとんど無言でたたずみ、おかずのなすがままになって、ふわふわさでサポートする。
ときどきおかずの塩気が余ったときだけ、ほんのり甘さを主張する。

ブルスケッタという聞き慣れない言葉に、自分でもできるのかと、躊躇していたら、
「簡単ですよ。
パンをスライスして、生のにんにくをぐりぐりぐり。
ハムでも野菜でも、好みのおかずをのっけて、塩、こしょう、オリーブオイル。
ミニトマトを焼いてぐちゅぐちゅにしたのなんて、もう何枚でも食べられる。
わからなかったら、店のホームページ見てくれれば作り方のってますから」

食べることが楽しい。
この店では毎日が気のおけない人とのパーティのようだ。
「店にテーブルをつけたのは、買って持ち帰るだけだと、お話ができないから。
10分でも20分でも。
つい長話になっちゃうんですよ。
夜遅くきた人なんかは、いっしょにごはん食べちゃった(笑)」

ピクニックの準備はいつでもできている。(池田浩明)

山手線 大崎駅
03-5740-8410
11:00〜18:30
月曜・第1第3第5火曜休み

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