パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
ブーランジュリー オーヴェルニュ(京成立石)
57軒目(東京の200軒を巡る冒険)

東京の東側では貴重な、本格的ブーランジュリー。
京成立石の駅から商店街、つづいてうつくしいさくら並木をたどったあとに現れる。

技術力がすばらしく、数々のコンテスト受賞作が売り場を飾る。
より高く、より速く、より強く。
といえばオリンピックの標語のようだが、オーヴェルニュの場合は、よりやわらかく、よりぱりぱり、よりオリジナルな、と一流のアスリートを思わせる野心と情熱にあふれている。

天使のほっぺ(241円)。
もちもちというより、むにゅむにゅ。
もてあそべばなすがまま、シリコンのように変幻自在に口の中で形を変える。
低反発枕のような沈み込んでいくやわらかさは、たしかに赤ちゃんの肌のようだ。
食パンと同じ生地を下火を強めに上火を弱めに焼くことでこの食感が生まれる。
底面がごく薄く、中身のやわらかさを邪魔しあいほどにぱりぱりとしているのも心地いい。
食パン同様に、ミルク味とごくほんのりの甘さが滲みだしてくる。
ドライのプルーンが練り込まれている。
レーズンより甘さが淡く、酸味が強く、よりさわやかであるゆえに、生地のほのかな甘さがより鮮明に感じられる。

井上克也シェフはいう。
「パンの味は発酵だと思います。
発酵を中心にしてパンを作り、その上で個々のパンの特徴を活かす。
デニッシュであれば層の食感であり、フランスパンなら皮のぱりぱりと中身のしっとり、食パンですと2日経ってもやわらかく、口溶けよく。
ポーリッシュ法(水分の多い液種からより風味のいいパンを作る方法)を使い、そこからパンの種類によっていろいろな展開をしていく。
種を使ってコクをだしたり、長時間冷蔵でひっぱったり(してうまみをだす)。
逆に、カイザーゼンメルのように発酵をほとんどとらないパンもありますし。
粉も数種類をブレンドします。
粉のたんぱく量や灰分からできあがりをイメージして。
ちがう生地を仕込んでちがいがなければつまらないし、買っていただいたお客さんもそのほうがよろこんでもらえるのではないかなと」

発酵を操って多種多様な生地を作り上げる。
シェフのイメージに向けて具材も生地もデザインもすべてがトータルに作り込まれている。
生地の味わいとパンのイメージや具材との相性があまりにも的確である。
だから、ドライフルーツ入りのハード系のパンにも、まるで焼き菓子のような細やかさ、完成度の高さを感じる。

マカダミアミルキー(168円)。
マカダミアナッツとホワイトチョコレートの相性のよさ。
その1+1は細かい計算で2以上のなにかに高められている。
こんがりと甘いマカダミアと生地の中にさりげなく練り込まれたチョコチップが、「全粒粉を入れてコクをだした」という生地とあまりに違和感なく調和しているので、生地自体からナッツやチョコの甘さが輝きだすような印象を受ける。
他のフランスパン同様に、薄い皮は実にぱりぱりと、しかし中身はやわらかく繊細であり、そのコントラストは実に鮮やか。
薄く焼かれているので、ぱりぱりの表面積が多く、それがナッツのコリコリとうまく響きあってもいる。

ヴィエノワズリーも実に多彩。デニッシュもありとあらゆる折り方を駆使して、まるでパン図鑑のようにさまざまな形が並んでいる。

ヴィエノワミルク(157円)。
この長さ、細さ、形に外見のうつくしさ以上の計算がある。
表面かりかり、中しっとり。
さっくり感とうるおいという両立しがたい2つが見事なバランスで実現している。
パンオレ(ミルクのパン)にミルククリーム。
甘いミルキーさの二重の強調は、両者の上品な味わいゆえに、しつこさではなく、ただ愉楽をもたらす。
コクのある練乳クリームは喉をひりつかせるほどに甘く。
しかし、さっと遠ざかっていき、後口がさわやかなミルク味の生地に変わっていく心地よさ。

カスタードクリームのパンしかり、私の食べたオーベルニュの甘いパンすべてにこの感覚があった。
突然、あるいはすーっと。
甘さは劇的に訪れ、すーっと遠ざかって、しつこさを残さない。
接近し、遠ざかる感じを何度も味わいたくて、いつのまにかそのパンにはまっている自分に気づくことになる。(池田浩明)


京成押上線 京成立石/京成本線 お花茶屋・青砥
03-3691-5102
7:00〜19:00
無休

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Comment








どーうして、こんな場所にあるんでしょう?
街中なら、話題になるのに、、
from. あーちゃん | 2011/05/20 14:04 |
たしかにそうですね…。
東京の東側では有名なお店です。
どの駅からも遠いという難点はありますが、桜並木に沿ったとてもいい場所にあります。
from. 池田浩明 | 2011/05/20 19:10 |
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