パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
BOULANGERIE ianak!(西日暮里)
60軒目(東京の200軒を巡る冒険)

ポップ。
かっこをつけながら、でも敷居は下げて、地元の人と手をつなぐ方法として、オーナーシェフはポップであることを選んだ。

色でいえばオレンジ色。
活字の筆記体ではなく手書きの店名。
町を駆け抜ける自転車のスピードや軽さがこの店のイメージにふさわしい。

パンにおけるポップとは?
定石や理論の間隙を縫って、人びとの欲望の食べものをいきなり作って提示してしまうフットワーク。
すべてがフラットである。
伝統も、新しさも、高級食材も、町パン屋的な惣菜も、高度なテクニックも、日本的な味覚も。
あらゆるものに瞬間的にアクセスする感覚がポップだと思う。

パンドラ(250円)。
キューブ型のブリオッシュ生地の甘いパンはときどき見かけるが、食パン生地にカスタードを練り込んだものははじめてだった。
とてもしっとりした生地からおっとりした甘さがおだやかに滲みだす感じがめくるめくほど。
チョコレートの部分を齧るとき、喉をひりつかせる苦みは、カスタード味のまろやかさを強調し、カスタードのミルク感はチョコの甘さのせつなさを強調する。
キューブ型はかっちりした皮の食感を倦み、少し大きめのポーションは、食パン生地らしくスライスする可能性を呼んでいる。
それが気安いおいしさを生み、デザインも含めてポップにしている。

金井孝幸シェフはいう。
「町場のパン屋ですから、気軽に寄ってもらえるようなお店にしたいと思っています。
パン作りに関しては特にこれといったこだわりを持ってなくて、自分で作りたいものですとか、お客さんに要望されたもの、スタッフのアイデアとかから商品は生まれます。
気楽な感じで。
他店にはないような感じで。
デパ地下で見たものを参考にすることもあります」
惣菜パンも、おやつのパンも、どこにもない商品が豊富にそろうこの店で事欠くことはない。

豚肉のゼリー寄せフォカッチャサンド(300円)。
ホワイトソースと豚肉のコクとのうむをいわせない壮絶な相性。
たまねぎのスライスが豚肉の香りを消したりアクセントとして盛り上げたり。
豚肉のこりこりとゼリーのこまかなぷりぷり。
フォカッチャの食べやすい厚さと手のひらにおさまる大きさ。
塩気があり、歯切れがあり、しかし食べ応えがありと、サンドイッチのパンとしての用件をすべて満たす。
そして具材の味が溶けきったあと、明確な小麦の味が姿を現し、さっきから具材のおいしさを支えていたのは実はこれだったことに気づく。

金井シェフは、ルノートル、パンコテ、メゾンカイザーと、名店での経験を重ねてきた実力者。
「いま、製法という面では、メゾンカイザーで勉強したことがいちばん活きています」
自家製酵母による液種を使ってパンを焼く。
酸味のない、やわらかいパンを、イーストを使わずに自在に作れる方法でもある。
「食べやすいということは大前提。
どれだけ味があっても硬いパンが苦手な方には食べづらい。
この辺に住んでらっしゃる方にあわせて、おいしいパンを作りたい」

「できないことはできないんで、自分にできることを、できる限りの力を持って、精一杯。
技術的なところはいろんな考えがあるかもしれませんが、どれだけ一生懸命できるかは、そういう気持ちになればできると思うので。
すべての工程…仕込み、発酵、焼成、接客まで。
自分のパンを作って食べるしかできないのでわかりませんが、こうやっていろんなお客さんがきてくれるので、まちがいではないんじゃないかと」

ホットトッグ(270円)。
こんなにでっかいのを思う存分ほおばってみたかった。
ばりばりっと大きい音を立ててるソーセージの太さ、豪快さ。
口の中いっぱいに満ちる肉の味の満足感。
それを引き立てるドッグパンにはざらざらとした素材感を残し、噛めば噛むほど小麦の味わいを豊かに滲みださせる。
ただ大きいソーセージをはさんだだけでは終わらない。
ふにゃふにゃだったり、味わいに乏しかったりといったそんじょそこらのホットドッグとははっきり一線を画し、パン屋ならではの技と良心を見せる。(池田浩明)



JR山手線/京浜東北線/東京メトロ千代田線 西日暮里駅
03-3822-0015
8:30〜19:00(パンがなくなり次第閉店)
不定休


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200(JR山手線) comments(6) trackbacks(0)
Comment








このホットドッグは本当に食べてみたい。
from. 研究員D | 2011/05/24 17:02 |
ビール片手に食べてみたくなる
ホットドックですね。

あと、フォカッチャ大好きなので、
フォカッチャサンドもにもくぎ付けです。
from. ヒランヤ | 2011/05/24 22:50 |
D様
ばかばかしくなるほどのボリュームと物質感に圧倒されてしまいます。
欲望の先取り感覚に秀でた作り手だと思いました。

ヒランヤ様
ビール、ホットドッグ、そして目の前にターフが広がっていれば、ヒランヤさん的には最高じゃないですか?
このフォカッチャサンドについて一言でいうなら、脳がとろけそうになります。

このほかにイアナックボールという、カスタードの入ったボール型のパンがあったのですが、買わなかった自分をいまでも激しく責めています。
from. ぷ | 2011/05/25 03:16 |
はじめまして。ianak!のHP担当のRと申します。

素敵な記事、ありがとうございました。HPのブログ、パンラボさんの紹介記事で画像をひとつ掲載させていただきたいのですが、よろしいでしょうか。
from. ianak! | 2011/05/27 10:58 |
>ianak!のRさん
はじめまして。編集Dです。
コメントをありがとうございました!!
ご紹介いただけるとのこと、とてもうれしいです。
画像は自由にお使いください。

これからもどうぞよろしくお願いします。

from. 研究員D | 2011/05/27 13:13 |
早速お返事ありがとうございました。
こちらこそ、よろしくお願いします。

今後の記事も楽しみにしています!
from. ianak! | 2011/05/27 15:07 |
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