パンの研究所「パンラボ」。
誌面では紹介しきれなかったパンのあれこれをご紹介します。
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
boulangerie dodo(みどり台)
93軒目(東京の200軒を巡る冒険)

誰もがそうあってほしいと望むものの、もっと先まで。
パンに望む常識の地点が突破されるほどに。
明確なイメージを抱いて、追いかければ、きっとそこへたどりつくことができる。

食パン(263円 1/2)に驚いた。
包丁を入れたところからすぐ垂れていく。
こんなにふわふわで、やわらかでいいのだろうか。
甘い香りが、発酵の香りと相まって、フルーツのように、花のように感じられる。
食パンとしては甘めで、それがごく自然で透明感がある。
上の歯と下の歯にはさまった瞬間、むちっとふくらんでから歯切れる快さ。
空気感、やさしく撫でられるような舌触り、口の中を漂う軽やかな甘さ、そこはかとない香ばしさ。
この食パンは、常識のその先の、天国のような快感にあふれている。

2011年の2月8日に開店した新しい店。
若い女性がひとりでパンを作り、接客もこなす。
名もない小さな駅の住宅街にある、小さな店に本格的なフランスパンを並べる。
本行さんは、志賀勝栄さんがシェフを務めるユーハイムで5年間修行し、そのあとフランス各地で1年間経験を積んでいる。

「志賀シェフの、仕事に対する柔軟なところ、発想力はすごいと思いました。
こうでなければならないというところがまったくなくて。
素材の組み合わせにしても、製法にしても。
型破りで、新しい道を切り開いている」

本行さんもまた、追いかけ、道を切り開く人だ。
話を聞くまで、パンの味だけでは、志賀さんの元で働いていたことに気づかなかった。
食べたパンにいちいち驚き、どんなパンか尋ねると、
「志賀さんレシピではないんですけど…」
と笑いながら答える。
思い描いたイメージを、この店で実現するにはどうしたらいいか、その答えを自分自身で解きつづけている。

母はパンと食のライターの本行恵子さん。
「母の影響は大きいと思います。
幼少期はパンを作ってもらっていました。
母はパンのお教室も開いていましたし。
おやつがパンでした。
おばあちゃんも家庭でパンを焼いていたみたいで。
そういうDNAなのでしょうか(笑)」

東京まで行かなくては食べられないようなパンを地元で買うことができる。
そこに住んでいるわけではない私にとってもうれしいことだった。
志賀シェフの育てた種はさまざまな場所へ飛んでいって、フランスパンを根づかせ、その土地ならではの花を咲かせている。

「販売も自分でやりたかった。
ダイレクトにお客様の声を聞けるし、食べ方の提案もできます。
ユーハイムではお客様と話をしたくても、距離がありました。
あんぱん1個を買っていかれるあばあちゃんもいるし、パンが好きでシニフィアン・シニフィエにいくような方がきてくれたり。
硬いパンは食べられないといっていた方が、ハード系のパンをたくさん買うようになって、家族やご近所に配っていただいたり」

レザンヴェール(368円)。
やや厚めの硬い皮には発酵の味わいがよくのっている。
この本格的なハードパンの中に、こんなにもやわらかい中身が入っているとは。
目が粗くて素朴さがあるのに、しっとりとみずみずしく、あくまでやさしい。
ライ麦の香ばしさのさりげないきかせかたと、グリーンレーズンとがすさまじく合っていて、食べやめることができない。
酵母の香りがレーズンを呼び、レーズンの甘酸っぱさが小麦の甘さを求める。

「志賀さんは『いいんじゃない』としかいわない方で、あまりほめません。
シェフにはまだこの店のパンを食べてもらったことがないです。
怖くて。
一度、開店する前にテストベーキングで焼いたものを持っていったのですが、『いいんじゃない』と(笑)」

ほめないのは、パン作りが、決して最終的なゴールに到達することも、立ち止まることもできないものだからではないだろうか。
だから本行さんも、師匠のようにずっと追いかけつづけていくのだろう。

「買ってくださる方が食べる場面をいつも想像しながら作ります。
気持ちなんですよね。
気持ちの妥協はしない。
『ま、これでいいかな』みたいなのあると思うんですけど、それをしたくないかな」

マンゴーヨーグルト(231円)。
ぷるんとした生地が少し力を加えただけで一気に歯切れる。
歯切れたところから、香ばしさと、それに結びついた甘さが、卵の幸福な味わいとともに漂いだす。
しゅーという口溶けもすばらしく、ブリオッシュ生地の理想型が描きだされている。
ドライマンゴーの南洋的な甘さとクリームチーズのさわやかな酸味の相性も抜群。
「パリで食べたブリオッシュが、卵とバターがふわっとしてとてもおいしかった。
その感じを思いだして作っています」

フランスで食べた料理の記憶は、土曜日限定でだしているサンドイッチにも役立っているとのこと。
今度はぜひ土曜日に行ってみたい。

京成千葉線 みどり台駅
050-1075-9654
11:00〜18:00(売り切れ終了)
日曜・月曜・毎月1日(ついたち)休み

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