パンの研究所「パンラボ」。
painlabo.com
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
仙台パン巡り1 佐文
ニーハオ、僕はいま長安の都にきています。

仙台には純粋パン屋は少なく、お菓子屋の付属としてパンも置いているという店が多いみたいである。
パティシエがパンもデザートも作るというフランスに似た感覚?
なつかしい系の某店ではこんなパンも売られていた。
ピーナッツコッペなんだけどちょっとデコレーションケーキっぽくなっているのは、菓子職人の習いがそうさせるのだろうか。

コッペパンのとてもおいしい店があった。
伊達政宗の建てた国宝・大崎八幡宮の横にある、佐文というかっこいい名前の店。
この店もメインは洋菓子で、何十年もやってる老舗らしい。
こういう感じで包んでくれる。

とんかつサンド。
とんかつ屋に準ずるぐらい立派なとんかつが入っている。
コッペパンの甘さがすごくちょうどいい。
普通よりちょっと甘め、でもさっぱりしている。
甘いパンにしょっぱいおかずが入っているとお互いに引き立て合うように感じられる。

私がいったときはこのパンだけしか売ってなかった。
他のパンも食べたいのでまた別の時間に来てやろうと思い、
「他のはいつごろくればあるんですか?」
と店番のおじいさんに訊いた。
すると、返ってきた返事はこういうものだった。
「あるときはある。ないときはない」
そんな禅問答のようなことを聞きたいのではなく、私はパンを食べたいのである…。

で、あきらめて帰ろうと思ったら、いつのまにか新手のパンがでてきている。
ハムカツパンで、パンはコッペパンじゃなく、バンズだった。

帰りがけに「パン、おいしかったです」とさわやかに感想を述べたのだが、
おじいさんはいたって普通に
「はい、おいしいですよ」と答えていた。
このおじいさんが自らパンを作っているそうである。(ぷ)

パン・トリップ comments(0) trackbacks(0)
ファイティング・シェフとル・プチメックとトロワグロ
かしわで



映画ファイティング・シェフを観ました。
http://bishoku-movie.com/introduction/index.html

この映画は2年に1度フランスのリヨンで開催される
ポール・ボキューズ国際料理コンクールに挑戦するスペイン人シェフを追ったドキュメンタリー映画で
スペイン人にとってのフランス料理の牙城がいかに高いかと
それでも挑戦するスペイン人フランス料理シェフのパッションを描いた
スリリングな映画でした。

面白かったのはフランス人シェフのスペイン人シェフへの表現。

「スペインのシェフは(いい意味でも悪い意味でも)即興だ。だから大会で勝てない」

「フェラン・アドリアでも勝てない」

フェランといえば
http://www.president.co.jp/dan/backnumber/2002/20020400/1348/

その独創的な料理で全世界共通に認識されてるスペインの天才料理人。
そのフェランを持ち出して、勝てないと言い切ることでこの大会の本質がわかりやすく伝わってきます。(同時にフェランの名が出ることで映画そのものがぐっと身近に感じられるようにもなった)

それでいて、優勝するには
「スペクタクルやサプライズが必要」だ。

フランス料理の伝統を守りながらも、驚きも必要。

ポール・ボキューズといえば30年くらい前にヌーヴェル・キュイジーヌの旗手として
轟かせた三ツ星シェフ。

だからか、もしくは、なのに、
伝統。
だからか、もしくは、なのに
驚き。

自分には要は「センス」。
センスなきものは何をやっても勝てない。
と言われてるようにも感じました。


映画は料理そのものへのアプローチが少なくて(他の参加者含む)、
そこがちょっと残念でしたが、
(日本人シェフもインタビューに応じていた。オープニングの大会風景でニッポン・チャチャチャがうっすら聞こえたりもする)
スペイン人シェフの内面までえぐろうとしていて、そこはひじょうに面白かった。


センスといえばル・プチメック東京か。

ムッシュの書いていた文章を読むとル・プチメックのシェフがいかにセンスあふれる人物かが
手に取るように伝わってきます。
http://panlabo.jugem.jp/?day=20090925

フランスへのオマージュをパンで表現する。
簡単そうで難しいことを簡単そうに見せる。
もはやセンス以外の何者でもなし。

映画を観た翌日にこの文章がアップされて、
なんだこのシンクロは!?

あそこでもこちらでもセンスか!?

やっぱセンスなのか!?

と痛感したのでした。

「あとはセンスでお願いします」と読者のセンスにゆだねる競馬ブログを開設してる
自分には痛切なパンチを連日連打で浴びた気がしたのでした。




onionn

写真はポール・ボキューズとともに一世を風靡したトロワグロの出店するパン屋「トロワグロ」の
オニオン・ブレッド。

自分はこのパンを1季節に1回くらいの割合で無性に食べたくなる。
オニオンとチーズ? がまじりあった外側の皮と
かじるとクシャっとにじみ出る中の味わいがとても好き。

ですが今日は、

くりむ

こっちの新製品、
生のクリームとチョコが2層で敷かれてる「その日が賞味期限」という
クリームパンwithチョコのパンがうまかった。

生カスタードクリームとチョコが絶妙。

パンラボ・オンチの自分が感じられるほどわかりやすく絶妙。

わかりやすいと引く人も多いかもしれませんが
引かれてもいいです。
自分にはただただ美味しく感じられました。


パン・トリップ comments(1) trackbacks(0)
デイジイのクロワッサンB.C.


デイジイは埼玉県川口にあるパン屋。

店は大きくておかずパンやサンドイッチもたくさんあって、パンは食べやすい。親しみやすく、近所にあればいいなと思えるお店。


http://www.daisy1962.co.jp/


イートインコーナーもあって、私のようなすぐかじりつきたい腹ぺこ派には便利である。



一番有名なのがクロワッサンB.C.(農林水産大臣賞受賞!)。

どこからかぶりつけばいいのかわからないぐらい背が高くてよく膨らんでいて、層のあいだにたくさん空気の入った軽いクロワッサンだった。



軽さの中にほんのりした甘さがあって、バターの香りが広がる。パンと甘さのバランスがいままでにないようなものだったのでおやと思い、齧り口を見た。

すると、クロワッサンの中からそぼろみたいなものがたくさん出てきている。

この黄色いつぶつぶがB.C.、すなわちバターケーキなのだった。

肩肘はって食す高級デッセールではなく、甘さも軽くて毎日でも食べられそうな日常のおやつ。(ぷ)

パンラボ comments(0) trackbacks(0)
第3回パンラボ〜パン・ド・カンパーニュ〜アドレス帖
 [第3回パンラボ〜パン・ド・カンパーニュ〜]で食べたカンパーニュが買えるお店


ルヴァン
ルヴァン
住所:東京都渋谷区富ヶ谷2-43-13
TEL:03-3468-9669
地図:http://www.mapion.co.jp/m/35.66443333_139.68901388_10/
営業時間 8〜19時半(日祝〜18時)、水および第2木休
HP http://levain.chottu.net/index.html



マールツァイトマールツァイト
住所:東京都文京区大塚3-15-7
TEL:03-5976-9886
地図:http://www.mapion.co.jp/m/35.71739443_139.73733888_10/
営業時間 11〜19時、日および振替月休
HP http://www.mahlzeit.jp/



チクテチクテ・ベーカリー
住所:東京都町田市小山ヶ丘4-9-9
TEL:042-770-1514
地図:http://www.mapion.co.jp/m/35.60471944_139.35544444_10/
営業時間 12時半〜18時、月火および不定期日休
HP http://cicoute-bakery.com/



麻凛堂パン処 麻凛堂
住所:埼玉県さいたま市南区鹿手袋1-3-30
TEL:048-866-0876
地図:http://www.mapion.co.jp/m/35.85122222_139.6413611_10/
営業時間 9〜19時、日および第1・3・5月休



ラモーラペストリーショップ「ラ・モーラ」
住所:埼玉県さいたま市浦和区仲町2-5-1浦和ロイヤルパインズホテル
TEL:048-827-1161
地図:http://www.mapion.co.jp/m/35.85754444_139.65572222_10/
営業時間 10〜20時、無休
HP http://www.royalpines.co.jp/urawa/restaurant/rest_guide/lamora/



木のひげ木のひげ
住所:東京都多摩市愛宕4-9-7ハロッズプラザ102
TEL:03-3468-9669
地図:http://www.mapion.co.jp/m/35.66443333_139.68901388_10/
営業時間 10時半〜19時(日は12〜18時)、金休
HP http://www.din.or.jp/~kinohige/



クピドクピド!
住所:東京都世田谷区奥沢3-45-2-1F
TEL:03-5499-1839
地図:http://www.mapion.co.jp/m/35.60027777_139.67702777_10/
営業時間 10時〜商品終了、不定休
HP http://www.cupido.jp/



テラアルティザン・テラ
住所:東京都世田谷区下馬2-44-11
TEL:03-5787-8850
地図:http://www.mapion.co.jp/m/35.6411611_139.68248054_10/
営業時間 10〜20時、不定休
HP http://www.laterre.com/artisan/


アドレス・ラボ comments(0) trackbacks(0)
第3回パンラボ〜パン・ド・カンパーニュ〜の風景
集合第3回パンラボは2009年1月17日発売『パニック7ゴールド 3月号』にて行われた。
テーマはパン・ド・カンパーニュ。

パン屋さんがパン・ド・カンパーニュとして販売しているものから、
なるべくシンプルなタイプを選ぶ。



右上から左へ
ルヴァンのカンパーニュ(1円/1g)
マールツァイトのライ麦カンパーニュ(1260円)
チクテ・ベーカリーのパン・ド・カンパーニュ(720円)
パン処 麻凛堂のカンパーニュ(320円)
アルティザン・テラのカンパーニュ・グリエ(2730円)

真ん中の上
ペストリーショップ「ラ・モーラ」のカンパーニュ(370円)

真ん中の下
木のひげのカンパーニュ(576円/700g)

真ん中の長い
クピド!のカンパーニュ(120円/100g)


切るかいじゅう屋店主の橋本さんは、長袖で頭にタオルを巻くというスタイルだった。
手のひらよりも大きなカンパーニュを切る。


断面切られ並べられたカンパーニュ。
断面からは気泡の多さと色の白さがよく観察できる。


チーズカンパーニュのために選ばれたチーズを切る橋本さん。
それを見つめる山口デザイン事務所の大野さん。

このチーズがあまりに美味しくて、またカンパーニュと合うので、
テイスティングタイムの時間は大人気だった。
柔らかいので、パンに塗ったり、パンとチーズを交互に食べたり。

カンパーニュというと、
見た目はどれも似たような丸く大きく、容量は重たく密度が高く、
食べるとぼそぼそとして喉が渇きそうという勝手なイメージがあった。
しかし今回のパンラボで驚いたのはまず見た目。大きさも形もいろいろあった。
そして味。想像できないほど柔らかく軽くモチモチしたものもあった。

似たような素材を用いて、どうしてこうも様々に異なるのかと不思議で仕方が無かった。【D】
プレイバック・ラボ comments(0) trackbacks(0)
なんちゃってご当地バーガー巡り 群馬県篇
ル・コッペ堂にぜひ行ってみたいのだが、かしわで氏はごまかしてばかりでなかなか場所を教えてくれない。
そこで自作することに。
デパ地下で買ったホテルオークラのロールパン。丸い姿がかわいい。
甘くて歯切れよく、なかなかいい感じ。
なぜだかわからないが、ル・コッペ堂のパンの味はきっとこんなふうではないかと思った。
これを半分に切る。
取り出したる平べったい物体はハンバーグでもメンチカツでもなくコロッケ。
群馬県伊勢崎市に伝わる、神社コロッケという由緒ある一品。
リヤカーを引いて揚げたてコロッケを売り歩く伝説のじさまがいたそうな(市原悦子風)。
やがて歩けなくなったじさまは終焉の地として伊勢崎神社にいついた。
そこでコロッケを売ったので神社コロッケと呼び習わすことになったそうな。
じさまが天国に旅立っても神社コロッケはいろんな人に引き継がれ、いまではスーパーでも売られている。
最初からソースにくぐらせてしっとりしているのが新感覚。カリカリもサックリもなくムチムチ系の食感もユニーク。
ここにキャベツの千切りをのせ、マスタードを塗る。
ソースはコロッケにしみこんだ分だけで十分と思う。
神社コロッケが豪快にはみだす感じで完成。
神社コロッケ単品で食べるときより、パンにはさむとおいしさアップ。
なつかし系のソースの風味のせいか、駄菓子屋っぽい味がした。

架空ご当地バーガーの旅をはじめる。
ただの思いつきなので2回目があるかどうか不明。
三重県いせえびバーガーとか、山形県米沢牛バーガーとか、そんな贅沢はいわない。
大阪串カツバーガーとか、京都餃子の王将バーガーとかなら実現可能だろうか。(ぷ)
パンラボ comments(0) trackbacks(0)
ル・プチメック東京
鳴り物入りでマルイ新宿店に登場した、京都の名店ル・プチメック。
制服や白衣を身に着けた店員さんたちに混じってラフなシャツスタイルの男の人がいて、その人がシェフの西山さんだった。
なぜシェフなのに白衣やコック帽をかぶっていないのか?
ちょっと不思議な気がした。

「東京の子たちは本当にレベルが高い。僕よりよっぽどパン作りうまいですよ」
と関西弁でいうととてもおかしいのだが、文字にすると真面目にいっているように見える。
「僕はパンのことわからないからスタッフに訊いてください」
といってパンのことは教えてくれない。ずっとポスターの話をしていた。
All Aboutに、開店時にポスターが納得いかなくて京都まで取りに帰ったという発言が載っていた。
そのポスターがジャック・タチの『トラフィック」とエリック・ロメールの『パリのランデブー』だったので、ヌーヴェルヴァーグ好きの私はうれしかった。
「フランス映画のポスターを集めるのが好きで、京都の店にも貼ってるんです。ポスター貼るために店を出すようなものですから」

フランスで修行をしていた西山さんはパリの映画ショップでよくポスターを探すそうである。
(ちなみに、いちばんよくいく店がグランブルヴァールにあるCine Docという店で、なんで店の名まで私が知っているかというと、拙著『パリのおさんぽ』に載っているから)
次は『大人はわかってくれない』の白黒のポスターを貼るためにぜひ店を出したいと、これも冗談とも本気ともつかないような感じでいっていた。

最初から最後まで西山さんはパンの話をしていなかったが、パンの話をするよりももっとル・プチメックのパンについて知ることができた気がした。
ル・プチメックのパンはフランスのパンへのオマージュである。
フランスのパンそのものではきっとない。フランスのセンスが好きで仕方ない日本人が作るフランスパンへのオマージュ。

例えば私の大好きなプチメックのパン・オ・ショコラ(写真)だが、このチョコレートの味とこのデニッシュの組み合わせは、「これこれ」といいたくなるような、たまらなくパリを感じさせるものだ。
でもパリのどこかの店と同じであるかといえばそうでもなく、これだけおいしいパン・オ・ショコラのある店を探し出すだけでも苦労するだろう。

思えばヌーヴェルヴァーグというのは金も映画作りの経験もないシネフィル(映画狂い)の若者がハリウッドに憧れて低予算の映画を作ったのがはじまりである。
自分がおもしろいと思う感覚だけで突っ走って、それまでの常識をすべて覆した。
ル・プチメックのパンとフランスのパンの関係は、ヌーヴェルヴァーグと古き良き時代のハリウッド映画との関係に似ているかもしれない。

ヌーヴェルヴァーグが生まれて50年が過ぎたけれど、いまだに誰も追いつけないほど新しい。
ル・プチメックも、あらゆるパン屋が出そろっていると思われた東京においてやっぱり新しかった。パリに出店したとしても、新しいだろう。(ぷ)
パンラボ comments(0) trackbacks(0)
チクテカフェ
チクテカフェでマフィンをどうしても食べてみたかった。
町田にあるチクテベーカリーを以前訪れたとき、レジの後ろ側の棚にたくさんのマフィンの袋が置かれ、それがすべて「予約済」となっていたのである。
チクテベーカリーのマフィンはたいへんに予約困難なものらしい。
それを知るとますます食べたくなったのだった。
チクテベーカリーのマフィンは下北沢のチクテカフェに行くと食べることができる。
表は自動販売機など置かれて普通の喫茶店みたいにしているのだが、中は白いペンキで塗られた手づくり風の感じのいい壁に、コンクリートむき出しの床と、ちょっと昔のごつごつしすぎないアンティークのテーブルなどが置かれた、センスのいい店だった。

写真はランチのセット。
きっととても丁寧に作ったラタトゥイユ。
温度がちょうどよく、ナスでも肉厚なパブリカでも甘さがあって、野菜の刺身とでもいう趣き。

問題のマフィンだけれど、存在感がある。
じっとたたずんでいる。シンプルなのでとても静かな感じがある。
でもものいいたげで、雰囲気を発散している。
そういうところはかいじゅう屋のパンとも相通じるところがある。
チクテベーカリーの北村さんはパン屋になる前は陶芸をしていたとたしかおっしゃっていた。
物体の雰囲気を感じ取る卓越した感覚が北村さんにもかいじゅう屋の橋本さんにもあるのだと思う。

ちょっと大きめで、かなり分厚く、ざらざらしているけれど触れてみたくなるような肌。
かじってみると、かりっ、そしてふわっ。香りがよく、すごく甘い。
マフィンというのはなにか足りない気がしてバターをつけすぎてしまったりするが、このマフィンにはそういう感じがない。
メープルシロップが添えられていたのに、バターだけで甘さが十分で、もったいないことにぜんぜんつけずにぜんぶ食べた。

横の人がグレーのマフィンを食べていた。
全粒粉かライ麦かどっちか入り(あやふやですいません)のものだったが、この色がとてもかっこよくてうらやましかった。

チクテカフェの入口ではマフィンやチクテベーカリーのその他のパンも売られているので、町田までいかなくてすみ便利。(ぷ)
パンラボ comments(0) trackbacks(0)
サンドイッチパーラーまつむら
パーラーとはなにをする場所なのだろうか。
かつてはそれについてしっかりとした認識をもち、ゆらぐことがなかった。
すなわち、パフェを食べ、クリームソーダを飲む場所である。
かき氷はフラッペと呼ばれていたと思う。
かき氷=庶民の食い物、フラッペ=おフランス・上流階級という根拠なき決めつけ。
自分も実は中流階級なのに無理矢理飛び上がって甘味どころを上から目線で睥睨する気合いがそのネーミングセンスからは感じられる。
パフェやフラッペは分厚いガラスのいろんな色のついた器に盛りつけられていたけど、いまは合羽橋でもあんなものはあんまり売ってないと思う。
紺色の制服に白い半円形のエプロンをつけて、頭にも白い頭巾みたいなものをかぶったお姉さんが持ってきた。いまああいう格好の人がいたらメイドカフェの店員さんだと思われるだろう。
洋風といいながら、純日本文化。いま思い返せば、勘違いの上に思い込みを積み重ねたシーラカンスである。
けれども、幼き日の私にとっては、前を通るだけで胸が高鳴り、食品サンプルの入ったガラスケースに思わず張り付いてしまう、あこがれの、めったなことではたどりつくことができない、夢のガンダーラだった。

ところが、ある日、パチンコ屋の看板にパーラー○○という文字を見たときわけがわからなくなった。
パチンコ屋でフルーツパフェは食べられるのか。フルーツパフェが食べられない場所をなぜパーラーと呼ぶのか。
あのふわふわしたモダーンの楽園ガンダーラと、玉を貸し遊戯に興じさせる商売とは、なんの共通点もないではないか。
憤りを覚えつつパチンコ屋の電飾を見つめた私ではあるが、年を経るうちそんなにまでしてパフェを欲する年齢でもなくなり、時代も移り変わってパーラーは巷から消え、いつしか私はパーラーのことをもう考えなくなっていた。

人形町にサンドイッチパーラーまつむらという店がある。
何年ぶりに目にするパーラーだろうか。
しかも前にサンドイッチがついている。
これはぜひともパンラボの研究課題にしなくてはならない。
パンの上にホイップクリームと缶詰のフルーツがどかどかのっているんじゃないかとかいろいろ想像しながら行ってみた。

結論からいうと昔ながらの下町系パン屋である。
ところがそれはそれはたくさんのサンドイッチが売られているようだ。
行ったのに「ようだ」とはあやふやで恐縮だが、昼下がりにたどりついたときはもう大半の商品は売り切れていたのである。
純喫茶風のイートインスペースがある。インベーダーゲームとかあったら似合いそうな。
つまり買ったパンを喫茶店のようなところで食べられるという状態を称してパーラーと言い習わしているのであろう。
パフェは売ってない。にもかかわらず「これはパーラーなり」という納得感はあった。
依然としてパーラーの定義は判然としないままであるが。

ところで、パーラー云々というどうでもいいこだわりをふっとばす奇妙なパンが売られていたのでご報告する。
「仲良しコンビ」。
レジに持っていくとお店の店員さん(下町おばさま)が
「裏に切り込みが入っているので半分に折って食べるんですよ」
と教えてくれた。
ピーナッツクリームとこしあん。
この二人が仲がいいことをはじめて知った。
私だってピーナッツクリームともこしあんともなかなかの友好関係を結んでいると思っていたのだが、二人の友情はもっと深く情熱的だというのである。
裏に切り込みを入れてあると、たいへんきれいに食パンが半分に折れるので感動した。
家でサンドイッチを作るとき折っただけだとでっかくなって食べるのが大変なので今度やってみたい。
2人は本当に仲がいいのか、ちょっとどきどきしながら食べてみた。
味はごまあんに似ていた。でもごまあんだと思って食べると本物のごまあんを食べたほうがいいのではないかと思える。
これは仲がいいのだろうか。
2人は微笑みを顔に貼付けてはいるものの、微妙なすきま風が吹き抜けるようにも感じられる。
しかし、そう思うのは私のひがみであり、このコラボレーションがあまりにヌーヴェルヴァーグすぎて、舌がついていけないせいかもしれない。

パーラーに座ってこれを口に運んでいると、仲良しコンビの売り場の前で足をとめた客がおり、さっきの店員さんが音もなく近づき、
「裏に切り込みが入っているので半分に折って食べるんですよ」
という同じ説明を繰り返していた。
この雰囲気に浸りたいのでまた行ってみよう。(ぷ)
パンラボ comments(2) trackbacks(0)
かいじゅう屋のパン・オ・フリュイ
外水曜日、夕暮れのかいじゅう屋前にて。
どこからかいつの間にかお客さんが集まっているといった様子。


パン17時過ぎ、ショーケースには数種類のパンが並べられている。
本日はかいじゅう屋さんのパン・オ・フリュイ食べたさに、会社を抜け出してやってきました。


ケースおやおや、ぞうりも売られているぞぅ。
パン屋さんにぞうり。こんな光景は初めてですが、妙に納得できる雰囲気があるぞぅ。




ブドウパン2

ぶどうパン 330円。
パン・オ・フリュイなんて言うとちょっと洒落ているけど、要するにレーズンパンとかぶどうパンのこと。
かいじゅう屋さんにはぶどうパン以外に、木の実のパン(350円)もあります。

ぶどうがチョコチョコ見えている部分、これがクープですね。
クープというのはパンをボリューミーに膨らませるための切れ込みのこと。
パンラボの時によーく出てくる用語なので覚えました。

割れ目から垣間見えるぶどうの姿は、なんとも悩ましい。
中はどうなっているのだろう…と想像に想像を重ねつつナイフを入れましょう。
すると「嗚呼!嗚呼!」なんて、声を挙げるほかありません。
もしもそういう姿を人に見せたくない場合は、誰も居ない場所で切れば良いでしょう。

そしておそらく一刻も早く口に入れたいという衝動に駆られますので、
その衝動に抗うことなく「さっ」と口に放り込めば大丈夫です。
かいじゅう屋さんのぶどうパンを未だ食べたことが無くこの文章を読んでいる人が
今まさに想像している通り、口内はぶどうというぶどうがミッチリ満ち満ちおミッちゃん。

その合間合間に柔らかなパンが寄り添います。
柔らかと言っても、やや噛み締める系ですがハードではありません。
また周囲の茶色い部分(皮)が非常に香ばしくパリッパリ。


かいじゅう屋さんは水・金・土曜の夕方16-19時に営業中。
時間や曜日によってラインナップは少々変わるかもしれませんが、
ぜひパン・オ・フリュイもお試しになってみてくださいね!
0911表紙もちろん絶賛発売中の『パニック7ゴールド11月号』でパン・オ・フリュイをご覧になり
ジュルジュルきちゃった方もGOGO!!【D】


 
かいじゅう屋 comments(2) trackbacks(0)
| 1/3 | >>