パンの研究所「パンラボ」。
painlabo.com
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
パンラボ in ソウル リターンズ

1.jpg会社の社員旅行でソウルへ行ってきた!!
(先日の打ち合わせはこのためだったりもして…)

羽田空港にあるCAFE CARDINALでホットドッグ。
こぼれ落ちそうなほどのピクルスで目を覚ます。


7.jpg以前大野さんがパンラボ in ソウルをしてきてくれましたね。
自分も真似して、1日5食くらいのペースで食事の合間に色々食べてみました。

これはファミリーマートにあったペストリー。
チーズクリームとブルーベリージャムが甘い甘い。
しかし辛い食事の後だからか、その甘さが丁度良かった。


8.jpgロッテマートには3個入りバージョンもあった。


4.jpg明洞にあるBreadTalkというパン屋さん。

チェーン店ふうのパン屋さんはいくつも見かけましたが、
個人経営ふうのパン屋さんは見かけなかった。


5.jpgこの店の一番人気商品。

店員さんに上にのっているものは何かと訊いたら、
乾燥させた◎◎◎と言ってました。
pork と聞こえたのですが、食べたらイカっぽい味もしたので色々聞き間違ってそうです。
何だったのかな…。


6.jpgkaya-bun(カヤボン)←カヤボンで合ってる?

1年ほど前の日記で紹介したカヤジャムパンとはまた違う形。
入っているのはカヤジャムのみで、ちぎりパンのような形&食感ふわふわ〜ゆるふあ〜

D「キム・ヨナさんも好きなのですよね?」
店員さん「(満面の笑みで)僕は一度も聞いたことがありませんね」
D「(満面の笑みで)………」


3.jpg三清洞のCAFE 5 CIJUNG (←HPカワユス)

ソウルにも何店かあるみたいですね。
店内はほっこりにもほどがある、ってほどほっこりしてました。


2.jpg頼んでいないのにスコーンが運ばれてきた。(そういう仕組み?)
バターとバナナオレンジジャムとともに。


カフェオレのトレイにのってたカエル。


9.jpgダンキンドーナツは日本にないので一応食べておいた。普通だ。

韓国料理がどれもこれもおいしいので
パンを目的に巡るのは勿体無いかなと思いますが、
おやつ感覚で合間に食べていくと旅の満足度が高まりますね。【D】


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(これ以外に1日3食たべてます)

パン・トリップ comments(0) trackbacks(0)
パンを届ける 第3回
(陸前高田市)

多くのパン屋さんのご協力により、
パンは今回もおひとりおひとりの手に届けられた。

喉が乾き、倒れている人に、両手ですくった泉の水を届けるようなものなのかもしれない。
パンを届けることができるのは、10万人ともいわれる避難者のうち1000人、たった1パーセントの人たち。
しかも、1日3食のうちたった1食にすぎないのだ。
指の間から水はこぼれ落ち、乾いた人の唇に届くときにはもうほとんど残っていないかもしれない。
それでも、この活動をつづける意味があると、手前勝手に思っている。
少しでも、苦境にある方の力になりたい。
それは誰もが思う当然の気持ちだが、もうひとつ私には見届けたいことがある。
パンになにができて、なにができないのか。
いまなお危機にある東北で、それが明らかなるのではないかという思いに急き立てられて。
本来、匿名で行われるべき活動だが、被災された方への失礼を承知で、この場で発表させていただいている。

第3回は、以下のパン屋さんとパンに関連した団体の方々にご提供いただいた。

アンゼリカ
ウッドペッカー
櫛澤電機製作所(パン機械製造)
加藤企画(パンの指導)
グロワール
ケポベーグルズ
サクラベーカリー
三和産業(パン材料)
社会福祉法人「開く会」/共働舎
TAMAYA
ダンディゾン
内籐製あん(あんこ製造)
パネテリアピグロ
パンステージ・プロローグ
ブーランジェリー ボヌール
ブーランジェリー ラ・テール
ポチコロベーグル
ポム ド テール
本牧館
mixture
ムッシュソレイユ/ブーランジェリーカフェ・バンブー
リリエンベルグ(お菓子)
ル クール ピュー
ローゼンボア
(五十音順)

(陸前高田市立第一中学校でカレーパンを揚げるNGBC加盟のパン屋さん、お菓子屋さんたち。左からリリエンベルグ丸山晃一さん、パンの先生である加藤企画加藤晃さん、ローゼンボア高崎健人さん、社会福祉法人「開く会」鈴木正明さん、ブーランジェリー ボヌール箕輪喜彦さん)
私が取材でお世話になった杉並、世田谷のパン屋さんに加えて、特定非営利活動法人NGBC(障害のある方のパン事業を支援する団体)に加盟する神奈川方面のパン屋さん・お菓子屋さんに多くご協力いただき、現地まで車で駆けつけてもいただいた。
画期的だったのは、あたたかいパンを避難者の方々に食べていただきたいという情熱から、ガスボンベとフライヤー(揚げ物を屋外で作る機械)が持ち込まれたこと。
揚げたてのカレーパンが苦境にある人たちの心まであたためてくれたら、と私たちは期待して東北へと向かった。

(右からひとりとばしてリリエンベルグ横溝春雄さん、櫛澤電機製作所 澤畠光弘さん。陸前高田市立第一中学校にて

陸前高田市立第一中学校野球部の部員たち。カレーパンを手渡すと一列に並んで「ありがとうございましたー!」

突然ドアをノックした私たちを
仮設住宅の人たちは笑顔で迎え入れた。

日を追うごとに復興は進んでいる。
街は依然として荒れ果ててはいたが、瓦礫は1ヶ月まえより確実に少なくなっていたのだ。
避難所の人数も前回訪れたときより減少していた。
避難者の人たちの多くが、完成した仮設住宅へ移り住んでいるからだ。

(モビリア仮設住宅にて)

モビリア(オートキャンプ場)でも避難所は解散し、敷地の中にプレハブの仮設住宅が作られていた。
報道によれば、避難所の人たちが仮設住宅への入居を拒否する事態が各地で起きているという。
仮設住宅に入ればもう自立したとみなされ、援助が受けられないからだ。
避難者という立場から自宅を持つ身の上になったからといって一件落着と片付けられるのだろうか。
私たちは仮設住宅を1件1件訪ね、パンを配り歩いた。
「迷惑がられるのではないか」
やってみるまでの心配は、杞憂に終わった。
笑顔で受け取ってくれる人たちが大半だったのである。
「受援力」という言葉があるそうだ。
援助を受け入れる力のことである。
東北の人たちはすばらしい受援力を発揮して、援助者たちを懐深く受け入れてくれている。

「ふかふか、もちもちして、すごくおいしかったパン屋さんが
津波に飲まれてしまいました」

ななこさんもそうしたひとりで、仮設住宅の扉をたたくとすばらしい笑顔を覗かせた。
「パン大好き。
365日パンでもいいぐらい。
陸前高田のパン屋さんは津波でなくなってしまいました。
となりの大船渡に柳屋というパン屋さんがあって、ふかふかして、もちもちして、すごくおいしかったんですけど、津波に飲まれてしまいました。
大船渡にいけば大型店の一角ならパン屋さんがあるんですけど」
ななこさんは目を輝かせておいしかったパンの記憶を語るけれど、いまやそのパン屋はないし、陸前高田ではいまだ焼きたてのパンを買うことができない。

住宅の敷地内には大手のスーパーが仮設で営業していて、袋入りのパンも売っている。
それでもななこさんは、届けたパンをとてもよろこんだ。
「職場が流されて、解雇になっちゃって」
彼女も両親も仕事をなくしている。
幸い彼女だけは新しいアルバイトを見つけることができたが、倹約を強いられることに変わりはない。
1食を支援物資でまかなえることはありがたいという。

両親、祖父母との5人暮らしだが、家にいるのはななこさんひとりだった。
「おじいちゃんとおばあちゃんは、ずっと住んでいたところにもどりたいって、壊れずに残った長屋みたいな倉庫に昼間は戻っちゃうから。
私は仮設住宅が当たってうれしいのですが…」
一家が逃げのびていた倉庫は、浸水し、至るところ痛んでいるが、それでも祖父母にとって仮設住宅よりはいいのだと。
住み慣れた家がないことの混乱、喪失感は想像以上に大きい。

「訴えたいことがあるんです。
地震で家が損壊した人はローンが免除か半減される制度ができるといいますが、なかなか法律が決まらない。
(二重ローン問題に関して、政府は、個人が自己破産しなくても金融機関が債権放棄をしやすくする「私的整理ガイドライン」を策定する予定。)
ローンがないほうが暮らしやすいので両親はそれを利用して、家を取り壊したいと思っている。
おじいちゃんとおばあちゃんは前に住んでいた家を直してもらいたいと思っていて、無償で家を直してもらえる制度を利用したいと思っているんですけど。
家を壊すのか、直すのか、どっちがいいのかわからない。
法律が決まらないかぎり、どうにもならないから。
家のことが心配で仕事を探せない。
瓦礫の中で家を片付けているだけで、なにもできなくて」

「政治が早く決めてくれないとなにもできない」
被災地の悩みはすべてここに行き着く。

政争に明け暮れてばかりで政治はなにも決めてくれない。
…東北で話を聞いていると、悩みはそこに行き着いてしまう。
被災地でパン屋の復興が遅れている理由を岩手県パン工業組合に尋ねたところ、同じ答えだった。
この組合には、給食のパンを供給するパン事業者が加盟している。

「給食のパンを製造するには大型の設備が必要なんですが、都市計画ができないので、すぐに建てられない。
復旧したい意欲は持っているんだけれど。
早く決めてくれないと…」
釜石、宮古、大船渡といった津波の被害があった沿岸部には、パン工業組合のバックアップによって、設備の損壊を逃れた内陸部の工場から給食用のパンをピストン輸送している。
被災地へパンを届ける努力は、私たちの知らないところでいまなおつづけられる。

(パンが配られるのを待つ人びと。米崎小学校仮設住宅にて)

笑顔で手渡すからもらった人も笑顔になる。
相乗効果でパンはさらにおいしく、幸福なものになった。

次の支援場所である米崎小学校に遅れて到着すると、待ちかねた人たちが外にでて私たちを待っていた。
体育館にいる避難者、校庭に建てられた仮設住宅の入居者たちに、パン屋の来訪が知らされていて、それを楽しみにしていてくれたのだ。
この時刻、朝から空を覆っていた雲が裂け、光が差していた。
人びとのあいだには会話があり、笑顔があり、元気にあふれている。
子供たちは遊具のあいだを走りまわり、それが活気を生んで、大人も楽しくなっている。

(パンが配られはじめると行列ができた)

「これを待ってた!
やる気でるなー!」
リリエンベルグのパティシエ、丸山晃一さんが叫んだ。
盛り上がりが盛り上がりを生む相乗効果。
そこにパンとお菓子が介在した。
よろこんでくれる人がいるから、パンを作る側、届ける側も笑顔がでる。
笑顔で配るから受け取る側もおいしく感じられ、ますます笑顔になる。
笑顔と笑顔のあいだにはコミュニケーションが生まれ、心のつながりができる。
パンが人を励ましている実感があった。
「たかが1個のパン」を「されどパン」に変える手がかりを得たような気がした。
このシチュエーションを作りだし、幸福を呼びこみたい。
活気にあふれた空間で、パンのポテンシャルは最大限に引き出されるはずだ。
そのために届ける側がまずできることは、笑い、元気をだすことだ。

(佐藤一男さん)

「一人一役で助け合い、ないないづくしでもなんとかなった。
お祭りをいっしょにやるつながりが、いい結果を生みました」

どうして米崎小学校の人たちはこんなに元気なのか。
自治会長である佐藤一男さんに話をうかがった。
「この避難所には米崎町の人たち200人が避難していました。
以前から顔見知りではあったのですが、つながりが思いっきり広がった。
もともとお祭りのときみんなでいっしょに集まっていたので、横のつながりがあった。
そういうのがいま生きた感じです。
あれがたりない、これがたりないという状況でも、『あの人に頼めばなんとかなる』というのがわかっていたので、ないないづくしのなかでもなんとかなった。
たとえば、まかない場も、サッカーゴールとテント、流木を組み合わせて作った。
かなりの設備ができました(笑)。
避難所の中で『手伝ってもらえませんか?』と訊いたら、手を挙げてくれる人がいたんで。
一人一役みたいな感じでここまできました。
古くからの、お祭りとかのつながりがいい結果を生みつづけてきた」

(食パンを手にして笑顔の人たち)

大災害に直面してひとりひとりが孤立しているのではない。
つながりあい、笑顔を交わしあう中で助け合い、元気を出し合っている。
それが、米崎小学校が明るい理由だと佐藤さんはいう。
これはとても大事な教訓だと思う。
震災以降、「がんばろう日本」のような標語をよく見かけるようになった。
それではきっと言葉が足りない。
もっといいのは、「いっしょにがんばろう」「連帯してがんばろう」ということだ。
私たちが届けたパンでは毎日毎日の空腹を満たすにはもちろん足りないが、笑顔で手渡せば、首都圏の人たちも東北の人たちのことを思っているという連帯のあいさつになる。
それがつながりを作り出し、孤立するよりももっと大きな力を生むかもしれない。


瓦礫の中から見つかった獅子舞、虎舞。
にぎやかな祭り囃子が復興を告げるのか。

佐藤さんの名刺には「漁民」と書かれていた。
米崎町はりんご栽培と養殖漁業の町で、佐藤さんは牡蠣を生産している。
「地震が3月の仕込みの時期を直撃しました。
防波堤も、作業場も、牡蠣を養殖するイカダも壊れ、船も流されました。
瓦礫の中からイカダを拾って、松島(宮城県)から持ってきた種をつけて、なんとか例年の2割仕込みましたが、3割とれないと採算が合わないので、今年は赤字。
でも、来年は5割、その翌年は…と階段上がるつもりでやってます。
積み重ねるのが大事なので。
でも、安全ライン(海からどれぐらい離れたところに建築物を建てていいかの指針)が見えてこないので、作業場が建てられない。
衛生上、青空の下で牡蠣の殻を剥くわけにはいきませんし」
ここでもまた政治の動きの鈍さが復興への足かせになっている。
しかし、それを嘆いているより、佐藤さんは自分にできることをして、一段一段復興への階段を上がっている。

(カレーパンの実演に人垣ができる)

佐藤さんの表情が明るくなったのは、例年10月に行われる祭りの話題になったときだ。
「声かければみんなやるとは思いますが、『みんなたいへんなんでしょ』(だからやめといたほうがいいのでは)という雰囲気もあって。
私は、多少端折ったとしてもやるべきだと思うのですが。
このお祭りは、浜の大きな広場で集落ごとの踊りを披露するのが大きな流れになっていて。
道中おどりとか、獅子舞とか。
そういえばこの前、瓦礫の撤去が進んだら、獅子舞、虎舞のセットがぜんぶ見つかって。
(お祭りをやったほうがいいということなんじゃないかと尋ねると)そうなんですよ!
お祭りの役員が集まって話をしたそうなんで、今年も行われることを期待してます」
瓦礫の中から無事に発見された獅子舞、虎舞が暴れまわる姿をぜひ見てみたい。
お祭りが絆を再確認させ、それをパンがお手伝いできればもっとうれしい、と私は思った。


避難所の解散パーティーのはじまりとまったく同時刻に
パンを満載した箱が届いた偶然。

夕刻、同行したパン屋さん・お菓子屋さんと別れたあと、ひとりで自然休養村避難所に向かった。
山の上にある小さな避難所。
ここに大阪のパン屋さんからパンが届くことになっていたからだ。

前回、記事を見たグロワールの一楽さんがtwitterでメッセージをくれた。
「また第3弾がありそうなら大阪のこの小さいパン屋からでも何か」
なんの面識もないパン屋さんが自ら援助を申し出てくれたのだ。
同じお気持ちをお持ちのパン屋さんはたくさんいるにちがいないが、遠隔地では私が取りにうかがうことができない。
それで宅急便で送っていただくことを思いついた。
大阪からは午前中に発送すれば翌日の夜に陸前高田に届けることができる。
1軒1軒のパン屋さんに直接お送りいただければ、もっと支援の輪を広げることができる。
そのさきがけになればと思い、グロワールにお願いすると、快諾してくれた。
「避難所の方によろこんでいただけるのはどういうパンなのだろう」
一楽さんはいろいろ悩んだ末、いかだ型の容器にさまざまなパンをのせたものを避難所の人数分送ってくれたのである。

(自然休養村避難所)

丘の上に着くと、薄暮に包まれた建物の窓から明かりとにぎわいが漏れだしていた。
広間にたくさんの人たちが集まり、宴会が行われていたのだ。
避難所の代表、菊池清子さんはいう。
「おかげさまで、全員仮設住宅に入ることが決まりまして、今日でこの避難所も解散することになりました。
私たち勝木田集落の者は、和野自治会のみなさんにお世話になっていました(自然休養村避難所は和野集落にある)。
和野のみなさんに支えていただいたことを感謝して、『いっしょにはげます会』を6時から開くことになっていたのですが、その6時ぴったりにパンが届きまして」

なんという偶然だろう。
避難所の解散を記念して行われるパーティーの開始と同時刻にパンが届くとは。
しかも、一楽さんからお送りいただいたパンの盛り合わせはパーティにぴったりなのだった。
「びっくりしました。
パンが届くのは知っていたので、みんなでパンパーティやろうといっていたのですが。
わかっててこしらえていただいたのかなと思うぐらい」
思いの力はときに驚くべき偶然をもたらす。
避難者の方が復興への一歩を踏み出す、もっとも大切な日にパンが居合わせたことがとにかくうれしかった。


「1個のおにぎりを分け合って食べることもありました。
なにかあったら自分も人の役に立ちたいと思いました」

「勝木田、和野の集落は、秋葉神社の氏子ということでお祭りはいっしょにやるけれど、あいさつするぐらい。
絆、親睦を深めることはありませんでした。
それが、支えること、支えられることによって勇気をもらって。
この会館を提供してくれることもありがたかったですし、炊き出しのボランティアがきたら焼き肉やラーメンをいっしょにごちそうになり、釜やガスの提供、野菜運んでもらったり、お水運んでくれたり、お世話になりました」

津波は残酷である。
単なる地形と標高のちがいが隣り合った人びとを天国と地獄にわける。
それでも、隣人の不幸を自分のこととして思いやる想像力とやさしさ、受け取る側の感謝の気持ちが、他人同士を深い絆で結びつけた。

「たいへんな時期には、人って見えてくるものだと思いました。
1個のおにぎりを分け合って食べることもありました。
自分の分は少々減らしても、分けてあげる思いやり。
震災まではとおりいっぺんのあいさつしかしてなかったので、その人のやさしさに気づかなかった。
同じ避難所に住んで、やさしい人だったんだなって、ぬくもりをあらためて感じて。
なにかあったら自分も人の役に立てるようになりたいと思いました。
そのためには仮設に入って、早く一歩を踏み出したい。
独立して暮らせるようになって誰かのために役立ちたいってみんなで話しました。
そういう気持ちがあるから、前向きでいられる。
いま避難所のパーティという感じではない、明るさがあるのもそのためではないかと思います」

津波の大きな被害にあった勝木田集落にあって、菊池さん自身は、津波で家を失うことはなかった。
「うちの敷地が50〜80センチだけ高いところにあって。
家が残ったんだけど、隣の人に申し訳ない。
だから、『うち』って言葉をいえないんです。
『うちに戻る』っていったら、孫が『ばば、うちっていわないで。それはいわないことになってたよね。「下に戻る」っていって』。
自分の家が流れていくのを見た方、うしろを振り返ったら家が流されてた方がこの避難所にはいます。
命、生かされてたの、ありがたいことだなと思います」

(中央・菊池清子さん、右が和野集落の方)

和野集落の人がやってきて菊池さんと言葉を交わす。
「仮設にいっても、もっかいけんかすっぺな」
「けんかもしたけど、つながりがあった。
みんな仲間。
この絆を離さないように、やってくべ」

(池田浩明)

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ムーミン ベーカリー&カフェ(後楽園)
73軒目(東京の200軒を巡る冒険)

知られざるフィンランドのパン文化を教えてくれる貴重な店。
キャラクター優先という先入観で見ると真価を見誤る。
ベーカリープロデューサーを務めるのは、あのオーバカナルで辣腕を振るった、池田裕之氏。
福岡から定期的に訪れ、味のチェックは怠りない。

フィンランドのパンの特徴について、池田さんはこう語る。
「ライ麦を使っているという点はドイツのパンに通じていますが、それともちがう。
パンに甘さがある。
フィンランドでは糖蜜を使ってパンを作ります。
むしろ、ドイツ人は甘さを食事パンとして受け入れません。
かつて支配されていた、ロシアの影響があるのではないでしょうか。
北欧各国を旅行した日本人観光客で、パンがいちばんおいしいのはフィンランドだったと言う話を聞いたことがあります。
食パンでも砂糖が入っていて、単体で完結している」

スニフの黒パン(1/2 290円)。
糖蜜の甘さ、ライ麦の甘さ、よく焼けた生地の表面の甘さが響き合う。
しっとりした粘りのある生地に、すーっと歯が通っていく感覚の心地よさ。
生地のねっとり感が、舌に絡みつくように感じられる甘さとシンクロする。
細かい部分に分かれながら溶ける感覚はライ麦独特のもので、それがすーっと溶けていく。

スニフの黒パンサンド(380円)。
クリームチーズ&サーモンと、パストラミポークの2種。
甘い食事パンはおかずと出会ってさらに魅力を増す。
特に黒パンとクリームチーズの相性が印象的。
チーズが生地の甘さをさらにまったりとした甘美なものに変える。
濃く深い甘さはサーモンから臭みを消し、魚のうまみだけを引きだしてもいる。
ライ麦の香りはハムのスモーク感とも響き合う。

プロデューサーに就任した池田さんは2度現地を訪れて食文化を調査している。
「ヘルシンキには白い小麦のパンがありますが、それよりもっと北の、北極圏に属するラップランドでは、昔は白い粉(小麦粉)は手に入らなかったでしょう。
だから、ライ麦を使った重たいパンが多い。
四季のはっきりしている日本人から見ると、一見、貧しい食事をしているように思いますが、それは大まちがいでした。
フィンランドには旬の異なる30種類のじゃがいもがあって、彼らなりに季節を楽しんでいます。
クラウドベリーなどのベリーを摘むのも楽しみのひとつで、人の家になっているものもとっていいらしい。
夏にはザリガニを食べて、ウオッカを飲んで、長い昼を楽しみます」

体をあたためる効果があるスパイス、シナモンとカルダモンは、フィンランド人にとってなじみ深い、クリスマスの味である。
「シナモンやカルダモンを赤すぐりといっしょに煮込んだグロッギは、体をあたためるための一種のホットドリンクで、この香りがカフェから漂うようになると、クリスマスがきたなと思う。
子供はそのまま、大人は赤ワインやウオッカを足して飲みます。
日本人が寒くなると甘酒を飲むのと同じように、フィンランド人のおいしさの感覚に染みついていて、体が要求している。
映画『かもめ食堂』の、シナモンロールの匂いを嗅いでフィンランド人のおばさんがはじめて店にやってくるシーンは、まさにそのことを象徴していると思います」

「プッラ(菓子パン生地)はフィンランド人の朝ごはんで、シナモンとカルダモンの入ったプッラ(シナモンロール)を食べて、仕事へ出かけていきます」
慌ただしい朝、コーヒーで流しこむシナモン味のプッラは、フランス人にとってのクロワッサンのようなものなのだろう。

シナモンプッラ(170円)は池田さんにとって思い入れ深いパンで、ジンジャーを入れたのは、フィンランドの味を日本人においしく食べてもらうためのアレンジだ。
「カルダモンだけだとじーんとして、ストレートすぎる。
ダイレクトに伝わりすぎないよう、隠し味としてジンジャーを入れてみました」
私はこの話を聞くまで、フィンランドのシナモンロールにも、ジンジャーが入っていると思っていた。
それほど違和感がない。
甘いパンから、しょうがの風味がすることは、ペストリーを実に素朴な味わいにしていて、その風味が、食材が豊富でないはずの北の風土に思いを致させるのだ。
カルダモンのすっとする感じが、ジンジャーやシナモンの中にあるほのかな甘さとコントラストを作り出し、噛むごとにエッジを明確にしていく。
プッラ生地は、ブリオッシュに似ているけれど、ふわっとしていながら、もっちりと、やや噛みきれない感じが不思議で、独特。

池田さんは2度目にフィンランドに行く際、完成させたプッラの試作品を、ヘルシンキの老舗エグバーグに持っていった。
池田さんにフィンランドのパンについて助言をくれた工場長は、
「これならプッラと呼んでもいいと思うよ」
とお墨つきを与えたという。

「エグバーグは創業して200年の老舗で、情熱的な姿勢や、やっている内容に、同じパン屋として共感するところがありました。
オーナーには本をもらったり、調理場を見せてもらったり、いろいろやさしくしてもらった。
エグバーグさんのレシピを教えて、じゃなく、あくまでお店が気に入ったので、伝統的なパンや、地方独特のパンを教えてほしいと。
そのお店のスペシャリテを勝手に盗んで売ってしまうようなやり方ではありません。
フィンランドのパンをパン屋が本格的にやるのは、日本ではほとんどなかった。
パン屋には伝統パンを伝承していく使命がある」

フィンランドのパンが、その紹介者として池田さんと出会ったのは幸福なことだった、と思う。(池田浩明)


東京メトロ南北線・丸ノ内線 後楽園駅
03-5842-6300
ベーカリーコーナー:8:00〜22:00(通年)
カフェコーナー:8:00〜22:30(L.O. 22:00)[日・祝は〜22:00(L.O. 21:30)]

不定休
(C)Moomin Characters TM

#073

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200(東京メトロ丸ノ内線) comments(0) trackbacks(0)
ハッチでもアンチ


  かしわでさんにもらったハッチ。みつばちハッチではなくて、蜂蜜+チーズのホトックのことです。 実は今、ソウルにいます!(キタコレ!) 台風の影響があるので無事着いてることを祈ります…。羽田空港なう【D】
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ミルクロール(新中野)
72軒目(東京の200軒を巡る冒険)

パン屋の方向性は出尽くした、といわれる。
私たちにはVIRONがあり、ベッカライ・ブロートハイムがあり、フランス以外の名だたるパン文化を持つ国のパンも、秀逸な職人たちによってすでに焼かれている。
それでも、私たちは新しいパン屋を待っている。
そのためにパン屋を巡る。
ときに、開店して15年が経つ店に、パンの未来を見ることもある。

ミルクロールのコンセプトを「ブレッド・コープ」と名づけたい。
やや甘めの、やわらかい生地。
これをあらゆる具材に流用する。
デザインはすべてほぼ同じ、手のひらに収まるほどの丸形にワンポイント、具材のはみだしや、アーモンドスライスやレーズンのトッピングなどでかろうじて識別できる。
同じ丸い形で並んだクリーム色の菓子パンたちの、シンプルなうつくしさ。
作業性を極限まで高め、安く、より多く消費者に提供するための方法が、ミニマムな美を作りだす。

例えば、ブリオッシュ生地にはさまざまな具材が入れられ、菓子パンのヴァリエーションを作りだす。
クリームパン、あんぱん、レーズン、チョコレート、メロンパン…。
人にとってもっとも幸せな甘さ、やわらかさに案配されたブリオッシュ生地はどの具材と組み合わせても、滲みわたるおいしさを見せる。
ひとつの生地がさまざまな具材と出会っているからこそ、逆にそれぞれの素材の味わい、生地とのマリアージュの個性が際立つように思われる。

クリームチーズ(55円)。
ブリオッシュ生地の類い稀なしっとり感が、やさしく舌を撫で、ほんわかと甘さを滲ませるけれど、それはあくまでまったりとした強さにとどまる。
甘さの口溶けが、私たちに備わった糖分の吸収速度とシンクロするようで、だから心地よく感じられる。
やがて、舌にねっとりしようとするその手前、計ったようなタイミングですっと溶けきる。
ブリオッシュとレーズン、クリームチーズの三すくみ的な、完全なるマリアージュ。
ブリオッシュのおだやかな甘さは、ミルク風味でつながりながら、クリームチーズのおだやかな酸味と相補的に響き合う。
甘さと酸味の両方を持ち合わせたレーズンは、アクセントとなって、ひときわ鮮やかに両者を浮かびあがらせる。

焼いた端からパンがなくなる。
お客はみんなビニール袋がいっぱいに膨らむほど買っていく。
いま買わなくてはもういつ出会えるかわからない。
そんな決意を秘めて行列を作っているように見える。

ミルクロール(35円)。
この安さで、ロールパンがある朝食の幸福感はまったく裏切られない。
ほんのりしたミルク味と甘さ。
それが一日のはじまりを持ち上げてくれる。
中身が詰まり、かつやわらかい。
ごくほんのりとした甘さでも、このようにスムーズに溶けつづけて、溶けきるまで衰えることがなければ、それで十分なのだった。
ロールしていない、丸めてちょんと置かれた形。
その慎ましさ、ほんのりとした黄色のグラデーションも、幸福な気分にさせる。

安いから売れる。
売り切れるから欲望をあおられ、何個も買いたくなる。
欲しいパンを好きなだけ買うことができる。
それだけではない。
どのパンもふわふわでほのかに甘く、とてもやさしいことが、渇望を起こさせる。

飛ぶように売れるパンを切らさぬよう、店長がたったひとり、超高速でパンを作りつづける。
列をなすお客たちのために、人の手が動く限界の速度で。
まるでビデオの早送りのようなので、目の前にいる実物を一瞬ヴァーチャルと錯覚するほど。
店長は速度を少しも緩めず私の質問に答える。

「とにかく早く作らなきゃいけない。
だから手間がかかるものはやってません。
カレーパンのようなものは手間がかかりますから。
簡単なものだけでやってます。
なるべく安くしてたくさん売る。
ロールパンは手間がかからないんですが、菓子パンは手間がかかる。
手間かけて安く、というパンも最近は多くなってきました。
クリームも自家製ですし。
最初はロールパンがよく売れてたんですが、菓子パンのようなものをお客さんが求めるので」

「早すぎて雑なんじゃないかというお客さんがいますが、最低限でやっています」
と店長は苦笑するけれど、私には逆に見える。
ミルクロールのパンはうつくしい。
人目を惹くためではなく、より速く、より多くを目的として作られるがゆえに。
クリーム色の菓子パンたちの同じ丸い形。
人の手のひらが、もっとも合理的にすばやく作りだせる形なのだろう。

山形キングスブレッド(210円)。
さくさくとした耳、やさしい発酵の香り、やわらかい甘さ。
いくつもの美点が、一口食べただけで頭の中に渦巻く。
ぷるんとたわんで、ぷりんと歯切れる。
生地は噛むたびに口の中で丸まっていき、味わいの一瞬の凪ぎのあと、口の奥をミルクのやさしい甘さが満たす。
甘さがリーン、という矛盾した表現をあえて使う。

ブリオッシュ同様、紅茶フレンチトーストのような食パンから派生したパンも、まるでそのために作られた生地のように、魔法のようなおいしさがある。(池田浩明)


ミルクロール
丸の内線 新中野駅
03-3381-5541
11:00〜19:00
日祝休み

#072

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ボンジュール・ボン(中野)
71軒目(東京の200軒を巡る冒険)

目がちかちかするような、カラー舗装と、看板の重なりと、人ごみにまぎれて,
商店街の風景に溶けこんでいるために、ひょっとしたらスルーしてしまうかもしれない。
魔窟ブロードウェイへとつづく中野サンモール。
にぎにぎしい商店街はパン屋の陳列棚にさえひきつづいていく。
林立するポップと、形と色つやでおいしそうでしょうとそれぞれ懸命の訴えを行うパンたち。
どれもこれも、いかにもふわふわそうだったり、いかにも新趣向だったり、いかにも甘そうだったりで、食欲へとストレートに響いてくる。

腰の曲がったおばあさん、背広姿のサラリーマン、学生。
老若男女で店はあふれている。
「ハード系」などという言葉を日常使う人たちではないだろう。
ある人には100点だが、ある人には0点、という職人気質の堅いパンでは、この商店街で商売は成り立たない。
あらゆる人にとって80点以上、プラス具材や味付けや新しさで100点オーバーを目指す。

桃井直也店長はいう。
「極力できたてをだすようにしています。
こまめに焼くように。
商店街の店なので流動客が多い。
衝動買いしてもらえるような、菓子パンや惣菜パンが多くなってしまいますね。
特に菓子パンはコンビニもレベルが上がってますし、負けないように、クリームパンやあんぱんはできるだけやわらかいものを心がけています」

メープルメロン(157円)。
この店1番の人気商品。
1日に10回も焼きあげるので、いつでも焼きたてが食べらる。
「ふわふわのビスケット」というありえないものを想像してしまうほど、パンとビス生地に一体感がある。
卵やバターの風味と渾然一体となって、メープルの甘さはふわっとやさしく溶けだす。
これだけ軽いのだから水分は少ないはずなのに、ほのあたたかさとも相まって、なめらかでやわらかく感じられる。
あんこの部分の、さらっと軽いメープルクリームがさらなるしっとり感と甘さの変化を与える。

コロッケパン(126円)。
柔軟この上ない生地。
昼時には次々とこれが売れていく。
ボリュームを感じさせながらも、もちもちで、くにゅっとして、のれんに腕押し的に形を変えていく。
辛めのソースと、牛肉味のしっかりしたコロッケが食欲をそそる。
でもそれは、パン生地の中野、無駄のないほんのわずかな甘さと、ミルクのまったりした味わい、なめらかな口溶けがあって、おいしく感じられるのだと思う。

インパクトの強いパンに見えて、実は生地も具材もあっさり食べやすいものが多い。
いちばん健康な人ではなく、いちばん刺激に弱い人に焦点をあてている。
「バターロールなんかでもさっぱり味を心がけています。
赤ちゃんのために買いにくる人がいて。
バターの風味がしつこいのではなく、リーンに近い。
そして、やわらかく」

「本当は雑誌にのってる名店のような本格的なパンを作りたい。
でもそっちのほうにはいかずに、より多くの方に受けいれてもらえるようなパンを毎日作っています」

私は「雑誌にのってる名店」にもよく足を運ぶ。
でも、日常のパン屋で日常のためのパンに出会ったときの感動は、ひとしおのものだ。
より印象的な味わいを作り出す競争を強いられている「名店」にはない、やさしく素直な味わいや、食べやすさ、満腹感がそこにはあるからだ。

りんごとクルミのパン(1/2 226円)。
バタールの中にりんごとクルミを甘く煮たものが入っている。
普通はもっと小さいポーションで作るのではないか。
そして、生地も、菓子パン生地であったり、白パン生地であったり。
でもこれは、粉と塩と水だけのフランスパン生地。
コンポートとの組み合わせがお互いをお互いに活かしている。
皮がほどよい香ばしさを放ち、肉厚の中身は素直でおっとりしたさらさらの小麦味。
りんごのさくさくとクルミのこりこりがたっぷりと、ほのかな甘さがフランスパン生地に対してちょうどいい。
パンの塩味が甘さをくっきりとさせ、具材の甘さが生地を引き立てるのでおっとり味で十分。
なによりうれしいのは、お腹いっぱいになるまで食べられるし、家族でも分けあえる、バタールのサイズであること。
かっこうをつけずただよろこばれることを目指したパンだと思った。(池田浩明)


JR中央線 中野駅
03-5345-6260
8:00〜21:30(日祝は〜21:00)

#071

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モーニング聖地巡礼
イスラム教徒が一生に一度はメッカで祈ることを希うように、
『耳すま』ファンが聖蹟桜ヶ丘で物思いに耽れば胸を抜ける風が爽やかであるように、
世の中には超早起きをしてでも食べたい朝食があるという。(唐突)

A: …どうせブルータスの朝食特集かなんかに触発されたんでしょ? これだからミーハーちゃんは…
B: ち、ちげーし! それ見る前から予約してたし! 汗
A: ニヤニヤ(動揺しとるぞお、ミーハーちゃんはすぐ雑誌に載ってた店に行こうとするからなあ)
B: うぐ…(いや、たしかに、あの特集号は隅から隅まで読みましたよ…) 


パンの聖地とも云われるZopfへ行ってきた!!

初めて訪れた時、北小金駅から一緒のバスに乗った女性の方々がスーツケースを持って
お店へ向かう姿を目の当たりにし「聖地…」と感じたことを思い出します。(ぽわわわ〜ん)


モーニングメニューでさんざん迷って、"しっかり朝食"に。 
卵のプレート料理、パンの盛り合わせ、スープ、飲み物がついて950円! どや!

なかなか来られない場所なので、同行者とともにFixing(ペースト・ジャム)をプラスしてみる。
同行者が頼んだアンチョビのペーストおいしかった。

1枚目の写真がパンの盛り合わせですが、とにかく盛ってます。盛り盛りです。
割合にソフトなパンが何種類も食べられるので飽きずに楽しめました。
しかも食べきれない場合に持ち帰る用の袋が事前に渡されるので無理なく食べられるのダッ!
さすがです。

エビとオリーブのオムレツ。

2時間ほどかけてあれこれと他愛ないおしゃべりをしながら朝食を摂ること自体
自分にとってはあまりにもスペシャルなことなので満足しないわけがない。
都内でも朝食が食べられるパン屋さんがありますが、
その先駆け的存在を巡礼できたことによる安心感で満足度はより一層高まるのだった。
次回は朝10時からのプレートメニューもいいな。【D】


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(エクスパンシー!)

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カフェ トホ(笹塚)
70軒目(東京の200軒を巡る冒険)

パンを売る店だとわからず、はじめは通り過ぎそうになった。
小鳥と虹が書かれたシャッターの上に、螺旋階段で地上とつながった空中カフェがあるのを見て、まるで鳥の巣のようだと思った。

パンを買いにいくと、ご主人の東條吉和さんが説明してくれる。
「酵母を愛情を込めて育てようと思って五十音順にみんな名前をつけてまして。
青木さん、イボンヌさん、卯ーさん、エノモトエミリさん、小野田さん…」
一生懸命さに、やさしい人柄を感じて、思わず笑った。
それが糸口になり、開店までの長い長い人生ストーリーを聞き入り、思わぬ長居になった。

トロンボーン奏者の東條さん、ニッティング・アーティストである奥さんのモニカさん。
結婚前、2人が住んでいた風呂なしアパートは、料理とコーヒーがおいしいことが評判になって来客が絶えなかった。
その頃、モニカさんのお父さんが難病にかかり、介護をしながら仕事をするため、家の隣の古い倉庫を改造してカフェを開くことに。
お父さんはロシア文学者で倉庫にはたくさんの蔵書が眠っていたためにブックカフェに。
と思いきや、上京する前、パン屋でバイトをしたとき抱いた夢を東條さんが思いだし、手作りパンのカフェに。
モニカさんが「私、ボルシチ作れるよ」と、お母さんが何度も何度も作ってくれたボルシチとパンをスペシャリテに。
店ができあがるのと同時に出産、そこの助産師さんがたまたま元パン屋さんで、「酵母菌はかわいいのよ。子育てといっしょよ」といわれ、イーストをやめ天然酵母のパンへ。

自然に寄り集まってくる偶然の連続を編み上げてカフェはできあがっている。
私は話を聞きながら、いつか博物館で見たことのある、ワイアー製のハンガーでできた鳥の巣を思いだしていた。
鳥は手近にあるものならなんでもくちばしにくわえて木の上に運び、組み合わせて、巣を作る。

ご夫婦のお話を聞いていくと、偶然はきりなく積みあがっていく。
若き日の東條さんは、行く末に悩み、一人旅にでた先のニューヨークで出会ったトロンボーンが音楽人生を変えたのも偶然。
東條さんの活動の導き手であったレゲエミュージシャンP.JがCHARAと共演したことから、アルバムジャケットの衣装をモニカさんは頼まれ、『JUNIOR SWEET』は大ヒットし、ニットドレスはCHARAその人を表すアイコンのようになったこと。
たくさんの人びととのたくさんの出会い。
それを織り込んでできあがった2人の人生は、あのニットドレスがたくさんの色の毛糸やうつくしい石を編みあわせてできあがっていることを思い起こさせる。

東條さんはいう。
「1個1個、偶然が重なってきちゃう。
『2人の性分だから、受け入れるしかないね』と話しています」

鳥の巣はひなを育てる場所である。
2人はこのカフェで酵母を育て、子供を育てる。
4歳のとき娘の桃花ちゃんは「パンを作りたい」と突然いいだし、保育園になっていた夏みかんから桃花ちゃん自身が酵母を起こし、自分で「オツキサマ」と名づけた。
その酵母には他の酵母にはないモチモチした食感があり、食パンを作ることに。
桃花ちゃんの大好きな栗の花のはちみつを使い、桃花ちゃん自身が生地をこねることもある。
桃花ちゃんのための、桃花ちゃんによる食パン。

東條さんの名刺の肩書きは「酵母菌飼育係」。
「なんでも観察をするのが好きで」とモニカさんは酵母菌観察係。
手に常在菌がいるので、東條さん以外決してパンには触らない。
すべて手ごねなので少量しか作れない。
「酵母によって個性はちがいます。
つなぎつづけても特徴は残るものですね」
と五十音順に新しい酵母が誕生するたびに、特徴に合わせたパンができあがる。
パン種に使う小麦粉も東條さんの出身地、群馬県で生産される農林61号を使用。
頭の中のイメージにあわせて製法を考えるのではなく、偶然まかせのその先におのずとパンは生まれる。

こんなにも偶然にゆだねられた、パンが、人生がある。
いや、誰しも、どれだけがんばったところで、与えられた偶然と偶然ををくっつけつづけるしか、生きる術はないのかもしれない。
店をでて、そう考えながら降りていく螺旋階段さえ、東條さんの実家の鉄工所でお父さんと弟が作ったのを運んできて、くっつけたものだった。
「実家が螺旋階段で有名らしくて。
僕も知らなかったんですけど」

バナナブレッド(250円)。
普段は夏みかん酵母で作られるが、この日は柿酵母のコイケさん2号で。
目は詰まっているのに、空気をはらんだようにぷわーんとやわらかい。
バナナの甘酸っぱさ、まったりな甘さが、小麦や酵母の味わいと重なって、微妙な変化がもたらされる。
ゆっくり、ふにゃふにゃと生地がとろけいくので、本物のバナナがとけていく様子が目の前に浮かぶ。

ライ麦7(230円)。
しっとりして、やわらかい。
はっかのようなすっとする香りが発酵の香りと入り混じって心地いい。
なめらかに感じられた表面が、とけるとともにつぶつぶに分解していく。
7とはライ麦7割、小麦粉3割の意味。
サワー種ではなく、パン酵母で作るのはこれが限界とのこと。
ライ麦パンにサワー種を使わない偶然性も、おもしろい口溶けにつながっているのかもしれない(池田浩明)。

京王線 笹塚駅
03-3370-7700
12:00〜20:00(月曜は〜15:00)
火・水・木曜休み

#070


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粉花パン教室受講ノート
ボウルの中の生地を見たときや、成形されたまんまるな生地を見たときにも、
「かわいい」
と藤岡真由美さんはいう。
パン教室の受講者に教える立場ではあっても、生地を見るたびごとに、パンを愛らしいと思う気持ちが思わず湧きあがる、というように。
「パン1個1個の表情を見る」
とも藤岡さんはいう。
表情を見るとき、漠然とただのパンと眺めていたものが、いま自分の目の前で息づく「このパン」として見えてくる。
なめらかだったり、粒だっていたり、かすかにふるえていたり、という微妙な感触まで立ち上がってくるような見え方をする。
それがパンを作る人の目かもしれないと思った。

ふたつきのガラス瓶の中でふつふつと泡立つ酵母液(レーズンを水に漬け1週間程度置いたもの)を取り出して、受講者にひとさじずつすすめたあと、藤岡真由美さんは自分でも舐めて、
「おいしい」といった。
「酵母がレーズンの糖分を食べ、息をしてできた泡なんです。
アルコール発酵をしているからワインと同じなんですよ」
黄色く濁った妖しい液体は意外にも本当においしい。
ぶどうの香りを含み、うす甘く微妙な変化をして、鼻へ抜けていく。
その風味は、本当のワイン以上にリアルで、野生である。
ボウルに移して小麦粉と混ぜ合わせると、舐めたときとはまた微妙に異なって、さらにふくよかな香りになる。
このパンはきっとおいしくなる、そう予感することができた。

手に取った生地は指に粘り着いて、すぐどうにもならなくなる。
思い通りにいかないことのおもしろさ。
自分の不器用さに途方に暮れていると、
「できてきた」
と藤岡さんが励ましてくれる。
生地はじょじょになめらかにまとまりはじめ、弾力を持つ。
吸い付き、力を加えると手のひらを押し返し、勝手に跳ねまわる。
ぬくもりさえ持った生地はまるで生き物だった。
酵母液の中の無数の酵母たちが小麦粉のひとつぶひとつぶに浸透し、行き渡った結果が、生命をはらんだというように。

「100まで数えながら捏ねてください」
と藤岡真由美さんはいう。
無心になるために。
いらいらしながら作るとパンに気持ちが出る、とよくいわれる。
それだけではなく、愛情をこめようという気持ちまで、藤岡さんは慎んでいる。
「ニュートラルなのがいいと思います」
いい素材と素材を組み合わせて作っているのだからおいしいパンができる。
あとは酵母たちの力を信じるだけでいいのだと。

数時間発酵をとったボウルの中の生地は見事に膨らんでいた。
手に取ったパン1個分の生地は空気をはらみ、ちょっと力を入れると押しつぶしてしまいそうで、その危うさ、かよわさは、赤ちゃんを抱き上げたときに似ている。
手のひらで転がすところんと丸くなり、しわの寄っていた肌はつるんとなめらかになり、成形が完成する。
できあがった生地のうつくしさを損ねないよう着地させたいと、手に持ったままあたふたしていると、手回しよくオーブンペーパーを敷いてくれた場所を、妹の藤岡恵さんが指し示す。
恵さんは黒衣のように目立たなく振舞いながら、タイミングよくいろいろなものを用意してくれるのだ。

1分前にオーブンの前に集まり、焼き上がるのをみんなで待つ。
生地が膨れ、持ち上がっているのをガラス越しに見たとき、以前、被災地に持っていくパンを真由美さんが私に手渡しながらいった言葉を思いだした。
「パンががんばってくれました」
オーブンの中のパンを言葉にださず応援していた。
がんばれ、がんばれと。
パンをかわいい、愛おしいと思う気持ちが私にも芽生えていた。

焼きたてをいただいた。
味わい深いといってもいいし、すっきりしているといってもいい。
存在感があるといってもいいし、ふわふわ浮かび上がるようだといってもいい。
つまり、ニュートラルだった。
「ぶどうの木にぶどうがなるように、りんごの木にりんごがなるように、なったパン」
と、ある人にいわれたのを藤岡さんはずっと記憶している。
木は自分で果実を実らせようとするのではなく、「自然に」なる。
それと同じ、ごく自然においしいパンなのだと。
粉花のパンについてこれほどうまくいいあてる言葉を、私は思いつかない。

パン作りは実にあっけなかった。
自分がおいしいものを作ったという記憶はない。
ただオーブンからパンがでてきて、それがおいしかった、というにすぎない。
なんと単純なことだろう。
単純であるがゆえに、奇跡のように思われた。
この奇跡が日々何十億回起こらなければ、地球上の人びとのお腹が満たされることはない。
なんとありふれた奇跡。
大事なことはいつも目の前にあり、それに気づくとき、愛おしい気持ちが心を満たす。
粉花のパン教室が教えてくれたのはそのことだった。

(池田浩明)



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パンの漫画11 『VIRONで朝食2』

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パンの漫画1 『パンと金持ち』
パンの漫画2 『クロワッサン』
パンの漫画3 『朝にパン』
パンの漫画4 『こがす』
パンの漫画5 『ガレット』
パンの漫画6 『罪悪感』
パンの漫画7 『ながら食べ』
パンの漫画8 『買いすぎる』
パンの漫画9 『先祖とフォカッチャ』
パンの漫画10 『VIRONで朝食1』


漫画:堀道広


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