パンの研究所「パンラボ」。
painlabo.com
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
パンラボ講座 Season2
池袋西武百貨店の4階、池袋コミュニティ・カレッジにおいて、月1で行われている、『パンラボ講座 -パンを巡る冒険-』
この講座では毎回4つのパンを食べる。
4つのパンそれぞれにまつわるストーリーを語り、4つのパンが代表する4つのカテゴリーを知り、それによって、パンを冒険するための地図を手にする。

1月は「食パン」。
日本人とは食パン民族である。
極東の島国に産まれた限り、私たちはこのパンを食べつづける宿命にある。
それはなぜなのか、私たちにとって「心地いい」とはどういうことなのか。
1時間半のうちに、日本人にとっての食パンの快楽の極点までおもむきたい。
どうしてもみなさんに食べてほしい食パンがあり、そのために私は横浜まで行く決意を固めている。
また、オーブントースターを使って食パンのベストの焼き方も探る研究も行う。

2月は「カンパーニュ」。
この、大きな丸いパンに魅せられ、人生が変わり、人生観が変わり、人生を捧げた、というパン職人がたくさんいる。
カンパーニュとは、そうした希有なパンだ。
だから、カンパーニュを語ることは、パンの歴史のはじまりを語ることであり、「酵母」という見えない生き物を語ることである。

3月は「ベーグル」。
スペシャルゲストとして、人気パン教室「わいんのある12ヶ月」の主宰者で、テコナ ベーグルワークスのオーナーでもある高橋雅子さんに登壇していただく。
雅子先生は「パンラボ的」な料理家である。
なにしろ、テコナ ベーグルワークスには、「もちもち」「むぎゅむぎゅ」「ふかふか」という、酵母を変えた3種類のベーグルがあって、食感・味わいのちがいをテイスティングできる。
『高橋雅子の変換レシピ』も実にパンラボ的なアプローチの料理本であった。
彼女の愛する、シニフィアン・シニフィエの志賀勝栄シェフ、Zopfの伊原靖友シェフ、プロデュースや講習会で活躍する山崎豊シェフのレシピを、誰でも家で焼けるよう「変換」している。
高橋雅子さんといっしょにいくつかのベーグルを食べる。
あらゆる製法に通じた雅子先生のことであるから、話はあらゆる方向へと脱線し、ベーグルの環のようには、丸く収まることはないだろう。(池田浩明)




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驚いた箱情報
柏手さんが今年もまたワイハーへ旅立った。
例年よりも早めの旅立ち。
毎年恒例とはいえ、柏手さんがワイハーへ行くということは年末ということ。
(ワイハーと言ってもハワイとは限らず、ワイハーという名のSOMEWHERE
2012年がもうすぐ終わる。



IMG_6375.JPG『パンラボ』を発売した2012年1月から今月にいたるまで毎月催しがあって、
その間に『まさこジャム』を発売して、
休む間もなく駆け抜けた1年。
ブログを読んでいただいている皆様いつもありがとうございます。

写真は今年驚いた箱トップ2のひとつ。


bbb.jpgなんとパリにあるパンデジデさんからパンが届いたのだった…! 空輸!!
(小林さんありがとうございました!)


ccc.jpgカカオのパン。



IMG_6831.JPG今年驚いた箱トップ2のもうひとつは、明治屋のコンビーフ。

なんと、使い切らなくて良いタイプ。
結構前に発売されたみたいだけど最近知って驚いた。
(脂肪の少なくない通常ver.もあるヨ)


IMG_6832.JPG市販のヨーグルトみたいな感じのサ! 

感じ! 感じ!【D】



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(今年驚いた箱情報求ム)
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りんごのつづき
2012年末。
陸前高田米崎町では、震災以来2度目の「希望のりんご」の収穫が終わり、年の瀬を迎えている。
12月に収穫される「ふじ」は、日本でもっとも糖度が高いといわれ、米崎町の名物となっている。

風に揺れて枝がぶつかるなどして、傷がついたものは高い値段がつかず、ジュースなどにされるほかはない。
品質もおいしさも一般のものとまったく変わることがないのに。
このりんごを一般のりんご同様の値段で買い取って、パン屋で使ってもらえれば、復興に役立つ。

Zopfでは3月までりんごを使ったレギュラー商品を「希望のりんご」に切り替えた。
リンゴとベーコンのロールブロートと、キャラメルリンゴのデニッシュ。
「りんごの日」のみならず、毎日、陸前高田のりんごを使ったパンを買うことができる。

キャラメルリンゴのデニッシュ。
凹と凸、その類い稀なバランスが、このデニッシュの真骨頂である。
りんごの甘い芳香を含んだ、やわらかな酸味。
その凹に、これもやわらかな甘さに作られたアーモンドクリームの凸が、あまりにもちょうどよく、しっかりとはまりこんでいる。
キャラメルの香り、さくさくのデニッシュから滲み出すバターが、りんごのおいしさをさらに盛り上げる。

陸前高田で津波の被害に遭った八木澤商店とコラボしたギフトセットを発売するなど、シニフィアン・シニフィエは復興の支援を続けている。
12月26日〜1月6日までは、「希望のりんご」を使ったアップフェル・シュトゥルーデルを販売。

アップフェル・シュトゥルーデルとは、パイでリンゴのコンポートを巻き込んだオーストリア菓子である。
アップルパイも志賀シェフにかかると、思索的な、未知のお菓子に変わる。
普通のパイのようにさくさくしているのではなく、まるで氷の板を噛み割るようにばりばりと音がするのだ。
シナモンの香りを濃厚に感じ、りんごとレーズンから甘みと酸味がジューシーに滲みだすことにうっとりとする。
底に敷かれたジェノワーズ(スポンジ)が受け止めてくれて、りんごの味わいをさらに心地よく堪能することができる。

パンやお菓子などに使うりんごは紅玉が最高級とされる。
身が硬く酸味が強いために、煮崩れさせずに、味を凝縮させることができるからだ。
「りんごの日」で使用したジョナゴールドは紅玉ほどではないが、これに近いタイプだった。
いまシーズンを迎えている「ふじ」は、上記2品種に比べて、ジューシーで甘い。
特に、りんご栽培の南限にあって、太平洋に面している陸前高田米崎町のりんごは、日照時間が長いため特にそうである。
つまり、生で食べてとてもおいしいのだ。
であるがゆえに、調理して使うのがむずかしい。

にもかかわらず、シニフィアン・シニフィエの志賀勝栄シェフ、Zopfの伊原靖友シェフは、「ふじ」の特徴を活かし、とてもおいしいパンを作ってくれた。

「希望のりんご」をインターネットで買うことができる。
有機・低農薬で栽培され、完熟したものが収穫され、甘くておいしい。

(池田浩明)

『まさこジャム』
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ブレッドボード(井荻)
165軒目(東京の200軒を巡る冒険)

私にとって、小さな宝物のような店だった。
昔、ブレッドボードの近くに住んでいたことがある。
そうでなければ見つけることができない。
メディアで派手に取り上げられているわけでもないからだ。
だから、通りすがりでこの店を見つけたときのよろこびはひとしおのものだった。
パンが食べたくなったとき、おいしいものが手に入ったとき、自転車を走らせる。
思えばそうしてブレッドボードは私の日常になっていった。

店主の津野薫さんはこの店を開く前、アンデルセンで技術指導や店づくりに携わっていた。
「おふくろが、パンが好きでいつも食べてました。
うちは広島で、原爆で焼け野原だった戦後すぐのころからアンデルセン(高木ベーカリー)におふくろはよく通っていた。
なんでも、アンデルセンの創業者は戦地から広島に帰ってきて、生きるよろこびをみんなに与えようと、『なんでもやってやるんだ』という意気込みでパン屋をはじめたそうで。
おふくろが買ってくるアンデルセンを食べて育ち、僕もパン好きになりました。
大きくなって大学に入ってもやることが見つからないままで、そんなときおふくろが『アンデルセンに面接行ったら?』って(笑)」

パンではなく、ブレッド。
ブレッドボードのパンはアメリカで育まれた。

「3、4年、現場に出たあと、希望してアメリカの子会社に行きました。
5年間ニューヨークにいました。
アメリカのパンは、当たり前ですけど、すごくヨーロッパ的ですよね。
菓子パンとか惣菜パンじゃない。
日本人にとっての米のような、食事パンが中心。
バゲット、ライサワーがあって、食パンもある。
スペインのパン屋さんに2週間ぐらい、生活をともにするぐらい、つきっきりで教えてもらいました。
カルチャーショック。
スペインのやり方で種を起こして、本当に時間をかけて作るパンを見せてもらいました」

まだ自家製酵母が日本ではあまり広まっていなかった時代に、パンの原点を目の当たりにしたことが、津野さんの基礎になっている。

「欧米ではパンが生活の中に入っている。
パンはキリストの体、ワインはキリストの血だといいますけど、その感覚がわかった。
パンが人間の体を形作っている。
そういう気持ちで作らなきゃいけないと思います。
素材を生かしながら、生活に密着してパンを作る。
僕、コックでもなんでもないんで、小麦と酵母を使ってパンを作る。
ただ、それだけです」

アメリカの洗礼を浴びたのは、パンだけのことではない。
雑貨に彩られたこの店のインテリアは、いっしょにアメリカへと同行した夫人の仕事である。

「家内は雑貨おばさんと呼ばれています(笑)。
前職は雑貨屋。
ちょうど僕らの年代というのは、雑貨がブームになったはしりで、この人はその栄枯盛衰をぜんぶ見てきた」

カリフォルニアでオーガニックの素朴なレストラン「シェ・パニース」を開き、世界的に有名になったアリス・ウォーター。
かわいいイラストが載っている彼女のレシピ本は奥さんのお気に入りだという。

「シェ・パニースが大好きなんです。
絵本をコピーしてパウチして貼っています。
私たちがちょうどアメリカに行ってたころ、アリス・ウォーターの『ベジタブル』という本が出た。
出版記念のイベントに行ってサインをもらいました。
握手もしてもらって(笑)」

パンの味は本物だったとご主人も振り返る。
「アクメ・ブレッドとカフェ・ファニーをガレージでやってる頃で。
すごくおいしかったなあ」

客がひとりかふたり入ると、もういっぱいになってしまう。
写真をうまく撮るアングルさえ見つけられないほどの狭さ。
この小さな店で経営を軌道に乗せているのは。アンデルセン時代の経験則が生きているからだ。

「アンデルセンの商品構成の通りにやったのがよかったですね。
スイート6割、食事パン2割(うちフランスパン1割)、惣菜パン2割。
それを基本に試行錯誤でやってみようと。
うまくはまりました。
これでいいんだ。
でも、長い目で見たら、常連のお客さんについてもらわないといけないんで、食パン、イギリスパンは安めに設定しました。
そこの利益は我慢して、おいしいのを一生懸命作る。
儲けは少なくなったけど、お客さんはついた。
製造は完璧にやるんだけど、接客は隙があったほうがいい。
かわいらしく、フレンドリーに、一歩引いてあげる」

イギリスパン1.5斤(273円)
店主の狙いにものの見事にはまっていたのかもしれない。
このパンを朝食べるためにブレッドボードに通い出したのだから。
なんといってもこの食感。
やわらかく沈み込み、ある地点でコシにぶつかる。
それに抵抗されつつ、戯れる。
いっぽうでパンは溶けつづけるから、噛むことが快感になる。
この食パンの魅力は、甘さではなく、リーン(シンプルな小麦の味わい)であること。
皮の香ばしさ、中身の小麦味は、塩気に高められ、噛むごとに濃厚になっていく。

カンパーニュを作って食事の中に入り込もうとしているんですが、なかなかむずかしい。
食べ方がむすかしいとお客さんが思ってしまうんですよね。
やっぱりカンパーニュのオープンサンドが究極ですね。
新鮮な野菜と、チーズとハムに、ドレッシングかけて食べたら天国。
あとは、亜麻の実のパンなんか、ドライブのときにいい。
旅行のときって甘いものを食べがちなんだけど、こっち食べたほうが、体もよくなりますし。

キャラウェイシードのヴァイツェンミッシュブロート(ハーフ240円)
このスパイスの使い方は新しい。
キャラウェイシードの、ミントに似たすっとする香りがパン全体から立ち上っている。
それはライ麦の香りに通じるところがあって、その香ばしさに寄り添って一体になる。
舌先を刺激するわずかな酸味もそれと響きあい、ライ麦のコクをいっそう燃え上がらせ、口の中を吹きすさぶ。
ストライプの入ったバナナ型のキャラウェイシードがトッピングとして散りばめられているのもかわいい。

アーティチョークとハーブのフォカッチャ(231円)
噛んだ瞬間、マリネしたアーティチョークの酸味がほとばしって、口がいっぱいになる。
その鮮烈さゆえに、背後からじょじょに高まってくるフォカッチャ生地の風味が、よりいっそうあたたかく感じられる。
パンの甘さにもキレがある。
アーティチョークが消え去ったあと、滲みこんだヴィネガーだけでおいしく食べられるほど、このフォカッチャは秀逸である。

「おいしいってなんだろう。
自分がおいしいのがいちばん。
自分の店で残ったパンを食べたとき、『これうまいなー』って心から思えなきゃだめですよね。
お客さんに『おすすめは?』って聞かれるんですけど、『ぜんぶです』って答えます。
おいしいパン作るっていう使命感ですよね」

自分が本当においしいと思ったものだけを出すということ。
自分と客を分けないということ。
パン職人の良心とは、一言でいって、これに尽きるのではないか。(池田浩明)

ブレッドボード
西武新宿線 井荻駅
03-3395-7408
10:00〜19:30
日祝休

#165




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200(西武新宿線) comments(3) trackbacks(0)
出張パンラボ1
IMG_6659.JPG11月下旬、横浜の元町中華街へ行く。



出張パンラボと称し、国産小麦への造詣が深いブラフベーカリーの栄徳シェフのもとを訪ねた。
国産小麦とは何か? 
外国産小麦との違いは何か? 
首都圏にある計6店(10品)の国産小麦を使用したプレーンなパンをあつめて、
栄徳シェフと池田さんが小麦談義。



IMG_6667.JPG色に焦点をあてた話もあり。


IMG_6661.JPGブラフベーカリー厨房の床。

小麦について考えたい人はページをひらいてください。【D】



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年末で浮ついているパン
IMG_6864.JPGごろごろ。

IMG_6865.JPGごろごろ。

IMG_6868.JPGごろごろ。

IMG_6867.JPGあー もう年末すぎるっしょー

2012年終わるっしょー

仕事終わらなー あーぜんぜん終わらなー

もう気持ちが浮ついて仕事とか集中できないっしょー

忘年会とかクリスマスとか楽しいことだらけだなー

なあんか毎日眠くなるんだよなー

あーー

あーーーーー






…ってサンドイッチが言ってます。【D】




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(茗荷谷にあるサンドイッチ専門店サンドーレのおいしくてボリューミーなサンドイッチ)
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いかにして天国に近づくか?
シュトーレンはクリスマスケーキではありません。
と、ある人に諭されたことがある。
シュトーレンとは、ひと切れずつ食べるものだ。
ヨーロッパで、12月の子供たちは、アドベントカレンダーの日付を1日1日と裏返し、毎日ひと切れのシュトーレンを夕食後に食べながら、4週間のあいだクリスマスを待ちわびる。

私にそれは不可能だ。
ひと切れで、手が止まることは決してない。
なくなるまでぱくぱくと食べて、クリスマスケーキのようになってしまう。
おいしければおいしいほど、大切に食べたいと思いながら、欲望は抑えられない。
シュトーレンのパラドクスに今年も打ち勝つことはできないのだろうか。

ダンディゾンのシュトーレンは食パンを作るときの型を使ってそれは焼かれる。
焼いて膨らませるというより、焼き締められている。
水分が抜かれ、味わいは濃縮される。
クッキーのようなかりかりという音がシュトーレンで聞かれるほどに。
ひしめきあうドライフルーツたちから、もはやみずみずしさは失われ、代わりに甘さは極点へと達する。
生地においてもそうだ。
くにゅっとした食感を残して、なよなよと溶け、フルーツと連動してせつない甘さを押し広げる。

「僕は普段からちびちびと食べるほうなので」
と大柄な木村シェフがいうと少しおかしかった。
「シュトーレンはひと切れずつ食べるものですが、日本ではそれが守られていない。
濃くして、少しだけ食べても満足できるようにしたかったんです」

シニフィアン・シニフィエのシュトーレンも同じように禁欲的だった。
パン生地に砂糖の甘さは感じられない。
むしろそれはドライフルーツの贅を引き出すためにある。
やはり焼き締められている。
シュトーレンは、おくるみに包まれたキリストを象っているといわれているけれど、これは和三盆のコーティングに包まれている。
たしかに、和三盆の生成りの色あいは、キリストが生まれた砂漠地帯に生きる人びとのストールのようだ。
人の手と発酵と火が共同して作った聖なるでこぼこは、宗教的なリアリティを感じさせる。

志賀シェフの手にかかると、どんな特別な素材も、「このパンのためにあったのだ」と思わせる。
和三盆しかり。
ドライフルーツと響きあって、甘さがフルーティである。
しゅうしゅうと溶けて、出てくる甘さはあまりにつつましやかで、かつさわやかで、後口になにも残さない。
その口溶けを感じているとき、確実に天国に近づいている。
信じられないほどの手間をかけ、人の手によって生まれてくる和三盆のことを思うと、宗教のちがいこそあれ、この砂糖は天国を夢想させるために作られたのではないかという気がしてくる。

シュトーレンもおそらく同じなのだろう。
いかに天国を夢見せるか?
いかにして天国に近づくか?
リッチなシュトーレンもいいが、ストイックであったほうが、それにはふさわしいのかもしれない。
そういえば、ダンディゾンにしても、シニフィアン・シニフィエにしても、あの空間には修道院のような、清々しさや緊張感が漂っているし、志賀シェフや木村シェフやその他の人たちが白衣をまとって立ち働く姿も、ストイシズムを感じさせる。

シュトーレンを食べたいだけ食べずに、たったひと切れで我慢してみる。
私なりのストイシズム。
そのとき、この1枚をできるだけ味わい尽くそうという集中が生まれ、口溶けがよりはかなく、甘さがせつなくなる。
これが天国のパンだ。(池田浩明)




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クリスマス気分
かしわで

クリスマス気分を何で高めるか。

まさこさんのジャムセッションに行った際に
ベッカライでケシの実のシュトーレンを買って帰った。 
これを少しずつチビチビやって、クリスマス気分を高めるのですね。

うむ。うんまい。自分はフルーツよりきっと好き。おそらく好き(食べ慣れてないから空想)。

ドイツ人のテンション高揚ツールか……。

最近はずっとネットでハワイのラジオばかり聴いている。
理由は寒いから。
気分だけでも常夏になろう。
いわゆる生活の知恵ってやつ。
でもずっと聴くようになったのは、ラジオが朝から晩までず〜〜っと、ひたすらクリスマスしてるから。
半端なくクリスマス気分を高めようとしてるね、ハワイアンは。


ほんとうにずっとクリスマスソング。
大好きなんだね。子供も大人も。

で、ふと我にかえる。
自分はなんでクリスマス気分を高めたいんだっけ?
いい年こいて。(←この発言がいけない。年は関係ないはず)
ああなんか混乱しそうだからショートカット!

ハワイ風クリスマスソングと
ドイツ風お菓子パンでクリスマスを煮込む。
うむ。いいジャムができそうだぞ!

仕上げは何だろう?
ケンタッキーっすか!? ワハハー!

クリスマスイブまであと4夜だ。

まずはクリスマス気分を高めてしまおう。
それからだ。なぜ高めたのか考えるのは。

でもパンだけは今からちゃんと考えておこう。



※IMG_0739.jpg
9日に開催されたまさこジャムのイベントに行ってまいりました。
※IMG_0735.jpg
外からイベントを覗いてみました。
暖炉に火が灯され、それを囲むように談笑が繰り返されている
いいなぁ〜中にいる人たち……
と、通りすがりの人が思ってくれていたらいいな〜。
ジャムとパンの会ではありましたが
ジャムとパンをとおして、気持ちをシャッフルしたり、リフレッシュしたり、リリイシュシュしたりする会だった気がします。
同席した謎の女性から生田にある「おとぎばなし」というパン屋の「おからパン」「おやきパン」がおいしいと教えてもらいました。
※IMG_0743.jpg
※IMG_0744.jpg
左からレバー・なす・ごぼう・レバー。言うまでもなくぜんぶうまい。
※IMG_0750.jpg
噂のベジ麦のスープ・ポルチーニ風
言うまでもなくうまい。





池袋西武上のコミュニティカレッジで開催されたトークショー
※IMG_0721.jpg
左・池田浩明氏   右・伊原靖友(Zopf店長)さん
※IMG_0722.jpg
「売れる店の方程式はない。」
「売れない店の方程式はある。」
※1.jpg
「100人のうち90人にうまいと思わせるパンを作る」
「100人のうち10人にすげーうまいと思わせるパンを作る。」
※IMG_0729.jpg
どっちがいいのかではない。どういう店を作るのか。目指すのか。
あとはセンスでお願いする感じにくすぐられました。
※IMG_0730.jpg
ムッシュも伊原店長も喋り(トーク)が上手い!!!





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ヨシダベーカリー(富士見ヶ丘)
164軒目(東京の200軒を巡る冒険)

小さな駅の静かな商店街。
素通りしてしまうほど町に溶け込んで、素通りできないほど心地よい感じがする。
ヨシダベーカリーは、カタネベーカリー出身の吉田さんの店である。
白い内外装。
木のカウンターの上に並んだフランスパンがかっこをつけていないし、店の小ささが押し入れに入り込んだような安堵感を与えてくれる。
カタネイズムは、形を変え、受け継がれている。

カタネベーカリーで一度食べて以来心を鷲掴みにされたタルト・フランベと、再び邂逅を果たした。
その横にはこのパンがあった。

いわしとたまねぎ(280円)
タルト・フランベの上にあろうことかオイルサーディン。
ベシャメルソースのミルキーな甘さとたまねぎの鼻へと抜ける容赦ない辛さが、見え隠れし絡まり合う。
タルト・フランベと同じ清らかなバランスを、オイリーないわしが蹂躙する。
噛みしめるほど、溶けゆくミルクの甘さと、いわしの脂が舌の上にしたたってとてつもなく甘美である。
背後にはバゲットの香ばしさが控えていて、感動をより完全なものにした。

カタネベーカリーの秘密を受け継ぎ、さらに新たな個性を付け加える。
それは基本となる食事パンにもいえることだ。
カタネベーカリーのバゲット、食パンにあるさりげなさ。
それを引き継ぎながら、さりげないままに一歩踏みだす、という離れ業を演じている。

吉田さんは言う。
「バゲットは軽くしようと思いました。
より食べやすい普通のフランスパンにしようと」
たしかに口溶けや食感において軽やかであるにもかかわらず、香ばしさや、中身の甘さに関してはいっそう鮮やかになっている。
それは食パンにおいて顕著だ。

角食(300円)
がっちりと焼かれ分厚く中身を取り巻く耳。
特に底面は、生であってもざくざくして、クラッカーのような崩壊感覚さえある。
中身のミルキーさが濃厚ではっとさせる。
しかしあっさりもしていて、絞りたての牛乳を飲むように、生理的な快さを引き起こす。
噛むと、気泡のあいだからぱふぱふとあたたかな香りを吹き出し、なめらかで、どこまでもやわらかで、口溶けがいい。
つまり、理想的な耳と理想的な中身が、理想的なコントラストを描いている。
トーストしたとき、ミルクの甘さは夢のようになり、さくさくとひと噛みごとに音を立てて、気持ちよく歯切れる。

「カタネベーカリーのいちばんの名物であるセーグル・オランジュだけが同じで、あとはぜんぶ作り方がちがいます。
なるべくカタネベーカリーといっしょにならないようにしています。
それでも同じになるんですよね」

それはなぜなのだろう。
フランスパンをおしゃれなものとしてではなく、日常の食べ物として売る。
というコンセプトにおいて、カタネベーカリーとヨシダベーカリーは一致している。
私もその方向性を熱烈に支持したい。
フランスパンとは日常の天才なのである。
お昼にサンドイッチを食べよう、おやつはバゲットにチョコレートをはさんで食べよう。
それが「おいしい」ことが、日々の幸福を保証してくれると思うから。

ブリオッシュサンド あんことバター(150円)
あんぱんよりも、フランスあんぱんよりも。
あんことパンの正しいマリアージュとは、実はこの食べ方ではなかったのかと、興奮でそう口走りそうになる。
あんことバターが混じり合い溶け合うことで、味わいは爆発的に広がり、舌触りも狂おしくなめらかになる。
ブリオッシュがいい色で焼き上げられていて香ばしく、歯切れも口溶けもいいので、フィリングと心をひとつにして溶けていってくれる。(池田浩明)

ヨシダベーカリー
京王井の頭線 富士見ヶ丘駅
03-6326-2754
7:30〜18:30
月曜・第1・3・5日曜休み

#164




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#164
200(京王井の頭線) comments(0) trackbacks(0)
おめでたい
特におめでたくなくても、おめでたくありたい。
つまり、私はおめでたい人間である。
空元気でいい。
気分は下がるより、アゲアゲなほうがいいのだ。

おめでたい人間は、祝うのが好きだ。
隙あらば祝ってやろうと、虎視眈々狙っている。
なにしろ、お祝いのときは、ごちそうが食べられる。
大手を振って贅沢ができる。

『まさこジャム』にも晴れの日のメニューはある。
鯛のかぶと煮。
「鯛」と聞くと、「高い」となるが、そんなことはない。
鯛の頭というのは、身に比べおそろしく冷遇されているようで、近所のスーパーで200円だった。
あまりに安いので、翌日も別のスーパーに買いにいったら280円だった。
(これは白ワイン蒸しにしてパンといっしょに食べた)
売り場になくても、店員に声をかけると、出してきてくれる。
姿は見えなくても必ずある。
鯛の刺身がある限り、頭は余らざるを得ないのだ。

魚料理はむずかしいか?
『まさこジャム』に限ってそんなことはない。
おめでたいほど不器用な私にもできたぐらい。
唯一の関門はウロコ取りだろうか。
それさえ、包丁でごしごしやってれば、そのうちきれいさっぱりはげ落ちる。
鍋の中に計量した調味料とダシと材料を入れ、あとは煮るだけ。
いつも言っているように、ブルースの女王は淡谷のり子、簡単料理の女王は渡邉政子である。

食卓に載った鯛のお頭を見た者は必ずこの言葉を発する。
「なにかあったの?」
なにもない日なんか一日だってないのだから、確信に満ちた口調で思いつきを答えよう。

「『まさこジャム』大評判だってさ」
バンザーイ!

「選挙で原発推進の党が勝ったって」
バンバンザーイ!

「今日はクリスマスイブイブイブイブイブイブイブイブだよ」
メリーバンバンザーイ!

味は、もちろんうまかった。
腐っても鯛、料理下手でも『まさこジャム』。
もっとも、万歳三唱するほどのハイテンションで食べて、おいしくないものなんかあまりなさそうだけど。(池田浩明)



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