パンの研究所「パンラボ」。
painlabo.com
パンのことが知りたくて、でも何も知らない私たちのための、パンのレッスン。
ブーランジェリーレカン開店!
ついに、その時がきた。
パン屋を持たないパン職人であるがゆえに、知る人ぞ知る存在にとどまっていた割田健一シェフが店舗を持った。
2014年12月17日。
銀座5丁目、晴海通り沿いの「ミレニアム三井ガーデンホテル」の1階、フレンチの老舗レカンの新店舗「ロティスリー レカン」に併設され「ブーランジェリー レカン」がオープンした。
わずか3坪ほどの売り場に、銀座界隈のパン事情を一変させるインパクトがある。

パンひとつひとつにわくわくし、見ているだけでなにかが伝わってくる。
バゲットの表面に気泡が露出したざらざらの地肌は、小麦の香りの生々しさを想像させる。
クロワッサンの一層一層はくっきりとエッジを刻んで、いかにもさくさくとしていそうで、早く噛み破りたいと欲望を喚起する。

割田シェフの作るパンはかっこいい。
あるときはポップ、あるときはエレガント、またあるときはくすっとひと笑いきそうにもなるし、凝った食材にうならされたりもする。
ギモーヴ(マシュマロ)でコーティングされたドーナツ。
つるりとした表面はバーナーで焼かれてグラデーションが描かれ、カラフルなトッピングが施される。
きのこのような形のベーカーズマフィンは、チョコ&ピスタチオ、ベーコン&ペッパー、小倉あん&クリームチーズと、具材を混ぜ込まれてカラフルに。
このようなパンが、バゲットやカンパーニュ、クロワッサンといった正統派のパンのあいだにちりばめられることで、売り場に華やぎと勢いが生まれているのだ。

「Caramel&Banana」  (キャラメル&バナナ)
¥270+税
帽子のつばをイメージしたというベーカーズマフィン。
さくさくとした外側としっとりした内側、極端と極端がどちらも快いテクスチャーとして両立している。
ブリオッシュ生地がしゅわーっと溶けていくあっけなさ。
マフィンとはもごもごする食べ物というイメージさえ、その口溶けはさっぱりと押し流していく。
半生のバナナチップスと小麦の生々しい甘さの邂逅。
ねっちりとしたバナナから香りはねちねちと湧きだし、口の中でどんどん勢いを増す。
それは決してめりはりのないものではなく、酸味のニュアンスが存在していることを、キャラメルチョコレートが寄り添うことで教えてくれるのだ。

こんなパンがどうやったら生まれてくるのか。
秘密を探りに、地下1階の厨房へ降りる。
ここは本当に銀座の一等地なのだろうか。
そう思わせるほど、コンパクトな店舗と相反して厨房は広大である。
割田シェフの「城」として、コンピュータ制御のボンガード(フランス製オーブン)、複数のミキサー、複数のドゥコン(生地の自動温度管理機)、ヴィンボック換気天井システム(衛生的な厨房の室内環境を作り出す製品)によってハイテク武装されている。

パン・ド・ミを焼いていた割田さんはアメリカ製の食パン型を示す。
一般的な型に比べて平べったい。
「昔の型っぽい型。
僕はずっとこんな型でパンを焼いてみたかったんです」

アメリカから直輸入したその型には、古き良きアメリカの香りがあった。
メタルのマットな風合。
側面が波板で作られているのは、単なるデザインにとどまらず、皮の表面積を増やして、腰折れを防ぐ効果もある。
「僕は道具は特注してオリジナルなものを作るよりも、あるもので展開したいと思っています。
昔からあるもので、生き残ってるということはなんか意味があるわけですから、大事にしたいんです」

割田さんのパン作りは、古着屋で見つけたヴィンテージの服や靴からインスピレーションを受けて発想するファッションデザイナーに似ている。
わずかなデジャヴやなつかしさが記憶を喚起し、気持ちに食い込んでくる。
割田シェフ自慢の道具たち。
次に出たのは、とうもろこしの形の型だ。

「これ、コーンブレッドスティックの型。
アメリカに行った友人が見つけてきてくれました。
こういう型を使うのって昔の家庭料理らしいんですよ。
ニューヨークのパン屋さんでこんなパンは売ってない。
(とうもろこし型に出会えて)ラッキーなんですよね」

「Corn Bread Sticks」(コーンブレッド スティック)
¥180+税
まるでスポンジのようなその食感は、ふわふわという言葉だけでは足りず、ぽわーん、あるいはぱふぱふと表現するのが適当だろう。
瞠目すべきは、しゅわっと勢いよく一気に口溶ける様。
溶けて滴る液体は、甘さ、コーンの香りをむんむんと発散して、コーンポタージュを飲むかのようだ。
それで飽き足らず、単調さを破るのは、生の状態で混ぜ込まれたコーンの粒。
2種類のコーンは、あたたかさとひんやりした感触、みずみずしさと焼き込んだ甘さのコントラストを生みだす。
2つは同じでありながら、微妙にすれちがい、戯れあう。

コーンブレッドやブレッドマフィンといったパンたち。
その見た目は、まるでブルックリンかどこかのガレージから生まれてきたようなオフビート感にあふれているけれど、食べてみると、極めてオーソドックスでまっとうな技術を踏まえていることがわかる。

「僕のパン屋としてのキャリアは、フランスのパンを焼くところからスタートしました。
生地はフランステイストですし。
製法的には自分が積みあげてきたことをやりながら、(プレゼンテーションのときには)形を変えるってことなんですかね。
ベースは残しつつ、形を変える。
進化させるのか、進化するのか、昔に戻っていくのか?」

銀座レカンのシェフ・ブーランジェに就任して3年。
レカングループのレストランにパンを供給する一方で、社外の人たちのためにもパンを焼いてきた。
銀座レカンでも毎日シェフの要望に応え、特注のパンを作ります。
知り合いのレストランのためにオリジナルのパンを卸したり、パーティやイベントのために一夜限りのパンを作ったり。
それら、一部の人しか食べられないものとして3年間作り貯めてきたパンを、毎日店頭に並べて誰でも食べられるようにしたのが、ブーランジェリー レカンのラインナップなのだ。

(配達に使われる特注のバゲットトート)

「結局、ブーランジェリー レカンで商品として並ぶものって、食べたいという人がいて作ったものばかり。
ラインナップのうち、自分で悩んで悩んで作ってるものはひとつもありません。
もちろん、レシピはコロコロ変わりますが(笑)。
いままで誰かのために作ったものをそのまま並べたらいいと考えました。当たり前ですが、お店に並べるのに微調整は日々してますし進化は今後もしていきます」

たとえば、「Croissant à la vanille」(クロワッサン ヴァニーユ/¥270+税)が誕生したのは、パンラボの主催した池袋東急ハンズでのイベント「パンコレ」においてだった。
割田シェフは、カフェのテラス席でイベントについて説明する私の顔を見ながら、変わり種のクロワッサンを5種類作ることを即座に決めたのだ。

バニラビーンズの粒々たちが、溶けて、とろけて、バターといっしょに発散する。
表皮は、上出来のクロワッサンによくあることだが、細長い切片に裂け、そのひとつをつまんでも、薄いのにしっかりとした硬さを持ち、ぱりんと小気味よく割れる。
皮とは対象的に、やわらかく、生っぽく、ひんやりとした中身からは、ジューシーにバターが溶けてくる。
口の中で唾液を吸って生地はクリーム状となり、バニラの香りと相まって、カスタードでも食べているようになる。

「Pain de Campagne HARUYUTAKA」(はるゆたかのカンパーニュ/¥600+税)では画期的なアプローチをしている。
全粒粉、白い小麦粉、粒の状態。
3種類をブレンドしながら、3種類すべてがはるゆたかなのだ。

「僕は、どうにかして単一品種でパンを作れないかと思っていました。
でも、粉一本だと、なかなか表現力が上がらない。
単一品種の食べ物って意外と世の中にないんですよ。
ワインだって、ピノノワールを85%使ったら、残り15%は他の品種を入れる。
小麦粉も全粒粉も粒も同じ品種でやればいいやって思いつきました。
なぜはるゆたかかというと、いまある品種の中でその3つすべて流通してるものは、はるゆたかだけだったので」

小麦という作物の思いを表現するためには、単一品種で表現したいと考えた。(ブレンドされるとどの品種がどういう味なのかわからない)。
さりとて、単一品種でパンを作ると、単調になることは多々ある。
もし単調になり、おいしいと思われなければ、逆に品種の価値をおとしめていることにならないか。
そして、この矛盾を覆すのが、小麦粉、全粒粉、粒を単一品種で統一してブレンドするアイデアだ。

食べてみるとむずかしいところはどこにもない。
どころか、大手チェーンで売られていておかしくないような、軽やかさ、食べやすさがある。
国産小麦らしい、やさしいもちもち感。
でありながら、香りの複雑さやヴィヴィッドさを持ち合わせる。
ときどきがりっと噛む粒は麦焦がしのような力強い香ばしさ。
深呼吸したくなるような皮のすがすがしい香ばしさ。
やわらかな中身はじゅるじゅると溶けて、まるで麦ジュース。
3つの香りは干渉しあって、香りの爆発が起きる。
テクスチャーがちがい、香りがちがい、なのにそれが同じひとつの素材の別々な側面を見ていることは、自然への畏敬の念さえ生じさせる。

このパンも、はじめは自分のためではなく、誰かのために作ったものだった。
「ある製粉会社の方の定年パーティが開かれたとき、その会に出席したパン屋さんたちでパンを持ち寄ろうってことになって。
僕はある農家さんに特別に同一品種の粉、全粒粉、粒を頼んでわざわざ出してもらった」

定年となったその人物は「小麦の伝道師」と呼ばれるほど、国産小麦(特にはるゆたか)の普及に尽力した人。
はるゆたかのカンパーニュは、見事なオマージュとなっている。

「店に並んでいるパンは、ぜんぶストーリーがあるものだからいいと思うんですよね。
オープンの2ヶ月ぐらい前は葛藤があった。
いろいろ考えました。
(発想・考え方として)すごいことやろうって思ったこともあったけど、結局いままでやらなかったことはできないですし、やってきた事しかできないですから。
『沢山の人に向けてにパンを作るのは無理でしょ』って思った。
たったひとりのために、ピンポイントで作ってきたし、香り、味、食感等を決めるとき沢山の人にと考えると分からなくなる。
なので、そこはぶれちゃいけないんだろうな。
この人のためにって作ったものを、みんなに食べてもらったらどうなんだろうな?
でも対象はひとり。
この人のためにっていうピンポイントの感じ、そのほうがすぽっと決まりますよね。
大衆的にパンを作ろうとは思ってない。
いつもそのときそのときで、なにか作らざるを得ないって状況で作ってきた。
それを、これからくるお客さんに食べてもらう。
僕らしいといえば僕らしい。
(新店のオープンという事態に)どういうふうに立ち向かったらいいんだ。
けっこう悩んだけど、気持ちの中でそこが整いはじめたら、商品のラインナップはすぱっと決まりました。
まだまだ、ぜんぶお店に出せていませんが、早くぜんぶ出せたらと思います」

覚悟が決まると、インスピレーションがどんどん飛び込んできた。
割田さんが前から本で見て、食べた事がある人達から聞いていて、いつか食べてみたいと思っていたニューヨークのサリヴァンストリートベーカリー。
そのリスペクトである「Croque-monsieur Zucchini」(ズッキーニのクロックムッシュ/¥650+税)、「Croque-monsieur Champignon de Paris」(マッシュルームのクロックムッシュ/¥650+税)も、急転直下思いついた。

「サリヴァンストリートベーカリーでは野菜をピザの上にピーラーで削っているやり方で、これは面白いと思い、自分のパンにどうやって落としこもうかって、ずーっと考えてました。
野菜をスライスしてパンにのせるとパン生地がベシャベシャになるのがおいしいと思えなくて。
そうすると、クロックムッシュにしても、味わいがちゃんと出て、『うまい!』と思いましたし、フランスの定番のものを少し進化させることができた気がします」

自分がいまおいしいと思うものを作る。
そんな勢いや熱は食べ手に確実に伝わるものだ。
パクチーの入った「シトロンチャバタのサンドイッチ」(¥520+税)はそんなふうに作られた。

「僕の大好きなあるレストランで香草爆弾(パクチーサラダ)食べてから、自分の中でパクチーがブームで、それまでは全くダメでしたが。
肉の脂身と合わせたら、うまそうじゃない?」

シトロンチャバタは、口に入る前から、もう食べているのではないかと思うほどレモンが香る。
それはプロローグに過ぎず、中に混ぜ込まれたレモンの果肉を噛むとき、香りは爆発する。
けれども、キャロットラペ(にんじんサラダ)やドレッシングの中のバルサミコと響きあうとき、レモンは単なる強さ、単なるすっぱさを超えた、すばらしい味わいとして広がっていく。
つづいてパクチーが、ベーコンが押し寄せる。
パクチーは個性の強い食材だと思っていたが、適量のそれはえぐみではなく、むしろ他の食材を強調し、ハーモニーを奏でていた。

「『世間はこれが売れてる』は、一切度外視。
自分がおいしいもの、自分がやりたいもの、でやっちゃっいました。
自分が目指したいもの。
自分が生活してるところでしか、(クリエイティブなものは)生まれてこないですから。
誰かのために作るという『縛り』があるからこそ自由」

(オープニングレセプションで供された、クロワッサン、パン・オ・ヴァン、パン・オ・レ)

マーケティングされたもの、これが流行っているからという理由で提示されるものには違和感がある。
なぜといって、私たちは「大衆」なんかではなく、ひとりひとりだからだ。
そうではなく、私が食べたいと思うものは、パンを作る人がおいしいと思ったピンポイントの「これ」なのだ。
漠然とした「大衆」や「流行」に向けられる時点で、「これ」はぶれる。
店に並べられているものはすべて、割田さんがいまおもしろがっているものだ。
なぜブーランジェリー レカンにまた足を運びたくなるのか。
それをいっしょにおもしろがり、共感し、心動かされたいと思うからだ。(池田浩明)

東京メトロ日比谷線・都営浅草線 東銀座駅/東京メトロ 日比谷線・丸ノ内線・銀座線 銀座駅
03-5565-0780
10:30〜21:00(最終焼き上がり20:00)
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緊急告知!りんごの日パーティin六本木
りんごの日当日の1月11日。
希望のりんごを使った、各パン屋の商品をみんなで味わうイベントを行います!

(今年1月にレフェクトワールで行われた「おいしい陸前高田」の様子)

りんごの日にご協賛いただくお店は14店舗に及び、ひとりでぜんぶ巡るのは不可能です。
それならば、みんなでパンを集め、みんなで分け合えば、おいしく、たくさん食べられるはず。
このイベントにきていただければ、少しずつですが、いろんなりんごパンを食べられます(お持ち帰りももちろん可)。
ひとつのりんごを様々なシェフが競作。
味のちがい、製法のちがいに、各シェフが希望のりんごにどのような思いを抱いたかが表れることでしょう。

場所は六本木・飯倉片町にあるピッツァヌーバ。
本格的な石窯を備えたナポリピッツァのお店です。

とれたての「きらきらほたて」(陸前高田産)、希望のりんごを使ったデザートピッツァ、パンに合う前菜とZopfの食事パンもご用意します。

進行役は、パンラボ・池田浩明と、「こんがりパンだ パンクラブ」のひのようこ。
各パンのご説明もさせていただきます。

そして、被災地の復興支援活動をされている、ピッツァヌーバのオーナー澁谷 満廣さんをお招きし、被災地の現状についてのお話もうかがいます。
渋谷さんは石窯を備えたキッチンカー「ぬーば号」を陸前高田など三陸各地に毎月2回ずつ走らせ、被災地の人たちにピッツァを供しています。

りんごのパンと食事パンを持って、Zopfの伊原靖友店長もきてくださいます。
被災地で希望のりんごと行動をともにし、感じたことなどもお話いただきましょう。

日時:1月11日(日)18:00〜21:00
場所:ピッツァヌーバ
   港区麻布台3-1-5 日ノ樹ビル2F
   050-5796-2500
   日比谷線・都営大江戸線 六本木駅 徒歩8分
   地下鉄南北線 六本木一丁目駅 徒歩6分
料金:4500円(フリードリンク)
   (キャンセルの場合も料金が発生いたします。
    前日キャンセル=料金の50%
    当日キャンセル=料金の100%)

申込:こちらのお申し込みフォームへお願いします
   (定員に達し次第、締切らせていただきます)
   おかげさまで定員に達しましたので、申込みを締切らせていただきます!

希望のりんご→http://www.kibounoringo.com/

希望のりんごFacebook→https://www.facebook.com/kibounoringo

陸前高田からとれたてを直送!
きらきらほたて1月分予約受付中!→http://www.rikuzen.com/?pid=84049937
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りんごヌーヴォー解禁!
ヌーヴォー流行りの昨今、被災地・陸前高田の復興支援に燃える「希望のりんご」も乗っからせていただくことになりました。

この12月にとれたばかりのりんご。
これを使ったジュースをいちはやく「ヌーヴォー」として、パン屋さんにお届けすることになりました。
私も12月16日に陸前高田市米崎町、りんご畑の真ん中にある加工施設「神田葡萄園」に赴き、希望のりんごジュース「TOMORU」ができるところをとっくりと見学してまいりました。

りんごヌーヴォーはもちろんとれたばかりのりんごを使います。
今年は豊作で、普段の年よりこころなしか香りも強く、甘さもまろやかな感じがします。
原料となるりんごです。

希望のりんご農家、金野秀一さんは胸を張ります。
「このりんご見てみなさい。
赤いのばっかりでしょ。
こんなに赤いのをジュースにする農家はいないから」

ジュースのりんごは普通は生で食べるとすっぱかったりする未熟のものなどが使われます。
金野秀一さんは米崎地区の農業指導員をされるほど技術が高く、丹精を込めているので、ほとんどのりんごを赤く熟すところまで持っていけます。
また、選別でも厳選しています。

りんごはベルトコンベアの坂を上り、圧搾機に入れられます。
中に水を入れた袋をりんごの上に積み重ねて圧力をかけて絞り出していきます。

出てきたりんごジュースです。
とれたてりんごの絞りたて。
まさにヌーヴォー。
その印象は、りんごジュースを飲んだというより、「なんだこれは!」でした。
すばらしくピュアなひたすらの甘い香りが鼻へ抜け、喉を伝っていくのです。

希望のりんごジュース「TOMORU」は皮を濾したタイプでお作りしています。
皮を濾さないものに比べてえぐみがなく、私はこちらのほうがおいしいと思っています。
透明感があって、うつくしいということもありますし。

りんごは次々と瓶に詰められラインを動いていきます。
異物が入っていないか商品検査もきちんと行い、製品となるのです。

できあがったジュースは即発送されました。
そして、千葉県松戸市のZopf、東京都練馬区のnukumukuさんですでに売られています。
大阪のグロワールさんでも数日中に発売予定です。
Zopfさん、グロワールさんでは希望のりんごを使ったパンもお作りいただいておりますので、どうぞお立ち寄りください。

ヌーヴォーはりんごだけではありません。
オリーブオイルにもあるのです。
私が愛用しておりますカランケ。
これもヌーヴォーが発売されています。

今年10月から11月に、南仏プロヴァンスのカランケ農園にて手摘みしたものを、24時間以内に圧搾した一番絞りだそうです。
どのようにちがうのか、ラボしてみました。

普段出まわっているカランケ。
三軒茶屋のブーランジェリーボヌールさんなどでは、こんなふうに小さなテトラパックで売っています。
ピクニックに持っていくときなどに、便利ですよね。

この味わいは、オリーブ畑が目の前に広がるように、濃厚で深い青さです。
そして、喉に入ると、あまりの濃厚さゆえに喉がぴりぴりしてくるのです。

一方、今年度産のヌーヴォーですが、香りは通常バージョンほど強くはなく、若々しく、さわやかな印象です。
飲んでも、通常のものがとろっとしているのに比べて、さらっとして、喉の通りもすごくよいです。
ぴりぴり感もさほどではなく、その代わりすばらしい甘さに口の中が満たされました。
フレッシュな、やさしい甘さの野菜、たとえばいまの時期なら大根やラディッシュのサラダなどがいいかもしれませんね。

試食としてグリーンサラダを食べてみましたが、野菜からおいしい汁が滲みだしてくるように、オリーブが香ります。
唇についたオイルを舐めるときがまたおいしい。

オリーブと塩をパンにつけて食べるのは定番ですが、私のとっておきの方法ははちみつといっしょにつけることです。
濃厚な外国のはちみつではなく、ここは香りのやさしい国内産をあえてチョイスしました。
はちみつをパンに垂らし、さらにオリーブオイルも垂らす。

口の中ではちみつの甘さと、ひたひたとしたオイルの感じが交互に訪れ、やがてクロスするときには、甘さがオイルの効果によってぎゅいーんと伸びていきます。
やはり決して強さのほうにいかず、やさしい感じがずっと持続していました。

食べ物の風味は酸化次第です。
酸化することで熟成して味わい深くなるともいえますし、酸化する前こそ素材本来の風味がするともいえます。
どちらも自然の恵み。
どっちがいいというより、大事なのは変化に気づき、それぞれのよさを大切に味わうことではないかと思います。(池田浩明)


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ひとくちで300メートル・ブーランジェリーレカン12月17日オープン
春のパンコレ(池袋東急ハンズにて)で、遊び心満載のクロワッサンを提供してくれた
銀座レカングループのパン職人であり、パン責任者でもある割田さんのパンがついに自由に、気ままに(←ここは大事ですねぇ〜)買えることになった。

ブーランジェリー・レカン
12月17日オープン
東銀座駅A1出口・目の前


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10:30〜21:00

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↑手前の薄紫色のパンはワイン生地のパン


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ドーナッツの上にかかっているのはギモーヴ。

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ギモーヴ? 自分は知りませんでした。
マシュマロのことだそうです。
「フランス語でギモーヴ。ここではギモーヴと言ってほしいそうです」と、ムッシュ池田。
了解!


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ギモーヴのドーナッツ。焦げ目にギモーヴ感が垣間見える!
キャンプファイヤーで割り箸にギモーヴを刺して、焼いたときにできた焦げ目と同じだ。



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レセプションには一口サイズのプチ・パンが並ぶ。

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感動したのが上の写真の真ん中のやや赤みがかったプチパン。
ワインを練り込んだパン。
料理に合うパンとして、レセプションに並んでいるのだと思うけど、
単品で食べても上品で美味しい。
ほのかな酸味、ほのかな甘み、咀嚼感もあって、口直し感もある。
っていうか、ベースノートの持続が半端ない。最後にほのかで上品な甘みがず〜〜っと残る。

一粒で300メートルといえば、グリコのキャラメルだけど、
これは一口で300メートルだ。
(追記/このプチパンは女性の2口で食べ終わるよう計算されているそうです。食いしん坊の男性にとっては1口かもしれませんが)

だって、最後にこのパンを齧りながら、店を出て、地下鉄の階段を降りる頃には口の中にパンはなくなって、
だけど東銀座駅から茅場町駅まで、もっと言えば東西線に乗り換えるまで、
ず〜〜っと口の中に美味しい香りが残ってましたから。
口の中に残ったパンの余韻だけで、駅3つ分も過ごすなんて、生まれて初めてだ。


ブーランジェリー・レカンは
12月17日オープンです。


とりあえず、速報として。
かしわで



パンの漫画

 
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食べる前からデニッシュがおいしいかどうかわかる法則
ぐるなびのippinというホームページで、
「食べる前からデニッシュがおいしいかどうかわかる法則」
という記事を書かせていただきました。
ピエール ガニェール パン・エ・ガトーのパン・オ・ショコラがすごかったという話です。
よろしくお願いします。(池田浩明)


このパンがすごい comments(0) trackbacks(0)
しあわせパンまつり*パンキャラバンスタート

水曜からパンキャラバンがスタートした。


パンセミナーがあり、6時頃到着した

しあわせパンまつりの会場にお客さんはポチポチってくらいで、

ちょっと不安になったが、

4時の時点では行列が出来ていたと

担当者(かなり疲れて放心状態だった/笑)に聞いてホッ。


それでもまだいくつかのパンは残っていたし、

焼き菓子やオリジナルブレンドのコーヒーなどもあり、

売り場がスッカラカンでもなく、それはそれでホッ。


初日の水曜は4時20分にパンが到着し、4時半に開場にパンが届いたそうだ。

道路事情により到着時間が変わってしまうので、

4時販売開始!とか5時販売開始!とかお知らせ出来ないのは申し訳ないが、

到着&準備が整い次第売り場に並べたいってことなので、

わくわくしながら待ってもらいたい。

水曜は宗像堂もカイトもあった。

かつて沖縄旅行買ったパンたちもあったはず。



パン屋さんマップはちょっとわかり難いけど、レジ脇に置かれていた。

これは本物を見たらめちゃめちゃかわいらしかった。

プレゼント用にすでに50個予約したくらい(役得♫)


昨日偶然、パン友が会社帰りにパンを買いに来てくれ、

彼女にも、見知らぬふたり連れの女性にもオキコパンのゼブラやうずまきパンを

オススメたりした。

ふたりの女性たちは会社の同僚にとお買い得価格のうずまきパンをたくさん買ってくれ、

お友達はゼブラ。

ちょっとうれしかった。きっとみんなでたのしんでくれたはず♫


8日月曜までのパンキャラバン

(物販は9日までだけど、当日の沖縄パンがあるのは8日まで)。

沖縄パン屋さんめぐりの予習にぜひどうぞ!


プランタン銀座「しあわせパンまつり」


◎ ○ ◎ まさこぱん ◎ ○


JUGEMテーマ:美味しいパン

渡邉政子さん comments(0) trackbacks(0)
マイベーグルがマイブーム
こんなとき、どうしたらいいのだろう。
家にパンがない、でも腹減った。
サンドイッチでも作ってみるか。
寒いからカップスープでも買って、パンといっしょに。
と思ってみても、家の近所にパン屋がない、あるいはもう閉まっている、もしくはわざわざパン屋まで行く余力がない。
ところが、サンドッチにしたり、スープと合うプレーンなパンは、食パン以外だと、スーパーやコンビニになかなか売ってないのだ。
甘くなくて、ちょっと噛みごたえがあって、歯切れはいい。
それでいて、ひとりで食べ切れるような食事パンがあったらいいな。

とずっと考えていたところ、ぴったりのパンをついに発見。
PASCOのマイベーグル。
そうか、ベーグルか。
それなら上記した諸条件もぴったりあてはまっているではないか。

最近のお気に入りである。
スーパーでいつも待っていてくれる、そんな気持ちさえしてきた。
バリエーションは3種類、プラス季節もの1種類。
そのうち、この日あった3種類を買う。

このとき、忘れずに買いたいもの。
クリームチーズ。
最近はバター不足なので、常備しておくと、なにかと便利。
これで家がベーグル屋になる。

そのまま食べてもいいけど、できればひと工夫したい。
オーブンで1分程度、中があたたまるぐらいさっと焼く。
表面がぱりぱり、中ふっくらになる。

さてマイベーグルのうち、ブルーベリー&クランベリーを半分に切る。
クリームチーズを1個開けて塗る。
たったそれだけ。

冷たいときはもちもちだけど、あたためるとやわらかくなってもちーっとなる。
そしてねばねばとしてきて、クリームチーズといっしょにとろけて、甘さまったりワールドの幕が開く。
きら星のように輝くのはブルーベリーとクランベリーの甘酸っぱさ。
たった一工夫で恍惚のベーグル体験が保証される。

以上は日米の境を超えた、インターナショナルなベーグルの基本技。
今度は、マイベーグルがチャバタやバゲットといったフランスパンの代わりにもなる、ということを示すために、おフレンチに攻める。
プレーンに、缶詰のパテドカンパーニュを塗る。
ここは、貴重でもバターも塗ろう。
瓶詰のシトロンコンフィ(塩レモンみたいなもの)もお好みで。

味わいの強いものに対しては食パンでは支えきれないところがある。
これは中身に密度があり、皮の香りもあるので十分に拮抗する。

季節限定のチョコレート。
オーブンから出ると、表面のチョコが焦げ、たまらない甘い香りを放っていた。
そのまま食べても十分だが、イチゴジャムを塗って、甘さと酸味を強化してみる。
チョコレートがとろけ、あたためたせいでふわっと口溶けよくなっている中身もいっしょにとろける。

チーズも一工夫しがいがある。
チキンをはさんだり、ベーコンをはさんだりすると、きっとおいしいはずだ(やってないけど)。

コンビニやスーパーの袋パンは、買ってすぐ食べられる便利さを競い合っている。
逆をいうと、一工夫しがいのあるパンがほとんど絶滅してしまった。
そこへ登場したマイベーグル。
かってイングリッシュマフィンで衝撃を与え、食事パンの新ジャンルを切り開いたPASCOがまたやってくれた、という感じだ。
国産小麦ゆめちからを使用していることも好感できる。(池田浩明)




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しあわせパンまつり*パンキャラバン〜沖縄〜

先日お知らせしたプランタン銀座でのパンキャラバン。

沖縄のパン屋さんや出店日をお知らせしたほうが親切よね。


今のところ確定しているのが


宗像堂

パン屋 水円

PANCHO RI-NA(パンチョリーナ)

Ploughman's Lunch Bakery(プラウマンズ)

Pain de Kaito(カイト)

八重岳ベーカリー(八重岳)


あと2店舗くらい増やす努力をしてるけど、まだ不確定。

そしてオキコパンのゼブラとうずまきパンは毎日並ぶ予定です。


12月3日(水)宗像堂 カイト パンチョリーナ 八重岳 

12月4日(木)宗像堂 カイト パンチョリーナ 

12月5日(金)カイト パンチョリーナ 水円 八重岳

12月6日(土)宗像堂 プラウマンズ カイト パンチョリーナ 水円 

12月7日(日)プラウマンズ カイト 水円 八重岳

12月8日(月)宗像堂 プラウマンズ カイト パンチョリーナ


飛行機が飛ばないなんてハプニングがない限り、

しあわせパンまつりの中に夕方5時頃からパンキャラバンは登場しま〜す♫


ちなみに9日はしあわせパンまつりが終わりの時間が通常よりも早く、

パンキャラバンは8日までだった!!!


パンもマップも期間&数量限定! お早めにどうぞ。



◎ ○ ◎ まさこぱん ◎ ○ ◎


JUGEMテーマ:美味しいパン


渡邉政子さん comments(0) trackbacks(0)
チャリティー製パン講習会in京都
11月19日、株式会社 京都麻袋で開かれた「チャリティー製パン講習会」。
これは元ジェラール・ミュロでシェフも務めた山院丙蝓頬シェフのライフワークとして開始され、10回目を数える。
Zopf伊原靖友店長、ブーランジュリー オーベルニュの井上克哉シェフと手を携え、10年にわたって講習会を行い、その収益を被災地に届けるというものだ。

はじめに、京都の老舗・小川珈琲の勝又貴司さんによる、パンとコーヒーについての講演が行われた。
話は多岐にわたった。
コーヒーの歴史、コーヒー豆の種類、スペシャリティコーヒーとはなにか、食べ物とコーヒーとの相性を追究するフードペアリング。
パンといえばコーヒー、コーヒーといえばパンという切っても切れない組み合わせは、世界中に見られるという話も。
フランスでは、エスプレッソマシーンで抽出したコーヒーにミルクを入れたカフェオレに、バゲット、クロワッサン。
デンマークはフレンチプレスによるコーヒーと、デニッシュ。
イタリアではエスプレッソと、フォカッチャやパニーニという組み合わせがポピュラーとの話。
短時間ではあったが、コーヒーという知ってて知らない飲み物についての理解が深まった。

特別に、今年ドイツのシュトーレンコンテストで金賞に輝いた、コンディトライ・フェルダーシェフ(広島県廿日市市)のシュトーレンが参加者全員に配られた。
それは、とろけるようだった。
フルーツの酸味と相争いながら、生地の甘さが勝ち、喉の奥へ流れこんでいく。
とろけるからはかなく、そして甘さはうつくしく光るのだ。

Zopfの伊原さんは、人気のあんマーブルを作る。
ロールパン生地にあんこを折り込んでマーブル状になったもの。
Zopfの数多くのアイテムのうち、私も大好きなパンのひとつ。
食パン型なので、スライスしながら何枚も食べられるし、ファミリーでも楽しめるのだ。

「冷蔵庫に一晩入れていた生地です。
いま吹いて(十分に発酵がきて)います。
最初に常温で25分一次発酵をとり、冷蔵庫に入れます。
1次発酵はとらずに冷蔵庫で一晩置いても、生地が吹いてさえくれれば大丈夫です。
ただ、ブレークする(ふくらんできた生地が過発酵となり、下に落ちる)と、窯伸びしないので注意してください。
ブレークするといけないのは、グルテンが切れるという意味あいが大きいんですよね。
一度切れたグルテンを復活させるのは大変ですから」

そのあと話は、どのようにグルテンの性質をイメージしつつパンを作るかに及んだ。
「パンのグルテンは一度伸びた地点までしかふくらまないようになっていると考えていいと思います。
だから、ミキシングでは、しっかり生地を伸ばしておくことが大事になります。
そして、生地を折り畳みながらこねるとグルテンは編まれてガスを保持しやすくなり、ふっくらとふくらむ、というイメージです。
生地を練るときや丸めるときなどはグルテンを伸ばすこと、編むことを意識してください。
それを工程のどこかでちゃんとやっておくと、窯の中でふっくらよくふくらむようになります」

あんマーブルの成形は見ているだけでもたいへんおもしろいものだった。
「きょうは2種類作ります。
栗あんと黒豆、小倉あんとさつまいも。
生地に対して8割のあんこ、黒豆とさつまいももたっぷり入ります。
3つ折りを2回するだけです。
あんこと黒豆をのせて折る、その上にあんこと黒豆をのせてまた折る。
あんこは生地の上に伸ばしてもいいですし、あんこが硬かったらちぎって分けたものをのせるだけでもいいです。
3つ折りが終わったら、冷蔵庫には入れないで1度休ませてから、2回目の3つ折りを行います」

食パンに入れる前、生地を三つ編みしてから成形するのもおもしろい。
「重たいあんこを支えられる強さがほしいので、生地を編んでから、型に入れます。
何回編むかで、食感も変わってきます。
まず生地を4等分して、さらに3等分します。
この3本で三つ編みしていきます。左右を交差させていくだけです」

できあがったあんマーブルを手にした。
あんこがたっぷりと入って、このずしっとくる重さがうれしい。
ぷるぷるした生地は、絶妙の口溶けを見せ、むせ返るほどあずきの香りがしてくる。
生地のバター感があんこと激しく反応し、あんばたと同じ快感となる。
焼いて食べて、すこしあんこが焦げた感じもおいしいだろう。
日本茶と合わせてもよさそうだ。
たっぷりのあんことバター感を感じられ、伊原さんらしく、豊かな気持ちにしてくれるパンなのだ。

山泳シェフは、被災地・陸前高田をパンで応援するために立ち上げられた団体「希望のりんご」のジョナゴールドを使って、「陸前高田リンゴパン」を作ってくれた。

「いつもは、僕はバゲットを焼いて、その中にりんごをごろごろ入れるんですよ。
きょうはソフトフランスの生地でやります。
分割のときは、あまりきつく丸めないでください。
形を整える程度です。
(ミキシングのときは)塩も、イーストも、粉もオールインワンで、すべて入れて混ぜます。
ただバターだけはあとから、完全に生地が混ざったところで入れてください。
混ざりきってないところにバターを塊で入れると、イーストが飛び散っちゃうので。
そういうことに注意するのが、丁寧な仕事です」

パンの中にフィリングとして入れる、りんごのプレザーブの作り方。
「りんごを半分に割り、さらに6等分、さらにそれを半分に切ります。
本当はもっと小さくするんですけど、今回のりんごはやわらかかったので、なくなっちゃわないように。
僕は皮もぜんぶ使います。
皮と身の間が、味があるし、ペクチンもいちばん多いです。
きょうのは皮が硬いですけど、パンに入れる分には問題ないです。
ピンク色になりますし。
皮を入れなければ真っ白になります。
ただし、酸化しないうちに作業しないと、色が変わってしまいます。
銅鍋で炊くといちばんきれいにできます。

プレザーブの作り方からも、山吋轡Д佞素材の個性を大事に汲み取ろうとしていることが伝わってくる。
「りんごは炊いても10分まで。
まだ芯が残っているぐらいで大丈夫です。
レシピに、りんごを炊くときの砂糖の量を書いてますけど、その通りじゃなく、味を見ながら入れてください。
入れすぎると、りんごの風味がなくなっちゃうんですよ。
市販のプレザーブは、保存の意味で多く入っています。
きょうのりんごだったら、甘いので、生のままパンに入れてもいいぐらい。
そういうときは長めにオーブンに入れてもらえば、りんごが蒸されます。
シナモンを合わせてもいいんですが、りんごの風味をマスキングしちゃうので、僕は好きじゃないんですよ。
せっかくいいりんごがもったいない」

パンの中に包餡するようにりんごのフィリングを入れ、さらにアーモンドビスキュイも入れる。
「きょうはりんごがやわらかかったので、食感を出すために、アーモンドビスキュイを用意しました。
オペラっていうケーキがありますよね。
あの生地と同じもの。
60gで分割した生地の底にビスキュイを入れて包みます」

山韻気鵑砲茲辰討いしいパンとなった希望のりんご。
フランスパンらしい引きがありながら、食べてみるとむっちりしてやわらかい中身。
味にも食感にも、ぶつかってくるところが全然ない。
この生地はあっさりしているのに、なんだか味わい深いのだ。
パンのすっきりしたおいしさと、りんごのフィリングはすごく響きあっていた。
りんごの香りは濃厚であってうつくしく、けれども甘さはすっきりして、引きが早い。
ビスキュイによるもうひとつの甘さは、りんごを活かすアクセントにもなっていた。
山韻気鵑蓮希望のりんごの個性をとてもうまく活かした。

京都の人気ベーカリーチェーン志津屋から、小林健吾製パン部部長が登場。
「大きく焼く京黒豆のパン」を実演した。

「パン・ド・ロデブ的な配合で作ります。
ロデヴはしっかりと火を通すのが大事です。
きょうのは大きく2キロで焼いているので(水分が保持され)、しっとりもっちりです。
焼き上がってから切ります。
日本製粉のブリリアントは、歯切れがよくて、もっちりしているのが特徴です。
これを100%使います。
それから、月桂冠さんの酒種ペースト。
しっとり感や甘酒っぽい風味を出す効果があります。
水は70%で仕込んで、さらに10%を捏ね上がってから足していきます」

大きく伸ばした生地に、黒豆を入れ、2つ折りにしてはさみこむ。
「(冷蔵でオーバーナイトさせた生地は)必ず復温させてください。
冷たいままだと窯伸びがよくないんで。
せっかくふわっとしているので、麺棒でがんがん伸ばさないで、なるべく手で伸ばしてください。
京都のパン屋なので、丹波の黒豆を使っています。
黒豆を生地に折り込んで成形します。
窯に入れる前に、生地の上にサイコロ状に切ったバターをちりばめます」

フォカッチャのように、大きく、平たく焼いたパン。
表面ぱりぱり、中もっちり。
揺れ動くトランポリンの上にのった皮、そんなイメージの食感だった。
表面で溶けて生地と混ざってないだけに、バターがなんとも愉楽的な香りを放っている。
それが噛むごとに黒豆と合わさって、どんどんおいしくなっていく。
味わいとしても、あっさりとしつつ穀物感が強調されてもちのようなので、ますます黒豆と合う。
口溶けもよく、口の中ではや液体に変わって、黒豆の甘さと合流するのだった。

毎回お楽しみの昼食はZopfによるもの。
鶏肉をオリーブオイルにローズマリーとともに漬け込み、オーブンで焼いたもの。
上から、トマトソースと、パプリカ、パルメザンをのせて。
トマトの酸味と鶏肉の脂が合わさって、実にパンがすすむ。
にんじんのつけあわせはクミンなどとマリネされていて、スパイス感が加わることで、鶏肉をまたひと味変化させておいしくする。

それから、山吋轡Д佞砲茲襯侫カッチャ。
講習会場の隅でいつも説明もなく準備しているのだが、何度食べてもおいしい。
オリーブオイルによって小麦の味わいは引き出され、しっとりした生地はそれを存分に活かす。
酸味に満ちた粒のオリーブのフレッシュさもこの生地に抜群に合う。

デザートに、希望のりんごを使ったタルトも山吋轡Д佞郎遒辰討れた。
タカナシ乳業株式会社により、リコッタ、フロマージュブラン、マスカルポーネ、クリームチーズなどが添えられ、マリアージュによる味わいのちがいをテイスティングできたのも楽しい体験だった。

午後は井上シェフにより、めずらしいロシアのパンが作られた。
リング型の生地にけしの実がつけられたものはブーブリク。
15分しか発酵をとらない速成のパンである。

「ブーブリクの成形です。
このリング状の形に、けしの実をつけるのが伝統です。
(生地を手のひらで伸ばしながら)3つ折りを入れてから伸ばしたほうが、力がつきます。
つなぎ目の部分は細くして、包むように連結します」

「もうひとつ、プリューシカ・マスコフスカヤはモスクワのパンです。
プリューシカは「平たく伸ばす」という意味、マスコフスカヤは「モスクワの」という意味があります。
バターではなく、マーガリンを使います。
ロシアにはバターは置いてないからです。
ハムロールと同じような成形。
ぐるぐるっと巻き込んで、生地の真ん中にナイフで切れ目を入れ、開く。
ハート形にして焼きます。
このハート形に誇りがあるそうなんです。
ブーブリクとプリューシカ・マスコフスカヤは、本当は別の生地なんですけど、きょうは同じ生地で作りました。
両方ともたいして変わらないんですよね(笑)」

プリューシカ・マスコフスカヤはおもしろい食感をしていた。
表面だけは極端にかりかり、クラッカーのよう。
反対に、中身は目が詰まって、もっちり。
中から滲みだしてくるマーガリンの味わいとかりかりが相まって、まるで焼菓子のようだ。
発酵時間が短いことによって、かえってこのような食感を生むのだろう。

伊原さんはもう一品、ベーマーバルトブロートを披露した。
ライ麦90%に、石臼挽きの小麦粉と、サワー種、レストブロート(古くなったパン)を入れて作るドイツパン。

「日本製粉のグリストミルを10%入れています。
グリストミルを入れると、甘くなります。
モルトの味を引き出す。
すごくいい粉で、これ一本でバゲットを作ってもすごくおいしい」

サワー種を簡単においしく作るコツは市販のスターターを使うことだと言う。
「ライサワー種は手こずるところですよね。
なんでも手づくりのほうがいいというより、簡易種を利用してもいいのです。
ライ麦パンってなかなか売れないんですよ。
食べ方を提案しても、お客さんはあんまりやってくれないし。
それだったら、ライ麦パンで惣菜パンなんかを作ったり、工夫をしてったほうがいい。
ボッカー社(ドイツ)さんのTKスターターを使います。
乳酸菌種はサンフランスシコ乳酸菌です。
元種が安定しているので、起こした種も安定する。
安定というのは、いつも同じ香り、同じ味になるということです。
種って、やわらかくてあったかいと酢酸が減って、すっぱくない。
反対に、硬くて冷たいと、すっぱくなるということです。
スターターを使えば、(種継ぎなしで)1回でできちゃうので、好みの味にするには温度と硬さとライ麦粉の種類で調整すればいい」

市販だからおいしくない、手づくりだとなんでもおいしいというのは、思い込みだと伊原さんは言う。
市販のものでも、ひと工夫することで、自分らしい味にすることもできる。

「サワー種を使ってもすっぱくならない方法。
粉末ライサワーはパウダー状の種です。
粉くささが気になるのであれば、使う前に2〜3時間水を吸わして、水和させればいいんですよ。
それで冷蔵庫に入れておけば、大丈夫。
出来合いでも、自分でアレンジすれば、おいしくできます。
それから、発酵種をカビさせないいちばんのポイントは、ラップをしっかり貼りつけることです。
ライサワーを起こして、小麦粉でつなげばホワイトサワーになる。
でも、ライ麦のほうが小麦より安定しているので、ライサワーのまま持ってたほうがいいかなと思います」

ドイツパンに並々ならぬこだわりを持つ伊原さんは、サワー種を上手に作るコツ、うまく使いこなすコツをたくさん教えてくれた。

「ドイツパンはフランスパンよりもっと簡単に家庭でもできますよ。
サワー種さえできてればね。
つまり、スターターを買っちゃえば、簡単なんです。
ライサワーを食パンとかに入れてもおいしいです。
もち感も増えるし。
ライサワーはドイツパンにしか使っちゃダメだと思ってるでしょ?
パン作りは、ダメなことがあると思っちゃダメなんです」

最後に、各シェフの作ったパン(お菓子)をまとめておく。

小林健吾さん
・大きく焼く京黒豆のパン
・くるみのパンコンプレ

井上克哉さん
・トルテ
・ブーブリク

伊原靖友さん
・あんマーブル
・ベーマーバルトブロートR90W10

山泳さん
・オプストヨーグルトブロート
・陸前高田リンゴパン


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