超絶ふわふわ食感の「nichinichi食パン」が人気のベーカリー、新百合ケ丘の「nichinichi」川島善行シェフからショートメールがきた。
「池田さん、
平成最期の日に『さらば!平成!!食パン』というのを作ろうと今決めました!
・春よ恋
・はるきらり
・キタノカオリ
・ゆめちから
・きたほなみ
この5品種が平成生まれなので、5品種全部使用の食パンを作ります」
「さらば!平成!!食パン」は、平成31年4月30日しか販売されることがない。
でも、ど〜してもその前に食べてみたかったので、試作の日に行ってきた。
雲のようにふわふわである。
それが舌にのっかるやいなやしゅわっと溶けて甘さがあふれだす綿あめ状態。
本当にすごかったのはトーストしてからだった。
きつね色に焼けた表面が尋常ならざるぱりぱりっぷり。
歯を入れると、ぱりっと音高く鳴っては、表面の細かなデコボコが一瞬にして木っ端微塵に砕け散る、そのとんでもない快楽。
まるでハッピーパウダーが付着しているかのごとき、ミクロなぱりぱりと香ばしさ。
どうやってこんな表面が実現できるのか?
「グルテンの出し方がポイントかと思います。
繋がないように、でも、繋いでいく。
ゆっくりと、ゆっくりと繋がないように、繋いでいく。
そして、ギリギリで止める。
いろんな性質の5種類の小麦が入っているので、ミキシングはかなり気をつかいますね」
グルテンがつながりきらずささくれだっている。
それがミクロぱりぱりの原因だった。
平成の食パンはここまできたのだ。
平成の奇跡といえば、北海道産小麦「キタノカオリ」が生まれたことだと思う。
「キタノカオリってどんな小麦?」
と訊かれたら、「nichinichiのコレを食べてください」と答えることもあったほど、ふつふつとたぎるようなキタノカオリのデンプンのおいしさが表現されていた「キタノカオリ食パン」。
でも、不作や栽培面積の減少によって、ひじょーに残念ではあるが、キタノカオリ100%の小麦粉は入手困難になり、キタノカオリ食パンも店頭に並ばなくなった。
そこで、登場した食パンが、「オヤコノキズナ」。
「親(キタノカオリ )のピンチを子供(ゆめちから)が救った!
というストーリーを名前にしたパンです。
小麦粉『キタノカオリブレンド』(100%じゃないバージョン)と『ゆめちから』(キタノカオリとアメリカの小麦の交配によって生まれた)を、使っています」
ゆめちからならではのグルテンマジック。
ぷわんとエアリーで、ぷりんと弾みながら歯切れる新食感。
とろーっと溶けて液体状になって、ミルクと旨味をにじませる。
名物キタノカオリ食パンをキタノカオリ100%で作れなくなったが、ただ100%のキタノカオリがなくなったことを嘆くだけではなく、新時代へと前を向く、次の一手だ。
平成が終わる最後の日、みなさんはなにをしてお過ごしになるだろうか?
私はもちろん、パンを食べて過ごすつもりである。
平成に食べたパンのことを思いだしながら。
さて、令和にはどんな新しいパンが登場するだろう?